陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

暴露された<ドラゴンの歯>北朝鮮とシリア間軍事協力の実態:核不拡散問題

2007-09-23 12:58:17 | 朝鮮半島
 高山正行氏の力作「情報鎖国・日本―新聞の犯罪」(廣済堂出版、2001)に北朝鮮に関する興味深い記述があり、北朝鮮を<ドラゴンの歯(不和の種)>と呼んでいる。中々面白い内容なので、同書63頁末尾から引用してみる。

(以下部分引用)

北朝鮮はアジア分断のドラゴンの歯

 で、北朝鮮は「記録的な天候不順」と「干ばつ」「洪水」の三つの単語を適当に並べ換えながら国際社会に人道的支援、つまり食糧援助を求めてきた。
 アメリカの、例えば国務省や国防総省はこのころ北朝鮮を「Rogue State」と表現していた。ならず者国家という意味で、記者会見でもごく当たり前に使われていた。
 大韓航空機の爆破テロ、偽ドル作り、覚せい剤の密輸、それも外交官が運び屋になって、世界中にばらまいていた国である。あるいは人さらいもやる。ならず者以外の何者でもなかった。
 ではアメリカ的正義で、叩けばいいではないか。現にアメリカは、コカイン密輸に一枚噛んでいたパナマのノリエガ将軍を、軍を出動させてパナマに乗り込み逮捕したことがある。パナマの主権も国際法も、アメリカの正義の前には無力なのだから。
 でも、アメリカには明確なポリシーがあって、それに従うならば、北朝鮮問題は解決の必要がなくなる。むしろ放置して、このならず者を助長する方向に傾くのだ。
 どういうポリシーかというと、アジア諸国が、どういう組み合わせにしろ協調体制を取ることは好ましくない、とくに日本を軸とした友好関係は認めない、というものだ。
 そのためにアメリカは、さまざまなドラゴンの歯(Teeth of Dragon=不和の種)をアジアに埋め込んできた。北朝鮮はその意味では、アメリカが手を貸さずとも勝手に根付いた「ドラゴンの歯」だった。
 この国は何より日本、韓国と仲が悪い。放っておいても協調、連携などありえない。おまけにもっと重要なのは、北朝鮮の地政学的位置だ。中国のほとんど軒先にあるこの国が、中国寄りのならず者国家であり続ければ、中国に自由市場経済とか民主化の波や激がじかに届きにくくなる。
 クリントン政権下、コーエン国防長官の諮問機関 - 「21世紀安全保障委員会」が、九九年秋にまとめた二十一世紀のアジア展望でも、この日中韓の三国がつくる 「地政学的三角形」が「今は中国、韓国の日本に対する憎しみで機能してはいない」が、それでもアジアにとってもアメリカにとっても「最も重要な意味をもち、この三角形の将来が二十一世紀のアジアの命運を決める」と書いている。
 現状をいえば、まさに北朝鮮が存在するがゆえに、日中の接近もない、日韓も今一つしっくりといかない。アメリカにとって望ましい「バラバラ状態」が続いているのである。

(部分引用終り)

 この著書の出版は、小ブッシュ大統領の「悪の枢軸発言」(2002年1月)よりも前、つまりクリントン政権下のことなのだが、当時の状況を良く伝えている。違う点は盧武鉉大統領が現われて、韓国は北朝鮮に呑み込まれてしまった所だろうか。その後は、ミサイルを乱射、あるいは地下核実験らしきものをして見たり、<ドラゴンの歯>の活動は面目躍如としている。米国政権が共和党だろうと民主党だろうと半島への方針をころころと変えるのは、高山氏の指摘するようにアジアの協調体制が上手く発展しないようにする為なのかも知れない。

 アラブ世界では、イスラエルが将に<ドラゴンの歯>なのであろう。北東アジアの<ドラゴンの歯>北朝鮮は、従来のイランとの交流に加えて、更にアラビア半島の奥にも乗り出している。

 さて、イスラエルのシリア空爆事件により、北朝鮮とシリアの軍事協力は様々な分野に広がっていることが知られるようになった。こうした軍事技術の共同開発が秘密裏に我が国の隣国で行われていること、それに対し脳天気振りを発揮して繰り返し大量のコメ支援を行っていた親北日本政治屋達の存在、朝鮮総連を介して多額の資金が我が国から流れていることを許していた外交姿勢を改めて認識する必要がある。

 時事通信によると

2007/09/20-14:21
化学兵器・ミサイルの開発支援=北朝鮮、シリアと広範な協力-米専門家

 【ワシントン20日時事】米国防総省傘下の研究機関、海兵隊大学の北朝鮮専門家ブルース・ベクトル准教授は20日までに、北朝鮮が過去数年間、シリアの化学兵器や弾道ミサイルの開発計画を支援するなど、同国と広範な軍事協力を行っているとの見解を明らかにした。
 北朝鮮がシリアの核開発に協力している疑いが浮上しているが、米当局は北朝鮮とシリアの大量破壊兵器分野における協力の一環との見方を強めているという。
http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=int_date4&k=2007092000580


 更に時事通信は次のようにも伝える。
 
2007/09/21-17:42
シリア技術者、北朝鮮でミサイル研修=販売の代価は食糧や綿-韓国通信社

 【ソウル21日時事】韓国の聯合ニュースは21日、北朝鮮消息筋の話として、シリアのミサイル技術者が北朝鮮に長期滞在し、ミサイル製造技術などの研修を受けていると報じた。また北朝鮮はシリアにミサイルを物々交換方式で販売しており、食糧や綿花、コンピューターなどを代価として受け取っているという。
http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=int_date3&k=2007092100794


 伝聞情報である故、上記記事の全てを信じるわけには行かないが、外貨決済に悩む北朝鮮としては原始的な物々交換に動かざるを得ないだろう。

 ライスーヒル構想に乗って、北朝鮮融和策に転じた小ブッシュ大統領、さすがに気になると見えて、核拡散に関し次のようなコメントを出している。
 
2007/09/21-00:49
北朝鮮の核拡散に懸念=「兵器放棄と同様に重要」-米大統領

 【ワシントン20日時事】ブッシュ米大統領は20日、ホワイトハウスで記者会見し、北朝鮮がシリアの核開発に協力しているとの報道に対するコメントを拒否しながらも、「北朝鮮が核兵器計画を放棄し、核拡散を停止することを期待している」と述べ、北朝鮮による核拡散への懸念を表明した。
 ブッシュ大統領は「われわれは6カ国協議を通じて、北朝鮮に対し、核兵器・核計画の放棄に向けた合意を尊重するよう明確にしてきたし、今後もそうするだろう」と指摘。その上で、「北朝鮮が核の拡散を行わないよう期待している」と述べるとともに、「核拡散停止の問題は核兵器・核計画の放棄と同様に重要だ」と強調、北朝鮮による核拡散懸念を重視する姿勢を示した。
http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=int_date3&k=2007092100014


 時期を同じくして、9月20日にウィーンで開催されたIAEA総会でも、北朝鮮の核拡散防止条約(NPT)復帰を求める決議が採択されている。2003年1月10日に北朝鮮はNPTからの脱退を宣言、現在もそのままだ。

 来週からの六カ国協議は、核施設停止に伴う次の段階の経済支援、軽水炉建設再開をも含めた提案などが中心話題になると思われたが、中共は重油支援を中断しているし、シリア空爆に関連して核拡散防止が激しく議論されるだろう。ところで、静観を決め込んでいた露西亜は、こんな事を言っている。

2007/09/21-22:52
北の核無能力化に期限なし=11月に重油支援-ロシア外務次官

 【モスクワ21日時事】ロシアのロシュコフ外務次官は21日、北京で27日に再開される6カ国協議で主要議題となる核施設の無能力化には具体的な期限はないと述べた。タス通信が伝えた。
 同次官は、核施設の無能力化を含む「次の段階」の措置の年内履行が想定されているとしながらも、「無能力化は困難な作業だ。長引いたり、問題に直面したりする可能性があるため、具体的な期限はない」と語った。
 ロシュコフ次官はまた、「次の段階」の見返りとして、ロシアが11月に北朝鮮への重油の支援を供与する方針を明らかにした。同次官は6カ国協議のロシア首席代表を務める。
http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=int_date3&k=2007092101112


 原油価格もバーレル当り80ドルを超え、経済的に余裕の出来た露西亜は、米朝間に不協和音の生じることを楽しんでいるのかも知れぬ。欧米と東欧ミサイル配備で激しい舌戦を行っている露西亜にしてみれば、性急な米朝融和接近に対して何か関与しようと狙っているのだろうか。

(追記:9月24日)

 上記小ブッシュ大統領の核拡散停止発言は、次の記事と関係があるのかも知れぬ。

シリア北部で北朝鮮の核関連物質を押収 英紙報道
2007.9.24.03:11

 23日付の英日曜紙サンデー・タイムズは、イスラエル軍特殊部隊が、シリア北部の秘密軍事施設に対する空爆に先立ち、同施設を襲撃、北朝鮮からの核関連物質を押収して持ち帰ったと報じた。シリアは核兵器開発を目指し、北朝鮮、イランと連携している可能性があるとしている。

 また米空軍がイランを想定した「次の戦争」に備え、極秘の戦略作戦立案グループを設置したとも伝えた。

 米、イスラエル両国の消息筋によると、イスラエル軍の特殊部隊はシリアで数カ月間、情報を収集し、同国北部の秘密施設に核関連物質が保管されていることを突き止めた。施設襲撃の具体的日時などは不明。イスラエル軍の空爆は9月6日に実施された。

 同紙によると、イスラエルは米政府に対し、シリアが北朝鮮からの核関連物物質を持っている証拠を提示、空爆作戦について米政府の了承を得た。

 北朝鮮や中国の外交筋によると、イスラエルの攻撃で、核関連物質の運搬などにかかわった北朝鮮の人員ら数人が死亡。複数のシリア当局者が先週、対策を協議するため平壌入りしたという。(共同)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/86348/


 サンデー・タイムズの報道だから、割り引いて考える必要があるが、北朝鮮の核物質確保努力は海外を巻き込んで進められていると見て良いだろう。自国内では六カ国協議に従う振りをして原子炉を停止し、プルトニュウム生産は援助による高性能軽水炉が出来てから行う。一方、ウラン濃縮を秘密の内にシリアで行って、ウラン型原爆をシリアで作ろうとしているのだろう。
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