パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

どんだけー!な話

2008-04-01 20:02:17 | Weblog
 今日から、政府による小麦の売却価格が3割あがったわけで、パンや麺類の価格に影響が出てくるのだろうが(すでに出てるけれど)、パン等の価格に占める小麦粉の価格は、そう大したものではないので、実際にはその他の経費、特に運搬経費などにかかる経費の高騰が影響するらしい。

 たとえば、自家用車に占める鉄の原価はいくらかというと、学生時代に聞いた機械工学科の先生の話では、4000円だった。もちろん、あくまで「原価」。これにプレスしたり加工したりして価値が加わっていき、最後に数百万円の自動車になるわけだが、使う鉄の「重量」×鉄の重量当たり単価を計算すると、4000円ということになるのだ。

 もちろん、昔の話であり、また、パンに占める小麦粉の割合は、自動車に占める鉄の割合よりも、多分、これよりは高いだろうが、基本的には、パンの価格に占める小麦の価格は、「大したものではない」。

 では、昨年来、政府による輸入小麦の売り渡し価格が高くなったことをもって、「値上げします」、という業者の説明は「嘘」かというと、わらを一本乗せたため倒れたロバみたいな話もあるし、基本的に信用していいと思う。というのは、もし、業者が暴利を狙ったり、あるいは、生産性が低いために値上げしたりしたら、最終的には市場から駆逐されるからだ。問題は、そのようにしては、市場から駆逐されない存在だ。それは誰か…?

 その前に、小麦の国際価格は、昨年秋で、60キロあたり2470円。で、その輸入小麦が「価格調整」されて、需要家(製粉会社)に8040円で売却される。もちろん、この8040円には運賃その他が含まれるから、差額全部というわけではないが、「儲け分」は、国内の小麦農家の保護・振興のために使われる。

 さて、この8040円が、国際価格の暴騰を主な根拠に、4月から3割アップされるわけだ。つまり、約1万400円だ。一方、国際価格の2470円は、実は、暴騰しての価格だ。ネットで調べたところ、それよりちょっと古い記事では2000円となっていたから、2000円の3割増で、2600円…。

 はは~ん、なるほど(笑)。

 姑息な官僚どもは、売り渡し価格を「3割アップ」させる、その3割という数字の根拠を示さなかったが、本当は、国際価格が3割アップしたから、売り渡し価格も3割アップすると説明したかったのだ。しかし、それを言うと、大きく下駄を履かせた上に、さらに下駄を履かせた事実がバレてしまうかもしれないので、言い方をぼかしたのだ。

 悪知恵が働くなー…って、これくらいマスコミは見破らんかい!

 とはいえ、私は基本的に日本の官僚はそんなに「悪」だとは思わない。実家のご近所の、元通産省キャリア、故M谷さんにしても、まじめな人だった。「姑息」になるには、「金銭」以外に、何か理由があるはずだ。

 と思っていたら、なるほど、と思われるような事実がわかった。すでに数年前から、国内小麦農家支援のための補填事業は、「売却差額」だけでは執行できず、さらに300億円の税金支出でまかなってきたのだそうだ。要するに、国内小麦農家保護政策は、実質破綻しているのだ。

 そこまで悲惨な国内の小麦農家の実態は、というと、国内消費の1割くらいしか供給できない。しかも、もっとも重要な問題は、「質が悪い」ことだ。知らなかったが、国産小麦は、質が悪くて買い手がつかない。実際、てんぷらのための薄力粉以外に使い道はほとんどないらしい。

 小麦農家の方々にはきついことを言って申し訳ないが、あなたがたには存在価値がないではないか。存在価値のないものに、基準を合わせるって、いやはや、「どんだけーっ!」ってのは、このことではないか。

 それにもかかわらず、「3割アップ」させてでも、維持させたいもの、それは何か?

 答えは一つ。「国内小麦農家保護のためのシステム」そのものの維持だ。ただし、そのために国税をこれ以上使うことは、世論の動向を見ると不可能だ。そこで、輸入小麦の売却価格を上げることにしたのだ。それも、国際価格の値上がり率に合わせて。

 ここまでして守らなければならないのは、この「システム」に、小麦農家と、さらに小麦農家に数倍する人々が依存して暮らしているからだろう。

 どんだけー!(ikkoは好きではない)