夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

三年坂、二年坂

2014-04-21 23:08:59 | 日記
例会が終わった後は、暗くなる前にと思い、京都女子大からほど近い清水寺に、やや急いでお詣りに行った。
もう六時に近いので、五条坂を登っていくと、参詣を終えて下りてくる人々と次々にすれ違う。(拝観は六時半まで。)


奥の院の方から、本堂を望む。
この時期は、新緑が目にも鮮やかだ。


参詣を済ませた後は、三年坂~二年坂とゆるゆる歩いてきた。
よく言われるが、この辺りはもっとも京都らしい風情を感じさせる場所の一つである。
石畳の道を、着物を着た人も多く歩いて行く。


暮れなずむ空が、淡い夕映えの光を残している。
このときは、冷たい風が吹き、晩春とは思えない肌寒さであった。
そのためこの後、八坂の塔から祇園辺りを歩き、河原町の居酒屋へ熱燗をやりに行ってしまった。

女坂

2014-04-19 22:50:15 | 日記
例会で京都へ。会場は、「京女」(きょうじょ)こと京都女子大学。
京都駅八条口から大学前まで、「プリンセスライナー」というバスで直行便があるのだが、車体が真っ赤で、しかも女子大生ばかり乗っているので、少々気恥ずかしい思いをする。
バスは東山七条から、阿弥陀ヶ峰へ続く急な坂道を上り、京女前で停まった。今まで知らなかったのだが、隣接して京都女子中学・同高校もここにある。これらの女子生徒・女子学生が通学で上り下りするので、この坂を「女坂」というそうだ。


開始時間よりだいぶ早く着いてしまったので、この坂道の途中にある「坂」という喫茶店でしばしくつろぐ。
この店は水平に建てられているので、ガラス張りの壁面の窓から外を見ると、坂道の傾斜がはっきりとわかる。
土曜日の昼どきなので、半日授業を終えて坂道を降りてくる女子高生たちの姿が見える。
中にはマウンテンバイク(!)で登っていく自転車通学の女子大生もいたが、やはり坂が急なので、立ち漕ぎになっていた。


例会は参加者も多く盛況だった。皆さん、春からご所属が変わったり、あるいは新年度業務で忙殺されている中のご参加だと思うが、それだけに、研究発表や質疑応答などの雰囲気に久しぶりに触れてホッとした、ということを何人もが口にされていたのが印象的だった。
私としては、お三方めの「志香須賀(しかすが)文庫」所蔵古筆断簡についてのご発表が、長い時間をかけて精力的に調査した結果であることを強く感じ、大変勉強になった。
この日は、会場大学所蔵の『和漢朗詠集』の写本なども閲覧することができ、多くの収穫を得て帰ってきた。

研修旅行 その2

2014-04-18 23:36:59 | 日記

今回の研修は、香川県にある小豆島で行われた。
入学間もない新入生たちに、研修で学校の規則や集団行動のルールについて教え、レクリエーションを通して団結力を養わせるのが目的である。
挨拶・礼儀や集合・整列の仕方といった、高校生以前の基本的な作法についても指導する。
ここで手を抜くと、後から生徒の問題行動や生活習慣の乱れといった形で、そのツケが回ってきて、3年間苦労することになるので、どの教員も一所懸命である。
ただし、生徒たちは、ハードな研修の中でも、スポーツで汗を流したり、休み時間に仲間と語らったりすることに、楽しみを見出している様子だった。
とりわけ彼らがいきいきとしていたのは、やはり食事の時間である。食べることにこれだけ夢中になり、幸せそうにしている姿を見ると、なんだか羨ましくなる。
夕食のときは、教員と生徒とではまるっきりメニューが違い、私たちは旅館の会席料理のような感じで、正直……だった。(出された食事に不平を言うのは、社会人としてNGなのだが、そのくらいガッカリしたのだ(泣)。)

一方、生徒向けメニューは、小豆島の特産品をふんだんに使った料理ばかりで、他の先生方も、我々も生徒と一緒にこちらを食べたかったと言っていた。
大きな厚切りの豚ステーキ。若鶏の唐揚げと、ブロッコリーなど野菜の付け合わせ。ファルファッレ(蝶の形をしたパスタ)にインゲン、人参など茹で野菜をオリーブオイルで絡めたもの。小豆島はオリーブの名産地で、明治時代に日本で初めてその栽培に成功したらしい。
これも島の特産品の手延べそうめんに薄切りタマネギなどを加え、お酢のつゆをかけたサラダそうめん。タケノコとワカメの煮物。

生徒は肉ばかり食べて、後の3つはかなり残しているので、
「近頃の若い者は、味覚がなっとらん。」
と悪態をつきつつ、テーブルに乱入して勝手に食べさせてもらった。とても美味しかったので、彼らにもっと食べるよう促したのだが、
「タケノコはあまり…。」
「そうめんの味付けがいまいち…。」
といった反応で、煮物や酢の物のよさが、この年頃だとまだあまり分からないのかなと残念だった。

2日間、写真のようにぐずつきがちの天気だったが、雨の影響は少なく、充実した研修旅行となった。

研修旅行 その1

2014-04-17 23:10:34 | 日記

今日明日は、新入生の宿泊研修の引率。
バスで日生(ひなせ)港に行き、そこからフェリーに乗る。
春の瀬戸内の海は、波も穏やかで、展望デッキにいて潮風を受けながら進んで行くのも心地よい。海面に日光が反射してキラキラと輝いている。
研修旅行の話題は、また取り上げます。

隠れ家 その2

2014-04-16 23:15:22 | 日記
狭い板戸を開けて中に入ると、目の前にカウンターが奥へ長く続いており、突き当たりの座敷までが見渡せる。京都の町屋のように、間口は狭いが奥行きが深い、「うなぎの寝床」といわれるような造りである。
奥側のカウンターに通され、店主の厨房での仕事の様子を見たり、会話をしたりしながら、料理とお酒を楽しむことができた。私の好きな日本酒も、
「メニューに出てないところで、色々ありますよ。岡山のは全部、その他はこれとかこれとか…。」
と言って、店主が冷蔵庫から次々と一升瓶を取り出して見せてくれる。
最初は香川の綾菊、次に青森の田酒(でんしゅ)、最後は、
「お燗に合うようなお酒を。」
と頼んで、島根の王禄をいただいた。
料理を引き立てるようなお酒が、あれだけ取り揃えてあるのは嬉しい。

カウンターに座って、すぐ目についたのが、ガスコンロに置かれていた蒸し用鍋。洗面器くらいの大きさのが三段重なっていた。包丁も幾つもの種類を使い分けているし、料理はかなり本格的だという印象を受けた。
私のちょうど目の前のまな板の脇に、ツヤツヤした完熟トマトと、大きくて鮮やかなアスパラガスがあるので、
「これで何か作ってもらえませんか?」
と頼むと、
「それぞれ別の料理でよければ。」
と言われ、トマトは唐揚げにして、アスパラはそのまま茹でて、出してもらった。
トマトの唐揚げは初めてだったが、湯むきをして四つほどに切り、粉を打って揚げていたと思う。香ばしく、旨味がぎゅっと濃縮されて、食べ応えがあった。アスパラガスは、『蒼太の包丁』でも言っていたが、手を加えず茹でたてを食べるのが一番だと思う。醪(もろみ)を付けて食べる私の様子を店主が見ていて、
「おいしいでしょう?」
と嬉しそうに聞いてきた。食材は基本、店主が自分で買いに行くそうだが、トマトだけはある方に特別にお願いしているそうだ。この時期に、これだけ立派なトマトがあるので、思わず、「どこから入手しているのですか?」と尋ねてしまったのだが、やはり独自の買い入れルートがあるのだなあと感心した。

お造りで何かお勧めは、と聞くと、サワラかタコか○○(もう一つは忘れた)ということだったので、タコを頼んだ。最近、茹で方を変えたそうだが、身はプルプル、皮の方はゼラチンのようになめらかで、その上、吸盤のプチプチした食感がたまらない。舌ざわりや歯ごたえというのも、味覚のうちであることを痛感する。

最後にもう一品くらい…と思っていたら、奥の座敷(たぶん女子会)へおでんのような料理を持っていくのが見えたので、
「あれと同じものを。」
と頼むと、テール大根だと教えてもらった。牛テールと大根がとろっとろに煮込まれていて、しみじみ美味しくいただいた。王禄お燗との相性もよく、店主がお酒も料理も大切にしながら客をもてなしているのが分かった。

まさに隠れ家のような雰囲気の居酒屋で、日本酒の品揃えも充実しているので、次にまた行ける機会を楽しみにしている。