午前中に二度洗濯機を廻して衣服を干し、それが終わると豚肉のニンニクチーズソティにほうれん草のバター炒め、卵入り納豆に佃煮それに豆腐と茗荷の味噌汁なんて食事を用意してと書くと、いかにものんびりした印象を与えるかもしれないけど、今日これからのことを想像すると俺の気持ちは急いていた。というのは、今日と土曜日と日曜日の３日間は、マダマダームーンの公演がお昼と夜と二回ずつあるので、かなりのハードスケジュールなのだ。でも、ひとり営業だと殆ど死ぬと思っていたけど、今週からＭが復帰してくれることになったので、少しだけ気持ちが楽になる筈だったのだが、Ｍは誰かとの約束が夕方からあって店に入るのは９時近くになるという。その代わり２時開場でフードは出ないだろうし、お昼のドリンクサービスは自分ひとりでやると言い出したのだけど、終演が５時になってしまうと約束に間に合わないということになり、結局俺が12時半に部屋を出て、お昼もやることになってしまった。尤も俺は銀行で個人口座と会社の口座の間で3時までに色々やらなくはならないことがあり、どっちにしろ早く出るつもりだったのでいいんだけど、夜一番忙しい時間にＭがいないことの方が精神的に参る。でも、元々はひとりでやろうとしていたのだしと自分を鼓舞して、昼のドリンクサービス、公演中は経理事務、その後でレバーの赤ワイン煮、コロッケ、から揚げなど料理の下拵え、終演後は買い物をしてからすぐさま料理を16皿カウンターの中に並べて夜の公演に備えるが、今日は開店と殆ど同時にまだ30になったばかりなのにラジオドラマ作家で且つ女性実業家でもあるＳさんが一緒に仕事をしているＲさんとＯさんと来店してくれて且つ料理を一杯オーダーしてくれたので、夜の公演が始まる時には用意した料理が殆どなくなってしまう。俺は三人が楽しそうにお喋りをしているのをいいことに厨房とカウンターを行ったりきたりしながらまたしてもコロッケやから揚げ、いわしのマリネ、ピザ、玉子焼などまた16皿を作るという離れ業を演じる嬉しい悲鳴。そして9時前にＭが戻ってきた頃には、カウンターに脚本家志望のＯＬのＫさん、美人ＯＬのＪさん、近所の番組制作会社のＯさんとＴさん、映画監督兼教育評論家のＨさん、テーブル席には昔の女友達Ｃちゃん一家、更にイチゲンのお客さんも加わって店は久しぶりに満杯状態になる。イベントのお客さんからのオーダーも続いたし、Ｍが戻ってきてくれたことを喜んでいたら、しばらくして妹のＹちゃんが大阪から出てくるので迎えに行ってそのままホテルに泊まると言い出す。はっ？聞いてないしッ。大体Ｙちゃんって中学生？いえいえ大学生でしょ？東京初めて？いえいえ今までも何度もきているでしょ？それなのに何故この忙しさの中でわざわざ迎えにいく訳？俺にはＭの精神構造がよく分からない。ちょっとキレル。後少しは店にいて貰えたのかもしれないけど、もういいからと引き上げて貰う。もうその後は気合のみ。６時過ぎに来店してくれたＳさんたちは更にピッチをあげて飲んで食べてくれているし、10時過ぎからも大阪から上京してきた運送会社の女性社長のＹさん、人妻Ｉちゃん、近所に住むエズラ好きのＳさん、法律事務所勤務のＮさん、ＳミュージックのＨ君、近所の俳優事務所のＳさんとＴさんたち、イチゲンのカップルなどでも加わって、店は盛り上がって3時過ぎまで。美人ＯＬのＪちゃんに途中までポランティアで後片付けを手伝って貰ったけど、洗い物はたまりにたまっている。最後まで残った女社長のＹさんが手伝おうかと言ってくれたけど、もう体が動かない。それにお昼に部屋で食事をして以来、何も食べてなかったので、ゴミをまとめるだけで洗い物は明日にすることにして、Ｙさんを誘って六本木の朝までやっている寿司屋にいく。熱燗が胃に染みる。カッパ巻が美味い。Ｙさんに折角の結婚記念日なのに私と一緒でごめんねと言われる。そう、もう10月８日は俺とＭの四回目の結婚記念日なんだけど、いつもの年なら前夜祭だなんてシャンパンを抜いていたりするのに、Ｍの姿はない。ちょっとやってられない。今日は本当なら奢らなくちゃいけないのに財政難の折りから割り勘にしてもらう。そして5時近くにＹさんと別れてタクシーに乗ろうと思ったけど、始発まで後30分の辛抱だと近くの量販店で時間潰しをして6時過ぎに帰宅。当然爆睡。明日もまた午後一番（これを書き終わったら）でなくてはならない。★桃井章プロデュース「津森久美子ファドライブ」 11月28日（月）6時半開場8時開演・料金三千円（１ドリンク付き）40名様限定・出演 津森久美子（ファディスタ）高柳卓也（ゲスト ファディスタ ギター）月本一史（ポルトガルギター）・予約お問い合わせは03ー3470ー2252コレドシアター（17時以降）★「米本康子ポルトガル写真展・旅の途中」11/24（木）～12/３（土）午後6時より。入場無料。