陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ムシャラフ大統領の辞任(追記有り)

2008-08-19 01:51:18 | 中東問題
 ブット氏の暗殺以来流動化を続けていたパキスタン政界は、8月18日ムシャラフ大統領が辞任して、一つの区切りがついた。しかし、後任大統領の選出で、再び混乱が起きる可能性がある。ムシャラフ氏は独裁体制を維持したが、米国との協力関係は良好であった。次期政権が対テロ戦略で米国と協調を維持するか否かが注目される。

 ムシャラフ氏は、昨年11月中旬に兼務していた陸軍参謀長を辞任したが、その後も影響力は大きかった。恐らく、サウジアラビアへ亡命するのであろうが、彼が不在となった軍部は上手く纏まるのであろうか。

 パキスタンは、核兵器を持つ。軍部が割れたりすると、タリバンやイスラム武装勢力へ核兵器が流出する可能性を否定出来ない。米国は、グルジアとは別な問題に対処しなければならなくなる。

パキスタンのムシャラフ大統領辞任 議会との対立回避「国益優先」
2008.8.18 22:55

 【バンコク=菅沢崇】パキスタンのムシャラフ大統領が18日、辞任した。同氏は自らの去就について国営テレビで演説し、弾劾をめぐる議会との対立を回避すると辞任の理由を説明した。1999年10月の軍事クーデターで政権を握った大統領の辞任は、同国やアフガニスタンでテロを活発化させるイスラム武装勢力の動向と、ムシャラフ政権を後押ししてきた米国の対テロ戦略に影響を与えそうだ。

 ムシャラフ氏は演説で「反大統領派が自分に対し行っている(憲法違反などの)申し立ては的外れなものだ」としながらも、「議会との対立が深まれば、国家が疲弊する。国益を優先する」と辞意を表明。この後、辞表を下院議長に提出し、受理された。ムシャラフ氏は大統領府での辞任式典を終え、同府を後にした。

 憲法の規定により、大統領代行にソームロ上院議長が就任した。

 大統領の退陣へ向けた動きは、8月7日にパキスタン人民党(PPP)のザルダリ共同総裁と、パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)を率いるシャリフ元首相が大統領の弾劾手続きを進めることで合意し、本格化した。大統領側は、辞任後に訴追しないことや、パキスタン国内にとどまることを認めるなどを条件に、反大統領派と交渉を続けた。

 しかし、シャリフ氏は大統領側の条件に強く反発し、シャリフ氏に近いサウジアラビアの王族関係者や米英両国が交渉を仲介していた。観測筋は「数日後にムシャラフ氏がサウジアラビアなど国外に亡命する可能性もある」とみている。

 人民党とシャリフ派は昨年11月の大統領による非常事態宣言の発令や、チョードリー最高裁前長官の解任などが弾劾に相当するとして、約30項目の大統領の過失と憲法違反を書状で列挙していた。

 ムシャラフ氏は98年10月に制服組のトップ、陸軍参謀長に就任し、翌年の10月、当時のシャリフ首相との確執からクーデターを決行し、2001年6月に大統領に就任した。
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/080818/asi0808181744004-n1.htm

(追記:8月20日)

 上記と同じ記者による次の産経新聞記事は、よく纏まっているように思うので、追記転載します。

テロとの戦い、核管理はどうなる ムシャラフ大統領辞任で
8月18日22時25分配信 産経新聞

 【バンコク=菅沢崇】パキスタンのムシャラフ大統領が約9年間にわたる政権の幕を自ら下ろした。米国を実質的な後ろ盾に「テロとの戦い」に臨んだ姿勢は、欧米諸国から高く評価された。しかし、今年2月の総選挙での惨敗以後、辞任の時期が焦点となっていた。ギラニ連立内閣が大統領弾劾への動きを強め、その圧力によって退陣に追い込まれたことを受け、対米路線を含む今後の国家の方向性は不透明さを増している。

 ムシャラフ氏の辞任は、2001年以後、米国主導で行われてきた「テロとの戦い」の路線に今後、パキスタンがいかに対応するかや、イスラム諸国で唯一の核保有国であるパキスタンの核管理が保証されるか、などの懸念を、国際社会に呼び起こしそうだ。

 今年2月の総選挙で勝利したパキスタン人民党(PPP)と、パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)などによる連立与党は、早々に武装勢力との対話路線を導入した。だが、北西辺境州やアフガニスタンとの国境付近の部族地域では依然、イスラム武装勢力タリバンが“統治”する村落もみられる。政府側は掃討作戦を展開してはいるが、めぼしい成果はあがっていない。

 7月にはアフガニスタンのインド大使館が自爆テロで攻撃され、約180人が死傷した。アフガニスタン側は、イスラム武装勢力の犯行であり、これにパキスタンの諜報(ちようほう)機関もかかわったとして、激しくパキスタン政府を非難した。アフガニスタンのカルザイ大統領も、パキスタンからの越境テロが後を絶たない、と繰り返し批判し、対策を講じるよう求めており、両国間の信頼醸成も急務となっている。

 パキスタンの政局に詳しい地元のジャーナリストは、ムシャラフ氏の辞任について「米国も今後は容易に主導権を握ることはできない。建国以来、パキスタンではムシャラフ氏を含む4人の軍政支配の時期を除き、対米関係は安定していない。とくに次の政権では、米側は、軍と議会の主要政党のリーダーと個別に交渉していかざるを得ず、困難を極めるだろう」との見方を示す。

 カシミール問題でも、ムシャラフ氏がここ数年、基本としていたインドとの融和路線を、軍に影響力がほとんどない連立与党が安易に継続した場合、混乱を招く可能性もある。

 人民党とシャリフ派は反ムシャラフ大統領を旗印に結束を試みたものの、一枚岩ではない。ムシャラフ氏の後任の人選をめぐっても合意が得られていない。両党はもともと、「犬猿の仲」であるだけに今後、各施策をめぐり対立する可能性も否定できない。

 小麦など食糧の高騰や慢性的なエネルギー供給不足についても、早急な対処が政府に求められており、ムシャラフ氏辞任後の同国には課題が山積している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080818-00000972-san-int
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