the Loupes

2017-10-11 19:37:01 | Music Life
the Loupes 「針の音」Music Video


The Loupesは広島のバンドである。
ボーカルのオカハラくんがダンエレクトロを愛用しているとのことで私の知るところとなったわけであるが、YouTubeの動画を見てると、少年のひたむきさを湛えたオカハラくんの隣で忘年会で酔っ払ったオッサンみたいなギタリストが動き回っていたのであった。しかしながらそんな部分も含めて彼らには好感を持ったし、良い楽曲も多かったのである。

The Loupesは2014年に1stアルバムをリリースしたが、タワーレコード広島店のみでの限定販売であったため、私が彼らの1stを手にするまでにはかなりの時間がかかってしまった。聴いてみると、動画の音声よりも重低音であったことにいささか驚いた。1stのタイトル「Allons donc!」はフランス語であるが、これを「いざゆかん」という意味で使ったのは中原中也だという。

このアルバムはまさに「いざゆかん」とばかりに出発への決意を感じさせるもので、少年が初めて現実と向き合ったときの躊躇いや逡巡、戸惑いや不安、焦燥といった心の揺れ動きが収められている。こうした心の揺れ動きは、酔っ払ったギタリストが曲の進行を妨害するかのように飛び道具的に執拗に繰り出していたオブリガートに、実は見事に体現されていたのであった。

2ndの「WATCH」は、その冒頭から深いリバーブのかかった音空間を電子音が飛び交い、メタリックなギターがまるで闇夜を切り裂くようになまめかしい光を放ち、オカハラくんもまるで声変わりでもしたかのようである。そして彼らはゆったりとしたテンポで自分たちの演奏を一音一音確かめながら堅実に進んでいくように見える。例えばカントリー、あるいばオルタナ、もしくはソウルというように、既存のスタイルを借用しつつアレンジされた楽曲は以前よりも完成度が高まり、それによってThe Loupesは新しい地平を切り開いたといえる。このアルバムはそうした彼らの成熟と音楽的成長がはっきりと見て取れるものとなっている。
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