Writing on Wasted Time

2013-03-04 22:07:34 | Dano Column
Doug Tullochの著書「Neptune Bound」の中に興味深い一節を発見する。
そこではヴィンセント・ベルがジョン・レノンとの思い出を語っている。

There's a story about the Vincent Bell Coral Sitar in the book "Last Days of John Lennon".

The story is, he was asked to show his favorite guitars and out of the whole collection he chose two, one being my design. I'm proud of that.

このように書かれている文章を読んでしまったからには、だのじゃん的に当然のことながら、「The Last Days of John Lennon」を読まないわけにはいかない。

調べてみると邦訳があることがわかったので、それを注文した。フレデリック・シーマン著「ジョン・レノン最後の日々」(シンコー・ミュージック)。著者のシーマンはジョンとヨーコの身の回りの世話をしていた。

本はすぐに届いたので、早速ヴィンセント・ベルが語った内容に該当する箇所を期待に胸躍らせながら探してみたのだが、どういうわけかぴったり合致するところは見当たらない。内容的に近いのは以下の二つ。

①クローゼットに乱雑に積み重ねられていたギターを運び出して床一面に並べ、それらをジョンとシーマンが二人で眺める場面。

②レコーディング(「ダブル・ファンタジー」収録の「アイム・ルージング・ユー」)にやってきたリック・ニールセンがギターコレクターであることを知っていたジョンが自分のコレクションを見せる場面。このときジョンがニールセンに見せたギターは、シェア・スタジアムのコンサートで使ったリッケンバッカー325と2本のフェンダー、そして「battered blue Vincent Bell(使い古されたブルーのヴィンセント・ベル)」とあるのだが、これが何なのかは不明。

期待を裏切られた私がそれでも何かにすがろうと表紙を見つめたとき、小さいアルファベットによる原題の表記が飛び込んできた。Living on Borrowed Time A Personal Memoir……ひょっとするとこの本はLast Days~とは違う本なのではないか。そう思った私はすかさずThe Last Days of John Lennonを注文してしまっていた。しかし落ち着いて調べてみると、Living on Borrowed Time は改題しただけで内容はThe Last Days と同じだということがわかった。あとは訳出されなかった箇所にヴィンセント・ベルが語った内容と合致する部分があるかどうか。

He pointed out his favorite,a black and white Rickenbacker guitar he had used during the Beatles' first tour of America. It still had the song list from the Shea stadium concert Scotch-taped to it. [He also showed me a rare Vincent Bell electric guitar, as well as two classic fender guitars:a Statocaster and Mustang.]

該当する箇所としては以上の部分だろう。この部分は①の場面の終わりの部分の原文だが、一番のお気に入りはリッケンバッカー325だということがわかる。[ ]で囲んだ部分は訳出されなかった部分である。ここで2本のフェンダーがストラトキャスター(例のソニックブルーのものだろう)とムスタングであることがわかるが、「レアなヴィンセント・ベルのエレクトリック・ギター」がエレクトリック・シタールであるかどうかはこの記述からは特定できない。そして、もしこれがリック・ニールセンに見せたというbattered blue Vincent Bellと同一のものだとすると、エレクトリック・シタールにブルーフィニッシュは存在しないので、少なくともエレクトリック・シタールではないということになってしまう。ただ、この不明な「ヴィンセント・ベルのエレクトリック・ギター」をジョンが少なからず気に入っていたということは確かだろうと思われる。

ところでヴィンセント・ベルは「ほら吹き」で知られた爺さんである。これもその一つで、私はそれに翻弄されてしまっただけなのだろうか。ジョン・レノンがエレクトリック・シタールについてどんなことを語ったのか知りたかったし、知ることができるものと期待していたのにさ。
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