陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

台湾新幹線に乗る

2008-01-21 01:03:36 | 旅行
 今月5日で開通一周年を迎えた台湾新幹線、大きな事故も無く、運行しているのは目出度いことである。前からこの電車には乗ってみたいと思っていたから、気まぐれも手伝って台湾へ出かけた。

 1月12日(土)午前11時頃に<台北老爺大酒店(ロイヤル・ホテル台北)>を出て、<中山>駅からMRT(地下鉄)に乗り、<台北車站>(台北駅)下車、台湾高速鉄道(高鐵)の案内表示に従って、地下1階の切符売り場に来た。自動券売機の周囲には沢山の人が集まっていたので、当日切符売り場の方へ行った。

 若い女性の担当者へ、英語で「台南まで、なるべく速い電車。指定座席で普通1枚。クレジット・カードでね」と言うと、彼女はにっこりしてさっと手続きをし、窓口にあるディスプレイを示してこれで良いかと言う。OKと言い、クレジット・カードを出すと処理して発券してくれた。1350元(=4725円)。暫らく後で気が付いたが、シニア待遇(65歳以上で半額)にする手があった。女性駅員は、声の調子で私を若く見て、そのアドバイスをしなかったのだろう(笑)。全車禁煙である。

 自動改札口で乗車券を入れる。切符は橙色の表面に、行き先や列車番号、発車と到着時間、車両番号と座席番号が記されている。裏面に磁気ストライプがあり、こちらを上にして改札機に入れなければならぬ。間違いやすい。

 私の乗ったのは、午後12時18分発211号で、あちこちの駅に止まる。この日は土曜日の休日で、自由席を利用し短距離旅行を楽しむ家族連れが多かった。皆さん、投票をやったのかなと気になった。電車掃除が完了するまで月台(ホーム)には入れないから、長い行列が出来ていた。慣れない場所では指定席を取っておいた方が良い。

 にこやかに迎えてくれる女性車掌さんに挨拶し、700T型の3号車18E座席(窓側)に座った。5座席配列で、日本の新幹線と全く同じ座席配置。ただ、座席の繊維材料は、何だか粗雑で日本の場合と少々異なる。車内の雰囲気、天井の造り、網棚配置、案内板表示などは東海道新幹線と何ら変わらないが、車内に大型トランクを置く場所があったり、ドアはボタンを押して開けるようになっている。この指定席車両には、20人ほど乗客が座っていた。私の隣は空席。

 検札は無いままに定刻通りに発車、暫らく地下を走って<板橋駅>に停まる。ここが開通時の始発駅であった。それから<桃園駅>と<新竹駅>をスキップして丘陵地帯を走り抜け、<台中駅>に停車。午後1時10分で時刻表通りである。この駅では、かなりの乗降客が見られた。台中駅を出ると、電車は見晴らしの良い平原地帯を走り、午後1時34分に<嘉義駅>へ到着。ここでは殆ど乗降客がいない。

 更に広大な嘉南平野を走ること20分、午後1時54分には<高鐵台南駅>に到着。乗客の大半がここで下車した。駅舎は近代的な造りで、さながら空港の雰囲気である。乗客の流れに乗って外に出た。<台鐵台南駅>の傍にあるホテルに行きたいので連絡バスを探す。台南行きの表示の所にマイクロバスがいたので、ごつい雰囲気の小父さんの指示に従い、それに乗った。直ぐ料金40元を払う。沢山の人が乗車して来たので、案内の小父さんが気を遣ってこちらに乗れと言い、より綺麗な大きいバスに変えてくれた。

 やがてバスは発車、高速道路や大きな道を走りながら台南の中心街へ入って行く。この間凡そ30分、ロータリーのある台鐵台南駅前に無事到着した。どうやら、高鐵の駅と台鐵の駅は何処もこのように離れているらしく、バスで20-30分を要するらしい。タクシーを利用すると200元―300元とのことだ。これでは、高鐵利用者が増えないように感じる。台南駅周辺など、土地はたっぷりあるのだから、台鐵駅に接して新幹線駅を造れば極めて便利になること疑いはない。恐らく、台鐵の運営方針、地権者のしがらみなどでこんな形になっているのだろう。

 台南市に二泊し、1月14日の午後1時18分に台南駅を出発する台鐵<自強号>(特急列車)で高雄に向かった。この時の料金は102元=357円(指定席)。30分間の旅である。ちなみに新幹線だと15分。距離にして45km程度。一般に、台湾は公共交通料金が大変安いと思う。<自強号>は電車型ではなく、前後に機関車が付くタイプの列車型でないか。中々居心地の良い列車だ。

 9分遅れで台南を出発し、工場群や畑中を走り抜け、左榮駅では新幹線駅を眺めて大きく左にカーブしながら午後2時に台鐵高雄駅へ着いた。ここはかなり大きい駅だ。

 高雄市では<高雄國賓大飯店(アンバサダー・ホテル高雄)>に泊まり、翌日タクシーで高鐵<左榮駅>へ行った。ホテルから20分位で料金240元。高雄捷運(MRT)は、試運転が済み台鐵高雄駅と高鐵左榮駅をつなぐ予定だが、今年3月位から通常運航開始になるとの事、これが完成すると高雄国際空港へも連絡するので、大分便利になるらしい。

 左榮駅の当日券販売窓口で、「台北まで。ビジネス1枚」と言ったら、若い男性駅員が65歳以上か?と聞く。些か疲れていたから、かなりの老人に見えたのだろう。そしてパスポートを見せろと言うので出したら、シニア割引にしますとの事。ビジネス席(=グリーン車)で半額の1220元=4270円。これは、台北―台南までの普通席券より安い。
 
 午後12時00分発の414号、6号車6Aに座る。この座席は東海道新幹線のグリーン車と変わらないモケット張り。コンピューター用AC電源、音楽用イヤホーンジャック、読書灯、フット・レストなどが付いている。女性車掌が検札に来て、日本語で挨拶した。客は数名しか乗っていない(定員66名)。全長345kmの旅の始まりだ。発車して間もなく、あひるが遊ぶ幾つかの池を眺めていた。座席を倒してゆっくりとした気分になると何時の間にか眠り込んでしまった。

 台中駅近くで目が覚めて、車内販売の女性に声を掛けられ、コーヒーを頼んだ。金を払おうとしたらサービスだと言う。親切に「つまみ」も置いて行った。車内トイレは進行方向と直角に座るので少々狭く、東海道新幹線より造りが雑かと思う。男子専用トイレもある。但し、私は700系電車には一回しか乗っていないから、詳しい比較は控えたい。

 時速300kmの中でまた一眠りしたら、午後2時丁度に台北駅へ到着した。乗り心地も良く、時間に精確で日本の新幹線技術がきちんと移管されているように感じた。ただ、運転システムはフランスTGV系を導入しているので、1年目はフランス人が運転していたらしい。整備・維持技術を含めて、いずれ更新の時期には、日本の新幹線技術が完全に移植されるだろう。

 レールも長尺レールを用いているのか、繋ぎ目騒音や揺れは気にならなかった。東北新幹線のように、レールとコンクリート枕木の間にポリウレタン樹脂を入れて乗り心地を良くしているのかどうかまでは分からない。当然ICE(独)で用いた弾性車輪ではなく、一体圧延車輪を用いていると想像する。

 既に台湾新幹線を1500万人が利用したと言う。現在は1日56往復+2便。当初計画は1日88往復であったが、乗務員の訓練などのため未達である。台湾国民は、この高速鉄道が日本の技術供与で出来たことをよく知っている。だから「新幹線」との言い方を誇らしげに語る。更に台北から基隆まで延長されると便利になると思うが如何だろうか。

(参考)

 台湾新幹線でGO!GO!

 台湾高速鉄道(新幹線)発進

 台湾高速鉄道(台湾新幹線)が全面開通
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3 コメント

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Unknown (tsubamerailstar)
2008-01-22 22:34:46
こんばんは!台北老爺とか高雄国賓だったらホテルライフもそれなりに楽しまれたのではと拝察いたします。
台湾の飛行機や鉄道の運賃体系は、年長者と軍人の優遇がありますが、ここら辺は日本も学ぶべきではないかなぁと思います。敬うべき対象を優遇すると申しますか、私くらいの世代がこういう意識を持つべきなんでしょうけどね。
日本の新幹線ではラゲッジスペースがないので大きなスーツケース抱えた外国人旅行客は困惑するようです。この辺も商務客一辺倒な日本の(東海道・山陽)新幹線も考慮して欲しいですね。どうせ人口は減る訳ですから。(笑)
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敬老精神の残る台北 (茶絽主)
2008-01-24 00:46:58
tsubamerailstar 様

確かにホテルではのんびり出来ました。ホテルマンは、どこも親切です。また、中山北路も歩き回りました。
台北MRTでは、若い人に譲ってもらって青い色の座席に何回も座りました。公共的な施設の入場料は65歳以上だと半額になるのではないでしょうか(全てでは無いにしても)。日本も、こうした点は、真似してほしいですね。
山形新幹線や上越新幹線には、スキーを置くスペースがあり、そこへ大型トランクを置けるのですが、お説の通り、車内に荷物置き場が併設されると便利かと思います。
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はじめまして! (ユートラベルノート)
2010-03-15 15:03:37
はじめまして。
ユートラベルノートの増谷と申します。
ブログ楽しく拝見させていただきました。

実は、この記事を見て、わたしたちのサイト「ユートラベルノート」にもぜひ、このような生の海外情報が欲しいと思い、ご連絡させていただきました。

「ユートラベルノート」は国内・海外に関するブログや情報を集めたサイトです。
今までユートラベルノートでは「韓国」について皆さんの情報をもとに記事を作ってまいりました。
今後、ワールドトラベルノートとして、台湾の記事もどんどん作っていく予定です。
ぜひ一度、気軽に遊びにきてください。
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