夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

穴埋め短歌

2016-05-20 23:34:47 | 短歌
先日の文学の授業(短歌講座)のとき、学生に短歌の穴埋め問題をやらせたら、いろいろな解答があって面白かった。

これは創作短歌へのステップとして行ったもので、『穴うめ短歌でボキャブラリー・トレーニング』(産業編集センター編)に出ている問題を数問、そのまま使わせてもらった。

解答例をいくつか紹介すると、

①友がみな われよりえらく 見ゆる日よ ■■■買ひ来て 妻としたしむ
 (石川啄木)
元の歌では「花を」

学生の解答
・菓子を
・酒を
・土産
・シャンパン
・清酒
・ビール
・ワイン
・パセリ
・セロリ

「花を」の正解が2つあった。
啄木は、憂さ晴らしのための酒を買ったと理解する者が多かったのは、仕方ないか。
「パセリ」「セロリ」は、かなりいい線いっているような気がする。

②ウミウシに 話しかけたら ■■■■■ ような気がする からやめておく
 (村上きわみ)
元の歌では「長くなる」

学生の解答
・無視される
・溶けてゆく
・返事する
・逃げられる
・きりがない
・食べられる
・笑われる
・追ってくる
・溺死する
・不審者の

どの答えも秀逸だが、最後の答えが一番笑えた。

③幼き日 パン買いに行きし 店先の ■■■■■■■ いまも忘れず
 (萩原朔太郎)
元の歌では「額のイエスを」

学生の解答
・古き看板
・黒い番犬
・茉莉花(ジャスミン)の香を
・子どもの泣き声
・可愛い女子を
・くすんだガラス
・店員(売り子)の笑顔

「子どもの泣き声」は、「買ってよー!!」という泣き叫び声だろうか。

穴埋め短歌は、その歌の詠まれた状況や背景を、作者の立場になって想像・理解することにつながり、言語の運用能力のトレーニングにもなっていると思う。
私の行っている短歌講座では、学生が自らの心情や感動を創作短歌で表現できるようになることが目標だが、そのための準備段階として、短歌の穴埋め問題に取り組ませるのは、はなかなか有効な方法だと思った。