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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

相棒17 「微笑みの研究」 ~ラスト5分の急展開がすごい! 凡庸、退屈な作品から一気に秀逸な作品に!

2018年12月06日 | 推理・サスペンスドラマ
 ラスト5分の展開がすごかった!

 前半~中盤は凡庸なミステリー。
・盗まれた毒薬アズチリン。
・コーヒーに毒薬混入して教授の宇佐美真一郎を心臓麻痺に見せかけて殺害。
・犯人が犯行後、毒薬を入れたコーヒーのカップをゴミ箱に捨てるところを防犯カメラが捉えていた。
・半年前の実験による天才少女の自殺。
・動機は実験によって、ふたりめの天才少女が自殺するのを防ぐため。

 何だ、この凡庸さは!
〝天才〟や〝オカルト〟や〝共感〟を研究する〈認知科学〉を素材にして、それなりの体裁を整えているが、ミステリーとしては何の捻りもなく物足りない。
 と思っていたら、これだけでは終わらなかった。

 以下、ネタバレ。

 …………

 何と!
 犯行をおこなった准教授の高野鞠子(冨樫真)の心理を操り、誘導していた陰の存在がいたのだ。
 助教授の川村里美(佐津川愛美)。
 里美は鞠子の殺意を知り、毒薬アズチリンの存在を教え、裏サイトで入手させ、殺害を促した。
 里美は巧みに鞠子の背中を押したのだ。

 まあ、ここまでだと、「そんなに簡単に他人の心を操れるのか?」「アズチリンの存在を知っても実際に犯行をおこなうかわからない」といった疑問が湧いてくるが、こうした疑問を払拭する設定が現れた。
 何と川村里美は〝エンパス=並外れた共感力の持ち主〟だったのだ。
 エンパスの里美は、周囲にいる人の心(=怒り、不安、ウザイ、死にたい、といった感情)を敏感に感じ取れる。
 鞠子の憎悪も敏感に感じ取っていて、それが日増しに増幅しているのを把握していた。
 だから、アズチリンという情報で導火線に火をつければ、鞠子が殺害に動くのは簡単だと考えた。

 里美の動機もすごい。
 日々増幅する鞠子の憎悪を感じていた里美は「このままでは自分も殺意に塗りつぶされる」と考えた。
 それを防ぐためには教授を鞠子に殺害させ、憎悪を解消するしかない。
 里美が鞠子の心を誘導したのは、教授への憎しみではなく、自分を守るためだった。

 いいですね、こういう心理学的アプローチ。
〝里美=エンパス〟
 という設定が、これまでの凡庸さを180度変えてくれた。

 昨年、話題になった『屍人荘の殺人』(今村昌弘・著 東京創元社)も〝ゾンビ〟が登場したが、現在のミステリーはこうした特殊設定の段階に入っている。
 トリックや状況設定が出し尽くされたミステリー界において、特殊設定が新風を巻き起こしている。
『相棒』だって例外ではないだろう。

 さて、今回の『相棒』がすごいのは、これだけではない。
 何と、エンパスの里美を操っていた第三の人物がいたのだ。
 詳細は本編を見てもらうとして、第三の人物も登場したことで、僕は脱帽。
 よくぞ、ここまで捻りまくってくれました!
 見事なラスト5分間!

 多少、強引な所もあるが、凡庸で退屈であるよりはずっといい。

コメント
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