小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

官能作家弟子入り奇譚 (下) (小説)

2019-09-21 17:08:12 | 小説

 


銀子がことさら驚いたような口調で大きな声で言う。銀子は由美子の髪を撫でながら、「きれいな口」と言って指で口唇をなぞったり、頚や胸にやさしそうな接吻をし、「伸さん。あんまり由美子さんをいじめちゃかわいそうだわ」などと真面目な口調で言う。伸は由美子の窪地を硯のように見立て、筆先に女の液をつけては、腿や尻などに塗り付けた。そしてただでさえ、割り裂かれている由美子の双の尻をムズと掴んでグイと開いた。ずっと沈黙を通してきた伸がようやく口を開いて由美子に語りかけた。重いドスのきいた口調だった。「由美子。お前も相当強情な女だな。私はマゾです。許してください。いとしの伸さん。と言いな。そうすりゃすぐにやめてやるぜ」「だ、だれが」由美子は目を開いてキッと伸をにらみつけた。「そうかい。じゃあ、気長に続けるだけだ」と言って伸は再び筆の責めをはじめた。だが由美子が根をあげないので伸はとうとう根負けして、「お前がそうまで強情をはるのなら、しかたがねえ。本当はしたくなかったんだがな」と言って、銀子に、「おい。用意をしろ」というと、銀子は、「オーケー」と言って、さっき持ってきた洗面器の中をゴソゴソあさりだした。「い、一体、何をしようっていうの」由美子がキッと銀子をにらみつけても銀子は聞き流しているかのように、ニコニコしながら由美子の目の前に無造作にバラバラと幾箱もの小箱を放り散した。それを見て由美子は「あっ」と叫んだ。さっき見たイチジク浣腸の箱だった。おぞましい恐怖が由美子を襲った。「や、やめてー」由美子は、張り裂けるような声で叫んだ。「そうよ。浣腸責めよ。本当はこんなことしたくないのよ。でもあなたがどこどこまでも強情をはる以上仕方がないじゃない。かわいそうな人」と、みえすいた揶揄を真面目な口調で言う。銀子は由美子の目の前で箱を一箱ずつ開け、ビニールを破って鼻歌まじりに中身の容器を並べはじめた。不気味な液体で満たされた名前の通りのグロテスクな容器を見せつけられ、由美子はおぞましさにおののいた。由美子は子供の頃から、快食、快眠、快便、の元気な子で便秘などめったにしたことがなかった。一度、便秘したことがあって、母親にイチジク浣腸を渡されたことがあったが、自分でするのであっても、その行為を想像するとみじめでとても出来なかった。代わりに下剤を飲んで通辞をつけた。そのとき以来、由美子は「浣腸」という言葉を聞くだけでおぞましさを感じた。それをこれから本来の目的とは別の意図で他人にされるのである。一体何本入れるつもりなのか。そして、それはどんな刺激を腸に起こすのか。自分は一体どうすればいいのか。彼らは入れた後どうするつもりなのか。そんな連想が次々と起こってきて由美子は体裁も外聞も忘れ、子供のように泣き出したい気持ちになるのだった。銀子は洗面器に浣腸を戻して伸に手渡し、「はい。伸さん。由美子さんの浣腸は伸さんがするんでしょ」と言うと伸はそれを押し返し、「いや。銀子。お前がやれ。俺はとっくりとこいつが浣腸されるときの顔を見てみたい」と言って二人は再び場所をかえた。銀子は由美子の尻の前に座り、伸は由美子の顔の真横にドッカと腰を下ろした。憎みてもあまりある伸。それがこれから銀子に、想像するだにおそろしい責めを命じ、それによっておこる醜態を、感情の混じらない、冷ややかな目で観察しようというのだ。そう思うと由美子は耐えられなくなり、目をギュッと閉じて顔をそむけた。銀子を執行人にして自分は冷静で仔細に観察する検分役になる。そんな風にして、徹底的におとしめようとする伸の嗜虐性に由美子は背筋がゾッとする思いだった。由美子は気丈夫ではあるが、いたって明快、明朗、であり、世の中のあらゆる不気味なもの、恐ろしいもの、理解できないもの、には、生理的嫌悪感を感じてしまうのだった。花を愛し、ハッピーエンドの映画を愛し、そして、蛇をおそれ、ホラー映画をおそれた。ホラー映画を見て気絶してしまったこともある。「か、覚悟はできています。そんなに私をみじめにしたいんなら、すればいいではないですか」由美子は自分の中にある恐怖心に耐えきれなくなって言った。「ふっふ。かっこいい啖呵きって、あとで吠え面かくな」銀子は由美子の臀部の前で伸の開始の指示を待っている。伸は思いついたように銀子に来るよう手招きした。銀子が伸の傍らに座ると伸は銀子にヒソヒソと何かを耳打ちした。由美子には聞こえない。伝令がおわると銀子は、「オッケー」と軽快な返事をして元の臀部の前に戻った。銀子は大きなビニールを由美子の尻の下にくぐらせた。由美子はいつ来るかわからない恐怖に歯をカチカチ噛みならし、尻をブルブル震わせている。銀子が由美子の尻の穴に浣腸器の先をそっとつけた。電撃のような衝撃が由美子の全身を走り、思わず、「あっ」と言って顔をのけぞらせた。足指がギュッと閉め合わされたり、ピンとのびたりしている。管はすぐには入ってこない。筆先の責め、のように穴の周りをかすかな接触で這っている。由美子は錯乱しそうな感覚の中で伸が銀子に伝言したであろうことを理解した。(いきなり入れずに先っぽでうんとくすぐってから入れろ)ニヤついた顔で銀子にそう耳打ちした伸の顔が明瞭にイメージされた。いいようのない激しいもどかしさ、の刺激に由美子は激しくうめき、首を振りながら髪を振り乱して何とか、責め、から逃げようと尻をゆする。が、シカンの先はピタリとついてまわって離れない。時たま離れることもあるが、いきなり遊撃的にスッと触れてくる。銀子がふざけた顔で浣腸器でイタズラしている様子が浮かんでくる。いつ触れてくるかわからない恐怖感。銀子の気まぐれなイタズラにおびえつづけなくてはならない、と思うと由美子は耐えられないほどつらい気持ちになり、いっそ泣き出してしまいたくもなる。だがそれが彼らの、ねらい、でもあると思うと由美子はどんなにつらくても耐えなくては、と思い、後ろ手に縛られた指をギュッと握りしめ、奥歯もギュッと噛み締めた。人間の苦痛はすべて精神の苦痛に帰着する。肉体が苦痛を感じることはない。死刑囚を最も脅かす苦痛とは、いつ死刑が来るかわからない、待つ苦しみであり、それは死刑そのものの苦しみをはるかに凌駕する。だが銀子が加えつづける気まぐれな責めに、肉体も精神もまいりきり、由美子は声を震わせながら、「ぎ、銀子さん。浣腸したいのならすればいいではないですか。わ、私はもう覚悟はできています」と言うのだった。由美子の尻の震えは止まったが、閉じられた目の睫毛はフルフル震えていた。銀子はクスッと笑って、「あら。そうなの。浣腸なんてむごい責め、あまりにもかわいそうだから私ずっとためらっていたの。でも由美子さんがそうまで望むのなら仕方がないわ」と、いかにも真面目そうな口調で言う。そう言いながらも銀子はシカンの先で肛門の周囲をふいに触れる悪戯をつづけている。だが由美子はもう抵抗しようとしなかった。自分が狂態を示せば示すほど彼らは喜ぶのだ。閉じられた目尻が少し潤んでいた。いつの間にか秘裂が粘液で潤んでいる、のを見つけた銀子はことさら驚いたように、「まあ。由美子さん、感じちゃってるのね。由美子さんてやっぱりマゾだったのね。マゾならいじめてあげるのが思いやりだわ」由美子は銀子の揶揄をうけてももう動じなかった。由美子は女だが男以上に負けず嫌いの気性だった。運動会でも、学生時代の部活のテニスの試合でも負けると地面をたたいてくやしがった。「ネバーギブアップ」が人間として最も大切な信条だと思っていた。由美子は自分の精神の、大切にしていたものの一つが折れたのを感じた。銀子はイタズラをやめてイチジクの茎をゆっくり挿入しはじめた。だが銀子はそのまま押し入れようとはせず、ゆっくり入れては戻し、と、何度も往復させ、ついに根元まで入れてしまってもクリクリと容器を指でゆする。おぞましい感覚が由美子の全身を震わせた。だが、由美子が抗いの反応を見せないので、銀子の稚気は少し萎え、素直にゆっくり容器をへこました。パスカルの法則に従って容器の中の液体は由美子の体内へ入っていく。冷たい異物がじわっと体内に広がる感覚に、由美子は「うっ」と声を洩らした。「はい。一本」と言って、ゆっくり銀子は抜き取った。そうして、「はい。二本目」「はい。三本目」と、数えながら、銀子はゆっくりと時間をかけて、液を挿入していくのだった。銀子はイチジク浣腸を合計4本、由美子の体内に入れた。「はい。由美子さん。4本入ったわ。どう。気持ちよかった?」便意を促す激しい苦痛が、起こり始めた。「お、お願い。ト、トイレへいかせて」と言って由美子は眉をギュッとしめ、奥歯を噛み締めて苦痛に耐えている。「おい。銀子」と伸は待ち構えていたように合図した。伸に命令された銀子は由美子の尻の下に敷いてあったビニールをサッと抜き取ってしまった。「な、何をするの?」由美子は驚きと恐怖で大声を出した。恥も忘れ、目をパッと開き、傍らの伸を見た。伸は白いブリキの便器を指ではじいて、コンコンと音をさせ、口元をニヤつかせて、「ふふ。出したくなったらビニールを敷いて、便器をあてがって下さい、とお願いするんだ。そうすりゃそうしてやるぜ。もっともその必要がないんならかまわないがね」なんとひどいことだ、と由美子は思った。無理矢理いうにもおそろしい責めをして、おとしめぬいた相手に哀願の言葉を言わせようというのだ。「だ、たれが」由美子は思わず強い口調で反抗の言葉を投げつけた。あまりの執拗さ、に対する嫌悪感でつい口から出てしまったのだ。「ほー。そうかい。オレ達は必要ないってことかい」と言って伸は銀子に向かって、「おい。銀子。オレ達は必要ないとよ。じゃあ引き上げるとするか」と言う。「そうね。由美子さんがいやがるなら仕方がないわ」と言って明るい口調で、「じゃあ、私達、お昼御飯にしましょうよ。用意は出来ているからレンジであたためるだけよ。そうそう。今から民放で二時間の面白い映画があったわ」「由美子君。君が何を考えているのかわからないが、鬼五先生の家のきれいな畳に汚いものをぶちまけるってのはちょっと弟子として失礼じゃないかね。いくら鬼五先生が、寛大で、心が広いからといっても気を悪くするかもしれないぜ」二人は立ち上がって仲のいい友達のように寄り添って踵を返して歩き出した。伸は、「また会う日までー。会える時までー」などと歌っている。その時、陣痛のような激しい痛みのような苦痛が押し寄せてきた。由美子は顔をゆがませ、「うっ」と言って、括約筋に力を入れた。「ま、待って」二人が障子戸を開けた時、由美子は思わず叫んだ。二人はふてくされたような顔で由美子の顔を病人を見舞うように挟んで両脇に座った。由美子は油汗を流しながら、眉を寄せ、歯をカチカチ噛み鳴らしている。由美子がだまっているので銀子が、「由美子さん。何の用なの。言ってくれなければわからないわ。あなたもお腹が減ったから何か食べたいの?」「お、お願い。お願い」由美子は激しく首を左右に振って言った。「お願い。お願い。だけじゃ、何のおねがいかわからないわ。それじゃ子供と同じよ。何のお願いかはっきり言って」再びおそってきた陣痛に由美子は限界を感じ、口唇を震わせながらコトバを出した。「お、お願い。ビ、ビニールを敷いて、ベ、便器を・・・お、お尻の前に当てて」言いきることが出来ず、由美子は目尻から涙を流した。「ふふ。いいぜ。ただし条件がある」と言って伸はピンと由美子の乳房をはじいた。「こう言ってそれをコトバだけじゃなく、ちゃんと実行するんだ」伸は苦痛に眉を寄せ、恨めしそうに自分を見ている由美子を冷ややかな目で見ながら語を次いだ。「私、伊藤由美子は素敵な伸さんを邪険にふった悪い女でした。これからは伸様の奴隷として何を言われても従う素直でかわいい女の子になります。とな」「そ、そんな」「いいぜ。言わないならそれで」由美子は弱々しい一瞥を伸に投げた。誠実な人間は自分を誠実さで縛ってしまう。約束したことは守らなくてはならないという定理は、誠実な人間にとって定言格率であり、やぶれば罪悪感が起こってしまうのだ。寄せては引く陣痛の、ひときわ大きな波が由美子を襲った。それに耐えかねて由美子はついに決断した。「わ、わかりました。言います」「よーし。証拠にテープレコーダーにとっておこう」由美子が話し出したらすぐに録音ボタンを押そうとして伸はテープレコーダーの集音部を由美子の口の間近に用意して面白そうに由美子の口唇が動く瞬間を待ちうけている。由美子はもう一切を観念していた。目尻から涙が一滴こぼれた。「わ、私、伊藤由美子は素敵な伸さんを邪険にふった悪い女でした。これからは伸様の奴隷として何を言われても従う素直でかわいい女の子になります」命じられたコトバを言い終わると由美子はポロポロ大粒の涙を流しながら咽び泣いた。ひときわ大きな陣痛がおそってきて由美子は銀子に涙に濡れた目を向けて、「お、お願いです。は、はやく」と言った。銀子はいそいでビニールを由美子の尻の下に敷き、尻に便器をあてがった。「はいよ。用意はできたわよ」と言って便器でポンポンと由美子の尻をたたいて用意されている事をわからせた。「ああっ」由美子は断末魔の悲鳴を上げ、今までずっと力を入れていた括約筋の力を抜いた。激しい軋音とともに由美子の体内にたまっていたものがいっせいに噴射し、それは豪雨が屋根を打つような音でブリキの便器にたたきつけられた。すべての日本女性はこの音を同性にも聞かれたくないのでトイレで用をたす時は必ず水洗の音でこの音を修飾する。激しく嗚咽している由美子に伸は、「さあ。もうお前はおれの女だ」と言ってチュッ、チュッ、といたる所にキスの雨を降らした。(4)二人は相変わらず、人形のように由美子の体を執拗に弄んでいる。だが、うつろな表情の由美子は、もはや逆らおうとはしなかった。卑劣なだまし討ちで自分をこんな地獄に落とした憎んでも余りある伸と銀子。しかしそんな伸と銀子に自分は敗北を認めてしまったのだ。どう言い訳しようと拷責に負けて自分の意志で負けを認めてしまったのである。そう思うと由美子は激しい自己嫌悪に襲われた。一度負けを認めてしまった以上、抵抗しつづけるのは醜態でしかない。むしろ彼らがそんなに自分をいたぶる事を望むなら、彼らに全面服従すれば、せめても、いさぎよさ、を示せる。虚ろだった由美子の心はいつしか自責の念でいっぱいになり、涙の中に微笑しつつ、警策を求める修行僧のように、自分の怯懦をとことん打ち据えてほしい、という被虐の気持ちでいっぱいになっていた。幸い自分を罰する準備は整いすぎるほど整のっている。銀子は、相変わらず熱心に由美子の秘部を綿棒で弄っている。「はい。由美子さんのまんカス」と言って銀子は、取り出した垢をティッシュの上に大事そうにのせて、由美子の傍らに置いた。「この機会に由美子さんの体をくまなく、隅々まできれいにしてあげるわ」銀子はそう言って耳掻きで耳垢を取り出した。左右の耳掃除がおわると、銀子は濡れタオルで由美子の体を拭き始めた。銀子は、由美子が抵抗の力を抜いたので、いささか、責めがいを失ったのであろう。「銀子さん」「なあに?」「責めて。責め抜いて」由美子は叫ぶような大声で言った。由美子は観念した硬い顔つきで黙ったまま目をつぶっている。「わー。由美子さん。どうしてそういう心境になったの。教えて。教えて」銀子は拭く手を休めて、目をパチクリさせ、膝組みして、煙草をくゆらせている伸の方を見上げた。銀子はイタズラの手を休めて、額に青筋が出来るまでその理由を考えてみた。だがどう考えてもわからない。銀子は子供のような探求心に満ちた目を伸に向けた。「ねえ。伸さん。どうして由美子さん、こんなに素直になっちゃったのかしら。何故だかわかる?」「ふふ。銀子。簡単なことじゃねえか。俺達の愛撫があまりにも優しくて気持ちよかったからマゾの喜びに開眼しただけのことよ」「うーん。そうかなー」伸の説明があまりにも単純明快過ぎるので銀子は、ロダンの考える人のように拳を顎に当てて、考え込んだ。伸はタバコの煙をくゆらせながら、何かを分っているようなしたり顔でいる。「まあ、ともかく虐めてくれっていうんだから虐めてやろうじゃないか。銀子。うんと虐めてやれ」銀子は何か釈然としない心地悪さが気にかかったが元々耳から口へ、脳を介さず直結する反射機能しか備わっていない。物事を考え出すと頭がオーバーヒートしてきて頭痛が起こってくる。銀子は思考を放擲した。銀子にとって、考えるということは体調を悪化させる悪徳だった。人間は、思うがままに生きればいいという、いつもの信条に宗旨変えした。すると途端に、軽やかな気持ちになり、銀子はどうやって虐めてやろうかと思いながら、とりあえず由美子の足の裏を擽った。が、あまり反応がないので、ティッシュで紙縒りをつくって、すぼまった由美子の尻の穴を押し広げ、紙縒りを深く刺し入れた。括約筋の収縮により、紙縒りはキュッと閉めつけられた。銀子は締め付ける強さを調べるように綱引きした。抵抗の力を抜いて銀子の玩弄に身を任せているうちに、由美子の心に今まで経験したことのない不思議な官能の火が灯り始めていた。それは銀子の巧みな誘導によって徐々に激しさを増していった。由美子の心は、自暴自棄とあいまって、いつしかこの官能を自ら求めることにためらいを感じないまでに至っていた。「銀子さん」「なあに?」「そんな手ぬるくじゃなく、もっと徹底的に責めて下さらない」彼らが求めてきた従順さを自らの意志で示すことで自分の自暴自棄な、無条件降伏の気持ちを彼らに示してやろうという気持ちが由美子にこんな態度をとらせるのだった。だが由美子は言って抵抗を感じなかった。伸は耐えきれなくなったように無遠慮に由美子の顔に足をのせて、息を荒くしながら、タバコを揉み消すように力いっぱい由美子の顔を踏みにじった。「ああっ。いいっ」由美子は被虐の喜悦の叫びを上げた。由美子は伸を愛してなどいない。それどころか今でも毛虫のように嫌っている。その相手に、この様に惨めのどん底に、嬲られ、落とされることに、こんな不思議な悪魔的官能があるとは。驚き、であり、発見、であった。タナトスの誘いかもしれない。悲劇のヒロイン願望の喜びかもしれない。由美子の被虐の官能は、自己の魂の暗部へ内向するナルシズムであって伸に対する服従の欲求の思いなどない。伸は道具に過ぎない。そのことは伸も分っている。由美子は決して人に服従するような人間ではない。しかし、そんなことは伸にとって問題ではない。積年の想いを晴らした法悦境だった。床について自涜する時、いつも想い描き出されてやまないシチュエーションがまさに現実となっているのである。「どうしたの。伸さん。そんなに興奮して」腰を下ろして一休みしている銀子が疑問を問う目を向けた。伸は、はちきれんばかりに隆起したものを時々ズボンの上からしごきながら、相変わらず由美子の顔を力の限り踏みにじっている。伸は肩で息をしながら、「この高慢ちきな女をいつかこうしていたぶり抜いてやりたいと思っていたんだ」激しい興奮のため、伸の声はうわずっていた。「おい。由美子。今の気持ちを言ってみろ」怒鳴りつけるように言った。「ああっ。いいっ。みじめになるのがこんなに気持ちがいいなんて知らなかったわ。もっと虐めて」激しい興奮のため、荒くなった呼吸の中から、押しつぶされた顔の中から叫んだ。「ふふ。男勝りの美人OLレディーもこうなっちゃなれの果てだな」なじりのコトバを勝ち誇った王者のゆとりの口調で、投げかけた。「ああっ。いいっ。もっと言って。みじめのどん底にして」伸は、ふふ、と不敵に笑いながら続けた。「いつか君は僕が食事に誘った時、ことさら皆に聞こえるほどの大声で断わったね。覚えているかね?」「ええ」由美子の脳裏にその時の情景が映し出されて由美子は赤面した。言いたくても言えない、皆の不満を代弁し、悪を懲らしめる正義感から、ゆるぎない勇気で堂々と断わった。それ以来、由美子は男勝りの勇気を持った社員として畏敬の目でみられるようになった。「あの時なんて言った。あの時と同じ感情を入れて、あの時と同じセリフを今もう一度、ここで言ってみな」伸は由美子が言いやすいようにするため、踏みつけていた足をわきへのけた。「あなたのようなしつこい、未練たらしい男は最低よ」由美子は勇気を振り絞って言った。が、声は羞恥のため震えていた。伸は再び、ネコをじゃらすように素足をのせて、足指で由美子の顔をもてあそびながら、「そう。そう言ったね。みんなは驚いて一斉に振り向いたね。君は啖呵を切ってスッと立ち去った。あの時はカッコよかった」落ちぶれた落差の現実の自覚が、被虐の官能を燃え立たせ、由美子は思わず、「ああー」と叫んだ。「もっと言って。もっと惨めにして」由美子は、恥も外聞も忘れ、被虐の官能を貪り尽くすように叫んだ。伸はそれを受けて淡々と語を次いだ。「それが今では、素っ裸で、見てくれといわんばかりに大きく脚を、割り開いている。みんなは君と違い、私の言う事にグチを言わず真面目に仕事している。みなが今の君を見たらいやはや何と思うやら」「ああっ。いいっ。もっと言って」由美子は喜悦の涙を洩らした。「今の気持ちを正直に言いな」「こんな快美な世界があるなんて知りませんでした。私は正真正銘のマゾです。みじめになればなるほど幸せなんです。もっともっと嬲って虐め抜いて下さい」伸と由美子の競演をしばしボーゼンとしてあっけにとられてい見ていた銀子だったが、伸がふと責めの足を止めると、銀子の様子が変である。ペタリと床に座り込み、眉を寄せて自分の胸と秘所をゆっくりと揉みながら切なそうな喘ぎ声を出している。「どうしたんだ。銀子」伸が聞くと銀子は切なげな口調で言った。「な、何だか由美子さんを見ているうちに興奮してきちゃった。私も由美子さんみたいにいじめられたい。ゆ、由美子さんがうらやましいわ」そう言って銀子は、「ああー。由美子さんになりたい」と叫んで自涜の蠕動をいっそう加速した。「ふふ。銀子。お前もMが強いな。いつか素っ裸で由美子と背中合わせに縛ってたっぷりいじめ抜いてやる。お前だけ晒し者にして由美子にお前を鞭打たせるってのも面白いな。ともかく由美子はもうSMの世界の人間になったんだからあせることはねえ。これからは色々なバリエーションで楽しむことが出来る。ともかく今は由美子を徹底的に責める事が先決だ。お前も一人でオナニーしてないで手伝え」伸に言われて銀子は自涜の手をやめて、「わかったわ。じゃ、ちょっと待ってて」と言って部屋を出て行った。しばしして戻ってきた銀子を見て伸は口元を歪めて笑った。「ふふ。似合うじゃねえか」銀子は黒の皮のボンデージルックを身につけていた。極度に露出度の激しいハイレグのTバックで乳房を露出させるために、その部分だけをくりぬいた黒い皮の縁取りだけのブラを取り付けていた。M女をみじめにするために着せるボンデージルックであるが、責め手が身に付ければ極めてセクシーな女王様ルックとなる。皮のTバックが激しく尻の割れ目に食い込み、歩くたびにつらい刺激を加え、銀子はよろよろとよろめきながら伸の方に近づいてきた。尻も胸も丸見えという露出度の刺激も銀子を陶酔させた。銀子は伸に裸同然の姿を見られることに陶酔するようにクナクナと座り込んだ。伸は銀子の肩をつかんで立たせた。「銀子。お前がMの快感を味わいたい気持ちはわかる。出来たら由美子と入れ替わってオレと由美子に責め抜かれたいくらいだろう。だが今は我慢して二人して由美子をいたぶるんだ。今はお前が女王様となって由美子いたぶり抜くんだ。オレがお前の恥ずかしい姿をとっくり観賞してやるから」「わ、わかったわ」と言って銀子は由美子の傍らに置いてある籐椅子に座り、由美子の顔に足をのせて顔を踏んだり、足指で鼻を挟んだりしていたが、耐え切れなくなったようにバッと椅子から飛び降りて、縛められて仰臥位に寝ている由美子に覆いかぶさり、強く抱きしめて、「ああっ。由美子さん。好き」と叫びながら口唇をあわせて貪るような激しい接吻をした。銀子は由美子の首筋から胸へと全身に接吻した後、さかんに胸を擦りつけ、乳首を擦り合わせて、「ああっ。いいっ」と喜悦の声を漏らした。最も敏感な所が触れ合うもどかしい官能の刺激から、乳首はみるみる屹立していった。乳首が触れ合うことによって由美子の乳首も自然と屹立していき、由美子は恥ずかしさから、「ああっ。銀子さん。やめて」と叫んだ。銀子はほてった顔で由美子を見詰めながら、「好きなの。由美子さん」と言って、口を閉じさせるように無理矢理口を重ね合わせた。Tバックのハイレグが開いて、銀子はそれをことさら伸に見せつける様にしている。そうすることによって伸から見られる屈辱の被虐感を求めようとしている。伸は銀子の被虐願望を満たしてやろうと思って、「ふふ。銀子。尻も胸も丸見えだぜ。由美子とたいして変わりないぜ」と揶揄した。銀子は、「ああっ。伸さん。いいっ。もっと言って」と侮蔑のコトバを求めた。「お前も素っ裸にして由美子の隣に吊るしてやろうか」「お願い。そうして」「ふふ。二人仲良く並べてたっぷりいじめてやるぜ」「お願い。そうして。伸さん」「それがお前にとって一番望むことだろう」「そ、そうよ」しばし銀子の被虐のまじったレズ行為を見ていた伸だったが、何か思いつたらしく、吸っていたタバコを揉み消して、「仕方ないな。銀子。よし。いい事を思いついたからちょっとこっちへ来い」と言った。銀子は陶酔の余韻で顔を火照らせながら、一時、由美子の愛撫を中止して立ち上がって、酩酊者のように千鳥足でふらふら伸の方に歩いていってペタリと座り込んだ。伸は銀子をつかみ寄せてしばらくヒソヒソと耳打ちした。銀子は聞きながら、「ウンウン。なるほど。なるほど」と相槌を打った。そしてソロソロとまた由美子のところに戻ると、不安げにおびえている由美子に優しい眼差しを向けた。「由美子さん。すばらしい吉報よ。今、伸さんと相談したんだけど、由美子さん、自由になれるわ」「ど、どういうことですの?」由美子は不安げにおそるおそる聞いた。「私が由美子さんの身代わりになるの。そして由美子さんにいじめられるの」「な、なぜ、そんなことをするのですか?」由美子は強い疑問から激しく聞き返した。「由美子さんもMの快感はわかったでしょう。今まで上の立場だった人が逆転して相手にいじめ返されてみじめのどん底になる事がMの最高の快感なの。私も今、Mの気分が最高に盛り上がっているから、今までいじめていた由美子さんに徹底的にいじめ返されて、Mの快感を味わいたいの。由美子さんが伸さんと二人がかりで私をいじめるの。伸さんも今まで味方だったから、裏切られて二人がかりでいじめ抜かれると思うとゾクゾクしちゃうわ」銀子は目を輝かせながら語を次いだ。「でもひとつ条件があるわ。それは由美子さんがSになりきって情け容赦なく徹底的に私をいじめてくれるってこと。由美子さんはMは身につけたけどSはまだ経験がないでしょ。由美子さんの優しい性格ではSになりきるにはきっと強い抵抗を感じると思うの。でも由美子さんは元々、気性が強いし、感性が深いからきっと決断できると思うわ。鬼五先生に気に入られるにはSMが完全にわかってなくちゃダメだわ。由美子さんはMは身につけたけどSはまだ知らないでしょ。それじゃあ片手落ちだわ。これはSMを理解するための煉獄よ。どう? Sになりきって私を伸さんと一緒に徹底的にいじめてくれる? それが条件よ」ねえ、伸さん、と伸に目を向けると伸はおもむろに肯きながら、「ああ。そうだとも。SMの面白さってのは逆転の面白さなんだ。伊藤君。君はMの喜びは味得した。しかしそれではまだ半分だ。今度はSの喜びもうんと味わうがいい。今まで銀子にさんざんいじめられてきた仕返しをするいい機会じゃないか。Sになりきるのも勇気の要ることだぞ」と説教的な口調で言った。由美子は突然の突拍子もない申し出にどう対応したらいいか分からず、ためらいの目を銀子に向けている。銀子もしばし黙って由美子を見詰めていたが、少し弱気な口調で、「でも」と言って切り出した。「でも、由美子さん。私、一抹の不安があるの。由美子さんを自由にしたら逃げちゃうんじゃないかって。由美子さんは体格もいいし、スポーツもしてるから本気になって逃げようとしたら私たちが二人がかりになっても止められないと思うの。それで、由美子さんが自由になっても逃げないでSになってくれるという確証がほしいの」「確証ってどうすればいいのですか」「由美子さんの意志でSになって、私をいじめることを誓って。由美子さんは誠実な人だから自分の意志で言ったことは誠実に守る人だわ」ためらっている由美子の決断を促すように銀子は強い口調で畳み掛けた。「由美子さん。道は二つに一つよ。Sになって自由の身になって私をいじめ抜くか。それともこのままいじめられつづけるかよ」銀子は決断を迫る真剣な眼差しを由美子に向けている。しかし銀子の言う事は信用しきることが出来ず、何と言っていいか分からず、眉を寄せて当惑している。銀子は由美子の返事を黙って待っていたがいつまで待っても答えが来ないので由美子の肩をポンと叩いて笑った。「やーだ。由美子さん。カンタンなことじゃない。何も悩む事なんかないじゃない。自由になれるのよ」銀子の屈託ない笑顔を見ていると、これが夢ではない現実だという実感が徐々に起こってきた。銀子の言うことも筋が通っている。何度もだまされつづけて猜疑心に凝り固まっていた由美子だったが、地獄の責めから解放されて、自由になれるという夢に、もう一度だけ賭けてみようという気持ちがだんだん強まっていった。由美子は決断した。「わ、わかったわ」「じゃ、言って。女王様らしく、堂々と強気の口調で。それと私に対するいじめの脅しと、何か命令することがあったら言って」銀子は目を輝かせて催促する。由美子は何か違和感のおかしさを感じて内心で笑いを漏らした。普通、人にものを頼むときには謙虚に恭しく頼むのが当然の礼儀である。しかしSMでは不遜な態度で命じることが相手に対する礼儀なのである。由美子はこれはいよいよ本物だと確信して、ほっと一安心すると同時に今までだまされ続けてきた銀子に対する憎しみが沸々と湧いてきて、どうしようもないワルガキを叱るような口調で落ち着き払って堂々と言った。「ぎ、銀子さん。よくもだまし討ちにして散々もてあそんでくれたわね。でももうおしまいよ。これからは私が女王様よ。今までいじめられた分、徹底的にいじめ抜くから覚悟おしなさい」銀子は子供のように舞い上がって喜び、パチパチ拍手した。「わー。ステキ。上出来だわ。ねえ。伸さんにも何か命令して。由美子さんが女王様で、伸さんはそれに従うしもべになるのよ」ねえ、伸さん、と言って伸の方に振り向くと、伸は、「あー。そうだった。由美子女王様。何か命令して下さい」と言って正座して丁寧にお辞儀した。由美子はもはや安心しきっていた。何かヘンテコな感覚におかしさを感じつつも、女王様の喜びを感じ始めていた。元々、気性の強い由美子である。縛めが解かれて、女王様の立場になったら、今までさんざん自分をいたぶり抜いた銀子を徹底的に懲らしめてやろうと思った。由美子はスポーツで鍛えられた丈夫な体格と体力を持っている。一方、伸は男とはいえ、だらけた生活で、貧弱で腹だけ脂肪のついたふやけた体格である。自由の身になれば逃げることも出来るし、伸を取り押さえることも出来る。そう思うと由美子は伸に対しても女王の優越を感じて、得意な気持ちになってあしらうような口調で伸に命じた。「伸。さあ。このどうしようもない不良少女を平手打ちしなさい」言われて伸は、「はい。由美子女王様」と恭しく返事して、「おい。銀子。こっちへ来い。」と怒鳴るように命じて銀子を呼び寄せ、「この不良少女め」と言って、銀子の頬を二、三発ピシャリと平手打ちした。銀子は、「ああー」と叫んで床に倒れ、「ああっ。いいわ。由美子さん。私にも何か命令して」と叫んだ。由美子はもはや女王様になった喜びで有頂天になっていた。「銀子さん。私の拘束を解きなさい。奴隷の分際で何て事をするんです。さっさと早く解きなさい」由美子は銀子に高圧的な口調で命令した。由美子は銀子が当然あわてて駆け寄ってきてペコペコ頭を下げながら、縛めを解く姿を想像して余裕で待っていたが、時間が経ってもその気配がない。由美子はだんだんイライラしてきて、「さあ。早く解きなさい。のろのろしているとお仕置きが重くなるわよ」と言った。だが、お通夜のようにシーンとして動きがない。「ど、どうしたの。どうして解かないの」起きるべき事が起こらない疑問から由美子はあわてて声を大に聞いた。銀子は無言で立ち上がって由美子の傍らに座ると、悄然とした表情で由美子の顔をまじまじと見詰めた。「由美子さん。正直に言うわ。これはあなたの人間性を試すテストだったのよ。由美子さんは自分が助かるためなら人を犠牲にしても何とも思わない人間なのね」「な、なんですって」由美子は真っ青になって大声を張り上げた。「私達、あらかじめ相談しておいたの。もし由美子さんが人をいじめる事など出来ないと、きっぱり断ったら自由にしてあげようって」ねえ、伸さん、と言って伸の方に視線を向けると、腕組して黙視していた伸は重たげに口を開いた。「ああ。そうだ。君は自分が助かりたいためなら人などかまわない人間なんだ。君の正体がわかったよ。そういう人間にはお仕置きが必要だな。こんな事になってしまったのも君のそういう業の深さに対する因果応報の結果なんだよ」伸はしみじみとした口調で語った。「由美子さん。残念だわ。私、心の中では、由美子さんが断ることを祈るような気持ちで望んでいたのよ。由美子さんは仏様のようにやさしい心を持っていると思っていたの。人の苦しみを自分が引き受けるような。でも、そんな自分だけよければいい、ずるい人間だったなんて。ゲンメツだわ。少しお仕置きが必要なようね」「だ、だましたのね。あなた達の言っている事は全部ウソだわ。あなたたちはわたしを辱めて、いたぶりたいだけだわ」由美子は柳眉を逆立てて、全身をブルブル震わせながら大声を張り上げた。銀子はそんな由美子の訴えなど、聞く耳など全く持たない、といった様子で籐椅子に腰掛けて、由美子の顔を遠慮なく踏みつけて、タバコを揉み消すようにギューギュー踏みにじった。「どう。由美子さん。今の気持ちは?」と、冷ややかな口調で聞くと、由美子は眉根を寄せて、「ああー」と叫び、「く、くやしい」と言った。「全然反省の気持ちが無いようね。それじゃあ仕方がないわ。お仕置きね」そう言って銀子は蝋燭を取り出すとライターで火をつけた。ゆらめくことなく不動のまま点りつづける紡錘形の炎は不気味な様相を呈している。「な、何をするの?」一心に炎を見ていた由美子は恐怖感に耐え切れなくなって声を震わせて聞いた。銀子は答えず、無言のまま由美子の胸の上で、ゆっくりと蝋燭をかたむけた。炎に熱せられた蝋涙がポタリと由美子の胸に滴り落ちた。蝋涙は肌に当たると、持っていた熱を一気に体に移した後、鳥の糞のように体にこわばり付いた。「熱いー」由美子は反射的に声を張り上げて体をブルブル震わせた。「ぎ、銀子さん。やめて。お願い」由美子は叫ぶように哀願した。が、銀子は聞く耳を持たないかのごとく、由美子の体のあちこちにポタリ、ポタリと蝋涙をたらしていった。由美子は蝋涙が当たるたび、「あっ。あっ」と叫び声を上げながら後ろ手に縛められた不自由な体を右へ捩ったり左へ捩ったりしている。由美子の体はみるみるうちに蝋粒で埋まっていった。蝋の熱さに加えて、いつ終わりになるか分からない不安感から由美子は弱々しい目を銀子に向けた。目は涙で潤んでいた。銀子はしてやったりといった得意顔になり、ニヤリと笑い、「ここを焦がすのもいいわね」と言って、内太腿にポタリと一滴たらした。蝋は雨雫のように女の一番敏感な所へとソロソロ伝わっていった。由美子は「ここ」の意味がわかって、恐怖で真っ青になった。由美子はもう恥も外聞も忘れ、「ぎ、銀子さん。許して。銀子さんにとってしまった失礼な態度は心よりお詫びします。何を命じられても素直に従う奴隷になります。で、ですから、ど、どうか、もうこれ以上は許して下さい」と言ってわっと泣き出した。銀子はニヤリと笑い、「じゃ、ちゃんと奴隷の宣言をして」と言って蝋責めを一時中止して、由美子の顔を見つめた。手には炎のともった蝋燭をしっかり握っている。言わなければその炎で熱せられた蝋が再び降りかかってくるだけである。そう思うと由美子はもはや逃げ場のない絶望感に襲われて、咽び泣きながら、銀子が満足するような誓いのコトバを述べた。「私、伊藤由美子は奴隷の分際で銀子女王様に、この上ない失礼な事をしてしまいました。これからは銀子女王様の忠実な奴隷として、銀子様の命じる事にはすべて従います。私のしてしまった失礼な言動に対してうんとお仕置きして下さい」銀子は蝋燭の火をフッと吹き消して床に置き、「上出来。上出来」と言ってパチパチ手をたたいた。由美子は蝋燭責めが中止されたことにほっと一安心するとともに、元のMの立場に戻ってしまったみじめさに打ちひしがれて、顔を横に向けた。銀子は由美子を元気づけようと笑顔でやさしく語りかけた。「ふふ。由美子さん。奴隷になっても少しは反抗してもいいのよ。そうした方がいじめがいがあるわ。今の気持ちを正直に言って」このコトバは少なからず由美子を元気づける効果があった。由美子は今の思いを正直に感情を込めて言った。「く、くやしいわ。銀子さんの罠にはまって、こんなみじめな目になるなんて。くやしくて、くやしくて、仕方がないわ」「そうそう。それでいいのよ。ふふ。由美子さん。同性にいじめられる気持ちはどう?」と言って由美子の顔を遠慮なくグイと踏み付けた。「ああっ。みじめだわ。男の人より同性にいじめられる方がずっとみじめだわ。く、くやしい」銀子は、ふふふ、と笑い、どっこいしょ、と言って、由美子の顔にドンと尻をのせた。顔に尻をのせられるというこの上ない屈辱と、のしかかる銀子の体重の辛さに由美子は、「ああー」と叫んだ。銀子は、「あーあ。一休み」と言ってタバコを取り出して一服した。時間がたっても銀子は降りないので、由美子は耐え切れなくなって、「ぎ、銀子女王様。お許しください」と心を込めて哀願した。何度もだまされつづけて、憎みても余りある銀子。その銀子に顔を椅子の様にされて尻をのせられるという屈辱をうけても、その苦しみからのがれるには銀子に心を込めて哀願して、銀子の気まぐれにすがるしか道は無いのである。人間的なプライドにしがみつこうとすればするほど余計みじめになるだけだと思うと、由美子はもうみじめのどん底に落ちてやろうという開き直りの気持ちになった。そして何度も許しを乞うているうちに再び由美子に被虐の官能が芽生え始め出した。心を込めた由美子の哀願に心を動かされたのか、銀子は立ち上がって籐椅子に腰掛けた。「お、お許し下さって有難うございます。銀子女王様」言って由美子は抵抗を感じなかった。むしろ許されたことに心からの感謝を感じた。銀子は余裕の笑顔で由美子を見ていたがヌッと足を突き出して由美子の口に押し当てた。「さあ。足の指を一本、一本ていねいに舐めて、きれいにするのよ」「はい。銀子女王様」由美子は恭しく答えると言われたように銀子の足指を小指から一本ずつ口に含み、丁寧に舐めた。人間の足を舐めてきれいにするという最悪の屈辱にも由美子は抵抗を感じなかった。むしろ被虐の官能を求めるように、貪るように一心に足指をしゃぶった。「ふふ。由美子さん。マゾの喜びを感じてるでしょ」由美子は答えられなかったが、顔は赤面していた。銀子はグイと由美子の顔を力いっぱい踏みつけた。「ああっ。いいっ。銀子女王様。もっと強く踏んで下さい」「ふふ。男勝りの由美子さんもこうなっちゃ成れの果てね」「ああっ。いいわっ。銀子女王様。もっと言って。みじめにして」由美子は何もかも忘れ被虐の喜悦の頂点に登りつめていた。伸は少し離れた所でタバコを吹かしながら胡坐をかいて二人の様子をSMショーを見物するように眺めていたが、銀子に、「伸さんも来なよ。今、由美子はマゾの法悦境にいるんだから」と促されて、「おう。そうだったな」と言ってスッと立ち上がると銀子と向かい合わせになって由美子の顔を見下ろした。顔は銀子に踏まれて歪み、眉根が苦しそうに寄っている。伸も遠慮なく由美子の顔を踏みつけた。二人は被虐の陶酔にひたっている由美子を、顔を踏んだり、足で乳房を揉んだり、鼻をつまんだりと、散々いたぶり抜いた。(5)外はもう夕闇が迫っていた。「このくらいしておけばもう逃げる気も起こらんだろう。今日は俺の人生で最高の一日だったよ。じゃ、おれは帰るから」と銀子に言って伸は帰っていった。銀子は由美子の下肢を吊り上げていた縄を下ろし、由美子の足首に取り付けられていた樫の棒も取り外した。全裸で後ろ手の縛めだけとなった由美子の足首を、「痛かったでしょう」などと同情的な口調で言いながら、銀子はぬれタオルで丁寧に拭いた。由美子の両足首は長時間の拘束のため、くっきりと縄の跡がついていた。由美子は長時間におよぶ言語に絶する拷責の疲れから、もう何をする気力も持てないといった様子で畳の上に体を横たえている。足の拘束が無くなったのだから、銀子のスキをうかがって、屋敷から逃亡しようと駆け出すことは出来る状況である。しかし由美子に、もはやそんな気力はなかった。仮に逃亡できたからといって何になろう。もう元の職場に戻ることも出来ないし、「鬼五の弟子入り」もおしまいである。一人でコツコツ小説を書いて新人賞に応募して入選する、などして、作家と認められるようになったとしても、伸や銀子は今日のスキャンダルのことを世間に公表するぞ、などと言って由美子を脅迫してくるだろう。もう自分は、恥ずかしい思いをしながら、鬼五の弟子として作家を目指すしか道はないのだと、畳にうち伏しながら思っていた。言語に絶する辱めを受けても由美子の作家を志す情熱は少しも衰えていなかった。伸や鬼五の計略にまんまとはまった悔しさはあったが、あれだけの辱めを受けて、それを受け入れてしまった以上、もはや失うものは何もなくなった。むしろ、全てを晒し、全てを受け入れてしまったことは由美子に作家としての成長を皮肉にも起こしていた。鬼五の罠にはまった事は悔しくはあったが、実際、鬼五の言った通りだったのだ。そう思うと鬼五の作家としての巨匠、巨魁、巨根さにあらためて畏敬、畏怖の念を感じるとともに、もう毒食らわば皿まで、といった心境になって、何としても鬼五について作家になりおおせてみせる、という負けじ魂が沸き起こってくるのだった。由美子が逃げる気配を見せないので、銀子はクスッと笑い、「とうとう由美子さんも決断がついたようね。よかったわ」と言って部屋を出て行った。由美子は神経を休めようと、目を閉じた。由美子は拷責の疲れから、いつしか眠り込んでいた。   ☆   ☆   ☆ 四方からの騒々しい声で由美子は目を覚ました。周りを見て、由美子は驚きと恥ずかしさから、すぐさま身を起こして立て膝でピッタリと脚を閉じ合わせた。何と昨日とまったく同じ顔ぶれのヤクザっぽい男女が三人ずつ、合計六人、夜になって電灯のついた座敷の中央の由美子を取り囲むようにドッカと胡坐をかき、酒席の余興を楽しむような視線を由美子に向けている。彼らの前には膳が置かれ、ビールが配られている。その中に銀子を見つけると、由美子はもうどんな覚悟をしたとはいえ、思わず、銀子の意地悪さを怨みたく思った。覆うもの一枚ない丸裸で後ろ手に縛められている自分の困惑する姿を酒席の余興にしようというのだ。銀子と目が合うと、銀子はクスッと笑って、「ふふ。由美子さん。やっとお目覚めね。あまり気持ちよさそうにスヤスヤと寝ていたものだから、起こしちゃ悪いと思ったの」などとうそぶいている。由美子は恥ずかしさから膝をピッタリ閉じ、視線のやり場に困りながら全身を小刻みに震わせている。伸と銀子の二人がかりのいたぶりは、一過性の暴虐的な嵐のようなものとして、かろうじて耐え抜けた。いかに屈辱的とはいえ、密室での、人には知られない屈辱という救いがあった。しかし今は、見ず知らずの人間達の前で覆うもの一枚ない丸裸の姿をフザケ半分のニヤついた視線を受けている晒し者となっているのである。 伸と銀子の時は、責め手も受刑者もそれなりに真剣さがあった。真剣な戦いだった。しかしこれは、一方的に面白半分で見下されている惨めさだけである。その時、戸が開いて鬼五がヌッと入ってきた。以前と同じように浴衣姿で黒ぶちの眼鏡をかけている。鬼五は床柱を背にドッカと座ると、もう酒が入っているのであろう、上気した顔を由美子に向け、「伊藤君。今日のことは銀子から聞いた。どうだ。いい人生勉強になっただろう」などと言いながら、今日とられた屈辱のテープレコーダーを部屋に鳴り響くほど、ボリュームいっぱいに再生した。由美子は思わず赤面した。由美子は哀しげな目を鬼五に向けて、「せ、先生。私もこんな生き恥を晒して先生のいうことには全て従っているんです。先生のいうことには何でも従う忠実な弟子になります。ですから、どうか、どうか・・・」もうこれ以上みじめにしないで下さい、と言ってわっと泣き出した。鬼五は、いじっていた由美子の下着を脇におくと、「いいだろう。君は作家になるための試練を見事に耐え抜いた。君には可能な限り、大手の雑誌に文章を書かせてやろう」銀子は鬼五の隣で鬼五に酌をしていたが、鬼五に何かを耳打ちされて、クスッと笑って立ち上がって部屋を出て行った。しばしして戻ってきた銀子を見て、由美子は思わず「ああっ」と大声をはり上げた。何と銀子は、裸で後ろ手に縛られた彩子の縄尻を取って座敷に入ってきたからだ。彩子は全裸ではなく、腰にはピンクの色褌が取り付けられていた。それは確かに全裸を隠す覆いとはなっていたが、その覆いは救いの覆いではなく、逆説的に男の劣情をかきたてる効果を出す惨めな物でしかなかった。昨日、家に帰らせたはずの彩子がどうしてこのような辱めの姿で今ここにいるのか、由美子には全くわからなかった。「ぎ、銀子さん。どうして彩子さんがそのような姿でここにいるのですか」と聞くと、銀子はクスッと笑って、「ふふ。彩子さんにも泊まっていくようすすめたら肯いたから泊めてあげたのよ。でも聞き分けが悪くて、由美子さんのキャッシュカードの暗証番号を聞いても、由美子さんを裸にして縛るのを協力するよう言ってもガンとして言うことを聞かないの。だから少しお灸をすえたの。あなたは客間で休めたけど、彩子さんは裸で縛られて正座させられたままだったから可哀相だったわ。それに今まで何も食べていないのよ」「ぎ、銀子さん。あ、あなたって人はなんという酷いことをするのです。彩子さんに何の罪があるというのです」由美子は柳眉を逆立てて銀子をキッとにらみつけて大声で怒鳴った。彩子は孤児院出で、ある町工場で働いていたところを不況で解雇され、一人ポツンとたたずんでいたところを由美子が、「どうしたの」と声をかけたのが二人の出会いのきっかけだった。近くの喫茶店で身の上話を聞くと、アパートの家賃も滞りがちで、あわやホームレスになるところだと知った。同情した由美子はそれ以来、彩子を本当の妹のようにかわいがって面倒をみてきた。保証人となって居を確保し、上司に頼み込んで自分の勤めている会社に就職させた。さらにはクレジットカードを渡して暗証番号まで教えた。そうしても全く不安を感じないほど、彩子は真面目で純粋な性格だった。内気で無口な性格のため、会社でも一人でポツンとしていることが多かったが、由美子と二人になると満面の笑顔に変わり、心に秘めている想いを包み隠さず楽しそうに話した。由美子にとっても、自分だけは信頼してくれているという彩子の思いは無上の喜びだった。由美子にとって彩子は目の中に入れても痛くないほどの実の妹のような存在だった。孤独で友達がいない寂しさをまぎらわすため、コツコツ一人で小説を書くことが彩子の唯一の趣味だった。その作品を見せてもらい読んだ時、小説の構成や細部に至るまで、美しく隙なく整った文章の完全さに由美子はびっくりした。これならきっと作家になれると、今回の作家弟子入りに、ぜひ一緒に、と強く誘ったのである。彩子に大きな野心は無かったが、由美子の思いやりが嬉しくて、一も二も無く承諾してついて来たのである。そんな彩子を玩具のように扱って、褌一枚という奇矯な姿で、何も食べさせずに今までずっと正座させていた、と思うと由美子は銀子に対して言いようの無い憤りの気持ちがフツフツと沸き上がってくるのだった。だが銀子はそんな由美子の気持ちを知る由は無い。褌一枚で後ろ手に縛められた彩子の縄尻を官憲のように取りながら円座の中央に引き出した。彩子の頭の上には昼間、さんざん由美子を嬲った、梁に取り付けられた滑車が垂れ下がっている。銀子は彩子の縄尻を滑車に通して固定して、彩子を立ち縛りにした。彩子はまだなだらかな隆起の乳房の、成熟しきっていない幼さをのこした体つきである。体同様心もまだ幼さを残しているのか、円座の中央で晒し者になっても、恥ずかしがる様子も見せず、うつむいて寂しそうな視線を床に落としている。「ぎ、銀子さん。彩子さんに何をしようというのです」「彩子さんはいうことを聞かなかった罰としてこれからお仕置きを受けるのよ。それに彩子さんも、今、由美子さんが裸の晒し者になっている、と聞いたら、自分が身代わりになる、と言ったのよ」由美子は鬼五に振り向いて、「鬼五先生。どうか彩子さんの責めだけは許してやって下さい。代わりに私がどんな責めでも受けます」「いや。彩子はまだ作家になるための覚悟が出来ていない。非情なようだが、わしは心を鬼にして彩子の精神を鍛えねばならん」「お、鬼五先生。どうか彩子さんだけは許してやって下さい。彩子さんは文壇で認められるほどの作家になりたいとは思っていないんです。趣味で同人誌にファンタジー小説をコツコツ書いているだけで十分満足しているのです。それを私が無理に誘って連れて来てしまったのです」「そうか。じゃあ、彩子は檻に飼って秘密ショーのスターとして働いてもらおう。その代わり、由美子君。君はわしが責任を持って立派な一人前の作家にしてやろう」鬼五は男二人に目配せすると、された二人の男は鞭を持って彩子の後ろに立ち、交互に彩子を鞭打ちだした。鞭はりゅうりゅうと風を切って、尻といい、背中といい、ところ嫌わずピシリ、ピシリと激しい音を立てて振り下ろされ、彩子の体はみるみる赤く蚯蚓腫れしていった。鞭が当たると彩子は一瞬、苦しげな表情になり、「うっ」と声を漏らしそうになったが、黙ってじっと耐えている。由美子は耐えられなくなり、「せ、先生。どうか止めさせて下さい」と声を大に言った。鬼五はコップ酒をあおりながら、「いや。由美子君。作家は人情家とは違う。どのような惨いものを見ても、冷静に静観して、それを力強い文章力によって迫真の作品に仕立て上げるのが作家の仕事なのだ。作家になるためには人を踏み倒して、のし上がるくらいの非情な精神力も必要なのだ」と言って残っていたコップ酒をぐいと飲み干した。そう言われても由美子は何度も責めを止めさせることを訴える。が、鬼五は、「いや。それは出来んな。そんな感傷的な根性では作家にはなれん」と突っぱねる。彩子を鞭打っていた二人の男は一休みするために、鞭打ちの手を休めた。その時である。怨みも憎しみも感じられない表情で、視線を床に落としていた彩子がおとなしい口調でポソリとつぶやいた。「おねーちゃん。いいよ。彩子、おねーちゃんが幸せになってくれればどうなったっていいもん。おねーちゃんが幸せになることが彩子の幸せだもん。彩子、おねーちゃんが世界一好きだもん。おねーちゃんの捨てた物、みんな家にあるもん。おねーちゃんから借りたパンティー、宝物にして握って寝てたもん。おねーちゃんの写真、彩子の一番の宝物だもん」ああ、何という有り難い心でしょう。金がある時は世辞をいってたかり、金が無くなるとしらんぷりする世間の人間とは如何にかけ離れた心でしょう。由美子にはもう小説家への夢も、自分の命さえも念頭に有りませんでした。由美子は、今の自分の境遇が、芥川龍之介の短編小説、「杜子春」のラストに極めて似ていることを、錯乱した頭の中で確固として感じ取った。由美子は目から溢れ出る涙を迸らせながら、まろぶように彩子に向かって駆け出し、彩子を鞭打っていた二人の男にあわてて取り押さえられながらも、激しい抵抗をしながら、泣き濡れた顔を鬼五に向け、「もうやめさせて下さい。私が一生、秘密ショーのスターとして仕えます。その代わり、彩子だけは手をかけないで、自由にしてやってください」と泣きじゃくりながら叫んだ。鬼五は顎を撫でながら、しばし黙ってじっと由美子を見つめていたが、おもむろに口を開き、「ふむ。お前達にはどうやら俺の弟子は無理のようだな。で、これからどうする」と厳かな口調で聞いた。「はい。貧乏でも名が売れなくても、彩子とささやかに正直に生きようと思います」由美子の声には今までにない晴れ晴れした調子がこもっていた。「よし。その言葉を忘れるな。俺はそれが聞きたかったんだ。今日のことは絶対誰にも言わないよう、伸にかたく口止めしてやろう。もうお前たちを辱めたりは二度としない。オレは本当は女にはやさしいんだ。どうだ。もう一度考えてみてオレの弟子になる気はないか」由美子はしばし迷った後、「はい」と答えた。「よしわかった。」鬼五はそう言う内に、もう立ち上がって踵を返して座敷を去ろうとしたが、急に足を止めて、由美子の方を振り返ると、「おお。幸い、今思い出したが俺はあるアマの将棋雑誌のオーナーになったところだ。お前たちはすぐれた作家だと紹介してやるから、名人戦の対局記など、何でもお前たちの好きなように書かせてやる。世間に名を売れるし、文章の修行にもなる。どうだ。やってみるか」と聞くと、由美子は笑顔で元気よく、「はい」と答えた。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 回春マッサージ物語 1 (小説) | トップ | 官能作家弟子入り奇譚 (上) (... »

小説」カテゴリの最新記事