勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

ダンスは心

2006-05-18 23:28:59 | Weblog
 我がダンスホール、平日の昼間はサービスとして、持ち込み自由、料金も半額とあって利用者も多い。
月数回、片道3時間かけて茨城県から踊りに来てくださる、70代半ばのお客様がいる。
一人で来る事もあるが、お友達を誘って朝5時起きで来るそうだ。

 居を東京から移して数年、田舎の生活になかなか馴染めず、ご主人を亡くして精神的に落ち込んだ末、3年ほど前からダンスをはじめたが、仲間同士で踊るにも誘いがないという。
そこで一念発起、東京へ踊りに来る事にしたそうだ。

 縁があって、僕が踊り始めて1年半ほどになる。大きなリュックを背負って、お弁当と飲み物持参、「やっぱり東京はいいわぁ」と言って一日楽しんで帰る。

 「私、ダンスは幼稚園児だから、誰も誘ってくれないの」そういいながら、上手くなりたいという。
しかし、楽しんでもらいながら上手くするには、年齢的なことを含めなかなか大変である。

 時々「私、怒られるためにわざわざ東京へ来るみたい」などと泣き言をいうこともあるが、次に来るときには、地元のサークルで「上手くなったけどどうしたの?」と不思議がられる、と喜んでくれる。

 社交ダンスは二人で踊るもの、お互いが自分勝手に動いては成り立たない。
特に女性に於いては、男性のリードを感じて踊らなければならないが、習い始めの人の多くは、ステップが気になり、男性の動きに関係なく動き出してしまう人が多い。


今日の彼女との会話です。

「僕より先に行ってしまってはダメですよ」 
「あらぁ~」 
「行くときは一緒です、ご主人にもそういわれたでしょう」 
「・・・?」 
「一人だけ先に行ってはいい気持ちになれません」 
「そんなこと、もう忘れたわよ」 
「じゃぁ思い出しましょう」 
「エッチねぇ~」 
「ダンスの話ですよ」 

 美しく踊るためには、無駄な動きを省いて、コントロールされた動きが要求される。
とかく初心者にとっては、身体を大きく動かすことがいいと勘違いしがちである。

「そんなに暴れてはいけません」 
「・・・」 
「もっと品良く、都会的に踊りましょうよ」 

彼女には少し田舎蔑視がある。

「それでは田舎者の踊りですよ」 

途端に動きが変った。


 ステップを踏むときは、一度体重の乗っている足にひきつけてから、もう一方の足を出さなければいけないのだが、ステップに気を取られると、足ばかりが先に出てしまいガニマタになりがちである。

「そんな足の出し方では、品がありません」 
「そうかしらぁ」 
「そうです、それではお相撲さんがシコを踏んでいるようですよ~」 
「ガハハハハァ」 
「品良く、お姫様のように踊りましょうよ、お局様になっちゃダメです」 

 動く事だけに気を取られていた踊りが、形を気にするようになり、急におしとやかな踊りになった。

 技術的なことをいってもなかなか理解してもらえない。
ダンスは性格が表れます。踊りを見たり、一緒に踊る事でおおよその性格がわかります。
心理的な部分をくすぐることで、思いがけない効果を生む事がある。

 一踊りした後の食事の時間、地元で採れたメロンのお土産をいただいた。

「ちょうど食べごろよ」 
「そう、○○さんのようだね」 
「まぁ、うまいこといって、じゃぁ食べてみる?」 
「う・うん、今おなかいっぱい」 
 
 5時間ほど楽しんで「また来週来ます」と言って帰路についた二人連れでした。
2006.05.18