陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ギリシャ支援受け入れに関する国民投票案

2011-11-04 02:59:22 | 欧州関係
 EU首脳による包括的支援策を受けるに際し、ギリシャは更なる緊縮財政を国民に求めることになる。だが、ギリシャ国民は、これ以上の増税、賃金カット、年金是正に反対し、政府の受け入れ方針を強く批判して首都アテネでは大デモが起きている。

 パパンドレウ希首相は、10/31に支援策を受け入れるか否かの国民投票を行う決意を表明した。だが、この思い切った方針は、ベニゼロス財務相による反対意見があり、11/4の内閣信任投票でも支持が得られない可能性がある。そうなれば、パパンドレウ首相は議会を解散せざるを得なくなる。

 年内に80億ユーロを調達しなければ、ギリシャはデフォルトに陥る。その覚悟があって、ギリシャ国民は支援策に反対しているのかどうか?内政干渉に匹敵する支援策に抵抗するギリシャ国民の気持は分かるが、受け入れなければ、デフォルト→ユーロ圏離脱→ドラクマ通貨再導入→大インフレの過程が待っている。ギリシャ国民は、それを熟慮する必要があろう。

 ギリシャがユーロ圏を離脱すれば、イタリア、スペインの債務返済が不能になり、独仏は勿論、米国の金融民間セクターへ広範に波及し、大恐慌が起きる。

 この段階では、パパンドレウ首相が国民投票実施案を撤回し、国民へ支援策受け入れを根気良く説得するほか方法は無いだろう。その上で、来年早々に議会を解散して、国民の意思を問うのが妥当と思われる。

ギリシャが世界経済を人質に G20も機能不全
2011.11.3 23:37

 【カンヌ(フランス南部)=木村正人】ギリシャが世界を翻弄している。国民投票で同国への支援策の是非だけでなく、ユーロに残留するか、離脱するかの選択を問う決意を示していたパパンドレウ首相の辞任が浮上し、投票が見送られる可能性も出てきた。不測の国民投票で離脱が現実となれば、ギリシャ発の世界金融恐慌に発展する恐れがある。3日開幕したG20も、ギリシャの動向を見守るしかなく、機能不全状態に陥っている。

 ■危険な賭け

 「ルールを守れないならユーロ圏を去らなければならない」

 サルコジ仏大統領は、パパンドレウ首相との会談後の会見で、語気を強めた。並んで会見したメルケル独首相も、「ギリシャとともに単一通貨ユーロの安定を成し遂げたいのはやまやまだが、ユーロの安定こそが何よりの優先課題だ」と、苦渋の表情をみせた。

 独仏首相はギリシャを説得できず、ギリシャのユーロ離脱という最悪のシナリオを想定せざるを得ない状況に追い込まれた。

 だが、会談後に「国民は賢明な選択をすると信じている」と語り、投票の結果に自信を示していたパパンドレウ首相は3日になると、辞任が避けられない状況となった。与党や閣僚から国民投票への批判が一段と高まり、4日に行われる内閣信任案の採決で与党議員が2人以上が造反し、否決される可能性が高まっているためだ。

 ギリシャの世論は、59%が支援策に反対する一方で、73%がユーロ残留を望んでいるが、国民投票にかけることは、あまりにも「危険な賭け」だ。

 英大衆紙は、ギリシャを「EUの頭部に銃を突きつける腐敗国家」と断じた。

 ■ドラクマ復活

 ギリシャがユーロを離脱すれば何が起きるのか。ギリシャは12月中旬までに60億~80億ユーロの国債償還を控えるが、凍結された80億ユーロのつなぎ融資は実行されず、「無秩序なデフォルト(債務不履行)」が避けられなくなる。

 ギリシャは旧通貨のドラクマに戻るが、信用失墜で暴落は必至。現在、ユーロ建てのギリシャの借金は、ドラクマ建てになれば何倍にも膨れあがる。輸入物価も上昇しインフレが国民生活を圧迫。信用不安による取り付けで、政府は預金の引き出し制限を迫られ、企業は連鎖倒産に追い込まれる。スイス大手金融UBSは、離脱によって、初年度だけでギリシャの国内総生産(GDP)の4~5割が失われると試算する。

 影響はギリシャ国内にとどまらない。「ギリシャの次の離脱国」として標的にされたイタリアやスペインの国債が一斉に売られる。国債暴落が銀行の経営を直撃し、巨額の焦げ付きで連鎖破綻に追い込まれ、「世界金融恐慌」に発展しかねない。

 ■G20機能不全

 ギリシャが国民投票を撤回したとしても、支援策受け入れで国内をまとめることができるかは不透明だ。首相の辞任すれば、政治混乱で、包括対策の実施が大きく遅れるのは避けられない。

 開幕したG20会議では、EUが包括対策を報告し、各国から協力を取り付ける計画だった。だが、ギリシャの突然の国民投票計画によって、包括対策は実効性を伴わないものとなり、EUは国際社会との「約束」を破ることになった。G20としても、有効な政策協調を打ち出すのは困難な状況で、危機を前に手をこまねくしかないのが実情だ。

 混迷を深める世界経済は、国としてはG20に加盟していないギリシャにその命運を握られている。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111103/fnc11110321080007-n1.htm
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