平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「電波男」(本田透・著)~恋愛資本主義への反抗。二次元キャラの優しさに触れろ! 癒やされろ!

2016年08月27日 | エッセイ・評論
 オタクを経済の視点から論じた『電波男』(本田透・著/三才ブックス)にこんな記述がある。

『オタク界は、男だけで成立しており、女は脳内の萌えキャラで代替されている。オタクにとっては、三次元の面倒くさい女よりも、二次元キャラの方が「萌える」のだ。故に、たいていのオタクは三次元の女に対し、恋愛資本主義のお約束になっている奉仕活動を行わないし、彼女たちの機嫌も取らない。男だけ、自分だけで自足している』

<恋愛資本主義>
 かつて月9に代表されるテレビドラマは<恋愛>の素晴らしさを描いてきた。
 おしゃれなレストランでの食事、車にファッション、プレゼント、豪華リゾート。
 女の子を喜ばせるための数々のイベントやサプライズ。
 男は女に貢ぎ、女はそれで男を評価する。
 現実で恋愛するにはお金がかかるのだ。
 これを本田透さんは<恋愛資本主義>と呼ぶ。
 すべては電通を始めとする広告代理店が、恋愛でお金を使わせるための作り出した幻想であるとも。

 しかし、オタクはそれにダマされない。
 二次元の脳内彼女をつくる。
 脳内彼女は不平不満も言わないし、サプライズも高価なプレゼントも要求しない。
 たとえ要求されたとしても、想像の中だからタダだ。

 これは、資本主義に関する反抗であり、<革命>だ。
 だから、『電波男』には、こんな記述がある。

『恋愛資本主義に対して「NO」と叫び続ければ、革命は成就されるはずなのだ。オタクが人口の半分を超えた時、日本は革命される。恋愛資本主義が瓦解し、オタク本位主義が三次元世界をも支配することになる。
 そうなのだ。三次元世界に愛を取り戻すために、必要とされている勇者ども、それが「アナログ女にNOと言えるオタク」なのだ』(笑)

 恐竜絶滅を例にして、こんな表現もある。

『負け犬女(=月9のような恋愛を求める女性)は、肥大する恋愛資本主義社会に勝ち残るために<無意味に巨大化した恐竜>のようなものだ。
 それに対してオタクたちは、かよわいように見えるが、実は新たなデジタル環境に適用すべく<大脳を発達させ続けるほ乳類>なのだ。
 NHKスペシャル「大進化」を見れば明らかなように、どちらが生き残るか言うまでもあるまい』(笑)

 広告代理店が作り出した<恋愛資本主義>が幻想なら、<二次元の彼女>も幻想。
 同じ幻想ならどちらを選ぶか?
 本田さんはこう叫ぶ。
「二次元キャラの優しさに触れろ! 癒やされろ!」

『電波男』が出版されたのは2005年。
 保守系の人たちが、二次元の表現を規制しようとするのは<二次元による革命>が起こったら困るからだろう。それは資本主義の問題だけでなく、皆が二次元に走れば、子供が出来ず、国が滅びる。
 一方、広告代理店の電通や経産省。
 さすがに彼らはこの流れに気づいたらしく、数年前から二次元世界に注目し、金にしようとしている。

 ポケモンGOの大ヒットなどもこの流れのひとつ。
 もはや人々は三次元でお金を使わない。
 高級なスポーツカーだって、ヴァーチャルなゲームの世界で簡単に手に入れられる。

 本多さんの言う<革命>は着実に進行しているのだ。


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