夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

古今伝授の里

2018-03-20 23:11:38 | 日記
郡上八幡で泊まった翌日、再び長良川鉄道に乗って三駅目の徳永で降り、そこから30分ほど歩いて「古今伝授の里」に行った。
室町時代、この辺り(郡上大和)を治めていた東常縁(とうのつねより)は、武人であるとともに優れた歌人であり、この地で連歌師の宗祇(そうぎ)に古今伝授を行ったとされている。

かつての東氏居館跡のあたり一帯が、今は古今伝授の里・フィールドミュージアムとなっており、栗巣川をはさんで居館跡の庭園を見下ろす高台に、東氏記念館や和歌文学館がある。
和歌を学ぶ者としては、ぜひ一度ここを訪れたいと思っていた。


和歌文学館は回廊式の展示館で、万葉集から近代短歌まで、和歌・短歌の歴史をわかりやすく学べるようになっている。
私が行ったときは、「歌人たちの足跡」という、主に近現代の歌人たちの自筆短冊を中心とした展示が行われていた。表記を改めて紹介すると、
  
  駒とめてかへり見すればほととぎす一声鳴きぬ妹が家のあたり(落合直文)
  吉野山その唐歌を誦しければ袖にぞかかる秋の時雨か(佐佐木信綱)
  横雲が照る日を含み輝けば幸ひの巣のここちする海(与謝野晶子)

与謝野晶子が大正11年、大垣在住の女性に短歌の添削をした書簡も展示されており、とても興味深く見た。

全国の歌人や短歌結社、出版社等から送られた歌集や歌誌、和歌・短歌の研究書等を所蔵する短歌図書館大和文庫もここにある。
和歌・短歌に携わる者にとっては聖地ともいえるところであり、訪れることができた幸運を思った。