陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

シューベルトのピアノ五重奏曲 <鱒>を楽しむ

2009-01-05 16:36:04 | 読書・映画・音楽
 フランツ・シューベルト(1797-1828)が22歳の時の作品(1819)。彼が20歳の時作曲した歌曲<鱒>のメロディは、第4楽章に現れる。このピアノ五重奏曲は、第二ヴァイオリンの代わりにコントラバスを用いている。ベートーベンは、この曲の演奏を聴いて激賞したと言う。全演奏時間は1時間を越す。

 私が持っているCDは、トーマス・アディスがピアノを担当し、ペルチャ弦楽四重奏団が演奏をしているもの(東芝EMI、2005)。中々の名演奏と思う。この明るい雰囲気の曲を年初に2回ほど通して聴いた。


ピアノ五重奏曲イ長調 <鱒> op.114 

第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ イ長調 ソナタ形式 (12’14”)

第2楽章 アンダンテ ヘ長調 二部形式 (7’07”)

第3楽章 スケルツォ プレスト、イ長調 トリオはニ長調 (3’48”)

第4楽章 『鱒』による主題と変奏 ニ長調
 主題提示 アンダンティーノ (0’58”)
 ゆったりと弦楽器のみで主題を演奏する。

 第1変奏 (0’56”)
 ピアノが軽やかに入って、主題を華麗に演奏する。両手によるトレモロが入り、技術的には難しい。

 第2変奏(1’03”)
 チェロが中心になって、主題を演奏。ピアノは、それを伴奏する。

 第3変奏(0’52”)
 コントラバスが主題を力強く演奏する。チェロもこれに和する。
 ピアノは、32分4連音符による華麗な分散和音で、それに絡まるように美しく伴奏。

 第4変奏(1’05”)
 ピアノがffで力強く演奏開始。弦楽器がそれを追って様々なメロディーを次々に提示。

 第5変奏(1’51”)
 チェロが中心になって、ピアノと対話するように演奏。少しけだるい感じの曲想だろうか。

 次いで、主題の再演 アレグレット(1’14”)
 軽快に弦楽器が中心になって、主題の演奏を続ける。

 両手ユニゾンによるピアノパートが出て来る第1変奏は難曲として知られ、シューベルトがピアノの書法を理解していなかった例として『魔王』などと共に、引き合いに出されることがある(Wikipedia より)。何れにせよ、ピアニストは、大変な技巧を求められるわけだ。

Schubert: "Trout" Quintet D667 4/5 Amadeus Curzon (1977)


第5楽章 アレグロ・ジュスト イ長調、ソナタ形式 (9’52”)

全体の演奏時間 61’21”

 ところで、この曲の第4楽章を演奏している興味深い動画がある。


 ジャクリーヌ・デュ・プレ(チェリスト)の情熱的な演奏姿がとても印象的。彼女の人生で、最も溌剌として充実感を覚えていた時期なのだろうか?

 この時の演奏者達は、

ピアノ:ダニエル・バレンボイム(1942 -) ロシア系ユダヤ人
ヴァイオリン:イツァーク・パールマン(1945 -) ポーランド系ユダヤ人
ヴィオラ:ピンカス・ズーカーマン(1948 -) ポーランド系ユダヤ人
チェロ:ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945 - 1987) 仏系英国人
コントラバス:ズービン・メータ(1936 -) インド人

と有名な演奏家・指揮者ばかり。これは1969年夏の演奏会であるが、その少し前、天才チェリストと謳われたデュ・プレは、バレンボイムと結婚したばかりあった。現在指揮者として著名であるズービン・メータを除けば、皆20代前半で一流演奏家として知られた人達である。そして、彼らは実に仲の良い演奏仲間であった。

 彼らの呼吸の合った若々しい演奏は聴く人、見る人を大いに感動させ、楽しませる。

 この演奏が始まる直前、彼らは楽屋でこんな事をしていた。

Jacqueline du Pre - Forellenquintett


 バレンボイムは、メータと入れ替わり、デュ・プレはパールマンと替わってそれぞれの楽器を担当。彼らがふざけて弾いている曲目は、<鱒>の第1楽章イントロである。パールマンが戯れているデュ・プレのチェロは、名器「ダヴィドフ」。デュ・プレ亡き後、それはヨーヨー・マに譲られた。

 デュ・プレは、1973年に来日後、突然不治の病「多発性硬化症」に襲われ、28歳で惜しまれつつ引退、闘病の後1987年に42歳で逝去した。全盛時の彼女が、夫バレンボイムに合わせつつチェロ演奏を生き生きと楽しんでいるこの動画を見ると、何か切ない気持ちになる。

(参考)

 ジャクリーヌ・デュ・プレの生涯
 http://w1.nirai.ne.jp/dokichih/jackielife.html
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