陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

胡錦涛総書記の決断

2006-09-27 02:43:11 | シナ・中共関係
 かなり急な抗争展開が中共政権内で起きている。昨年末から、胡錦涛体制の強化が公金流用摘発等の名目で進められて来た。特に上海地域は、地価暴騰と通商・軍需品導入に絡む公金不正流用が目立っていた。今年8月から実質的な摘発を拡大していたが、胡錦涛はここで一気に江沢民一派=上海閥を切り捨て、政治的改変をする決断に踏み切った。これは、今後の対日外交に著しく影響するはずだ。

 私は9月1日のエントリーで、今月中に胡錦涛が上海閥に対する巨大資金流用の摘発を行い、ゆっくりと江沢民一派を政治的に始末すると予測した。事実は更に進んで、汚職問題から本格的な政争へ発展、権力者側が行う静かなクーデターに近い状態である。胡錦涛のパンチに江沢民も呆然としているのでは無いか。

--------------(引用開始)

共産党上海市トップ解任、公金流用に関与

2006/09/25(月) 16:33:03更新
 中国共産党上海市委員会書記を務めてきた陳良宇氏が公金の不正使用に関与したとして同職から解任されることが決定した。25日付で新華社などが伝えた。

 陳氏は上海市労働社会保障局の公金不正流用に関連して、特定の企業のために便宜を図ったとされる。中国共産党中央政治局は24日、会議を開き、同党中央紀律検査委員会が提出した「陳良宇同志の問題に関する報告書」を審議した。

 この結果、「中国共産党章程」及び「中国共産党紀律検査機関案件検査工作条例」に基づき、陳氏を中国共産党上海市委員会書記だけでなく同委員会の全ての職務から解任した。また中央政治局委員及び中央委員会に関しては停職処分となった。

 陳氏は1946年10月に浙江省・寧波(ニンポー)市で生まれた。68年8月に人民解放軍後勤工程学院建築構造学科を卒業。その後、中国共産党上海市委員会や上海市政府の要職を経て、2002年2月から上海市長を務めた。同年11月からは中国共産党上海市委員会書記も兼務。03年2月に上海市長職を韓正氏に譲った。

 25日付の中国新聞社によると、陳氏の解任決定を受けて、韓上海市長が中国共産党上海市委員会書記の代理を務めることが決まった。
(編集担当:菅原大輔) (サーチナ 2006.9.25)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0925&f=politics_0925_001.shtml
--------------(引用終り)

 来年の第17回共産党大会(5年に1度)で、胡錦涛は江沢民一派を排して第17期政治局委員の把握と軍掌握の明確化を図るはずだ。更に党内人事を思うように進めながら、後継者指名を行うのではないか。対象は、当然青同出身者(「青紅幇」)の若手が考えられる。

 日本のマスコミでは、この政治劇を不正流用摘発程度にしか捉えていないので、読者には実態が全く分らない。しかし、珍しく毎日新聞が踏み込んだ記述をしている。

--------------(引用開始)

中国:陳氏解任 「上海閥」排除、本格化
 胡主席、権力掌握まざまざ

 【北京・西岡省二、上海・大谷麻由美】中国共産党による上海市トップの陳良宇氏(59)解任劇は江沢民前国家主席の影響力の衰退と胡錦濤国家主席の権力掌握をまざまざと見せ付けた。江氏が完全引退してから丸2年。胡主席は来年開かれる第17回党大会での幹部人事に向け、江氏を中心とする「上海閥」の一掃へと本格的に動き出したとみられる。

 不正流用事件では市労働社会保障局の祝均一局長が02年、投資会社経営者に社会保険基金32億元(約470億円)を違法に融資したとされる。今年8月初旬に同局長が解任され、陳氏は同月15日、「上海は党中央の要求に基づき、反腐敗の手を休めることはできない」と表明したばかりだった。だが、同月下旬には元秘書、秦裕・前上海市宝山区長も取り調べを受け、陳氏の外堀は徐々に埋められていった。

 「上海閥」とされる黄菊副首相の夫人の事件への関与も取りざたされる中、胡政権は国民の支持を支えに反腐敗運動の重点都市として江氏のおひざ元である上海に狙いを定め、大量の人員を送り込んで事件の徹底的な捜査にあたらせた。

 新華社通信によると、党指導部は今回の処分について「反腐敗の取り組みを強化する断固たる決意を示した。誰であれ、どんなに職業的な地位が高くても党紀や法に触れれば処罰を受ける」と説明している。

 陳氏は02年2月に上海市長、同年10月に上海市党委書記に就任し、同11月から党中央政治局員。エンジニア出身の陳氏は江氏や腹心の黄副首相の流れをくむ「上海閥」の一員として順調な出世街道を歩んできた。しかし、03年3月に発足した胡政権が過熱気味の中国経済の引き締め策を導入すると、成長の失速を招きかねないとして反対する陳氏ら「上海閥」との意見対立が表面化した。

 胡政権発足当初は政策決定にあたる中枢部に「上海閥」の占める割合は高かった。しかし、江氏が04年9月に中央軍事委員会主席のポストを胡主席に渡して完全引退して以降、「上海閥」の退潮は顕著だった。

 胡主席は5年に1回巡ってくる来年の幹部人事に向け党、政府、軍の権力基盤固めを進めていた。
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 ■ことば
 ◇上海閥
 中国共産党や中国政府の指導部内で、上海出身や上海での勤務経験をきずなに結び付いたグループ。江沢民・前国家主席を中心に形成、現指導部には曽慶紅・国家副主席、呉邦国・全国人民代表大会常務委員長(国会議長)、黄菊・副首相らがいる。曽氏は胡錦濤指導部発足後、胡氏との関係を重視、上海閥色を薄めているといわれる。陳良宇氏は上海市党委書記に就任直後の02年11月に党政治局員に昇格、上海閥の継承者とみられていた。【北京・共同】
毎日新聞 2006年9月26日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20060926ddm007030114000c.html
--------------(引用終り)

 政治局常務委員は極めて大きな権限を有するが、陳了宇はヒラの政治局員であって常務委員では無い。それゆえ、遠慮なく手を付け易い。彼が失脚した後、次に黄菊政治局常務委員(68才、国務院副総理;序列第6位)に追求が行われて、降格があり得る。黄菊夫人と家族は身柄を拘束されて調査が始まっている。上海閥に関連する逮捕者は、吉林省の長春市に移され、恩情なく厳格に裁かれる。

 こうなると、江沢民一派(上海閥)としては、呉邦国常務委員(65才、全人代委員長=国会議長相当;序列第2位)と曽慶紅常務委員(67才、国家副主席;序列第5位)が現第16期中央政治局常務委員会に残るわけだ。しかし、彼らは江沢民との間に距離を置くと私は予想する。クーデターに際し、我が身が可愛いのは、何処の国の政治家も同じ。

 来年秋から始まる第17期中央政治局には、胡錦涛の子分が新たに加わり、彼としては万全の独裁体制を着実に形成する。軍の粛正も並行して進め、新たに中将クラス28名を昇進させて65才停年を厳守させ、世代交代を図ると言う。こうした中で、中共の対日政策がどのように変わるか、良く々々睨んでおく必要がある。胡錦涛は、決して日本に甘い見方をしないし、逆に行き過ぎた江沢民流の侮日政策を取るとは思えない。北京オリンピックを控えている事でもあるし。

 さて、陳了宇の場合、あからさまに公金流用・政治腐敗を指弾されたら、流用金額も大きいので死刑になる可能性がある。政治腐敗や公害で不満の燻る中共人民にとっては、都合の良い見せしめになり、民衆は溜飲の下がる事であろう。シナ人は怨恨が積もると、相手の肉まで喰らうと言うから。26日付の香港の新聞によると、上海市の汚職事件をめぐり、調査対象となっている市職員の逃亡を防ぐため、上海の空港や港に警察部隊が動員されたとのこと。特に上級職員はパスポートも取り上げられているらしい。

 中共では、死刑は銃殺が主体で、脳に銃弾を打ち込み、身体に傷を付けないようにする。その後、死体から臓器を摘出して外国人へ売却、外貨を充分に稼ぐ。未成年でも平気で死刑にするので、一度大江健三郎はそうした場面をたっぷりと見学させてもらったら良いだろう。

【追記】
 宮崎正弘氏の情報によれば、胡錦涛の次のターゲットは上海閥の重鎮・賈慶林常務委員(66才、序列第4位)だと言う。賈慶林は、8年前の<アモイ密輸事件>の黒幕で、叩けば相当な埃が出るらしい。<アモイ密輸事件>の主犯・頼昌星をカナダから強制送還させ、裁判で旧江沢民派の密輸との関連を暴くとしている。更に、宮崎氏は黄菊常務委員は末期癌で、近く引退すると述べ、黄夫人の余慧文が不動産業者と組んで、多額の賄賂を得ていることも指摘している。
 中共の政界は、金にまみれ過ぎている。日本の産業界にも、この汚職スキャンダルは及ぶのだろうか。
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5 コメント

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外国企業の排斥?? (SAKAKI)
2006-09-27 12:38:38
メディア統制はこのためだったようですね。献金している企業は多いでしょうから、外国企業の排斥手段に使うかもしれないですね。
返信する
胡錦涛って何者? (西郷 隆盛)
2006-09-27 18:30:05
初めまして、西郷 隆盛といいます。



昨今日本のメディアは中共の事には蓋をして日本国民には一切知らせまいとしているようですが、これには、やはり610が絡んでいると僕は推測しています。



中共の真の姿を一切知らせない日本のメディアには、呆れてモノが言えません。そこで「亜細亜を学ぶ」を立ち上げ、中共の陰部を曝け出してやろうと日々情報収集に励んでいます。



ある程度資料が集まったので、中国編 台湾編 韓国編などに分けて動画と記事・それに僕の論評を掲載しています。特に「九評」の動画は全編あります。



僕も九評を観て中共の実態を知りました。他にも色んな動画が置いてありますので、一度お越しください。そして中国の人民・チベットの人民に中共が何をしているのか観て下さい。※記事を読み続けるには忍耐もいるし、疲れますので、動画主体になっています。



もし、すでにご存知のネタでしたら一笑に付してください。

http://www21.tok2.com/home/saigoutakamori/

始めてきて言いたい放題ですいません。西郷 隆盛でした。
返信する
崩壊寸前ですね。 (T.O)
2006-09-28 22:43:31
初めまして。

中国はもう政府全体が腐りはじめているんじゃないでしょうか?

まともじゃない政府と仲良くしろといわれても無理ですから。

国民もそこまでバカじゃないでしょうから、そろそろ自分の国の政府もおかしい気付き始めるでしょうね。
返信する
すみません (T.O)
2006-09-28 22:44:56
○おかしいと気付き始める
返信する
コメントへの御礼 (茶絽主)
2006-09-29 02:25:52
 榊様:

 何時も拙ブログを御覧戴き、御礼を申します。確かに、メディア規制は関係があるのかも知れません。ただ、胡錦涛 vs 江沢民の抗争で規制が行われているとは思わないのです。規制は、法倫功信者の臓器摘出及び凄まじい公害情報の流出を恐れているためで無いでしょうか。

 日本を含めた外国企業へのプレッシャーは益々大きくなると予想します。ところで、安倍政権になっても株式市場は醒めた見方をしているようですね。



 西郷隆盛様:

 興味深いコメントを有難うございます。貴ブログを拝見し、沢山の情報をお持ちであるとの印象を持ちました。チベット問題は、何とも気の毒でなりません。ウィグル問題然り。ですが、只今は何とも出来ませんね。今後とも、御教示下さい。



 T.O様:

 コメントを有難うございます。私も中共は腐り始めているとのご意見に同意です。支那は、国土・人口共に大きいのに、国家運営がすごく振れますね。民衆は<阿Q>のままで5000年の間変わらず、帝国であろうが共産体制であろうが人治に変わり無し。

 過去の様々な支那帝国時代には、独自文化と文芸があったと感じるのですが、昨今は金の亡者の増殖と熾烈な権力争いだけ。古代支那の哲学は何処へ行ってしまったのでしょうか。

 現代支那の知識人の中には、優れた人が育ちつつあるように思います。また、ご意見をお聞かせ下さい。
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