陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

<日米安保条約>の再読

2010-03-27 23:53:38 | 国防関連
 我が国国内に設置されている米軍基地・施設数は133箇所(沖縄34施設)、施設内は米国領土と同じ扱いだから、日本の法律は適用されない。これは、治外法権区域であって、各国の大使館や領事館の敷地内も同様である。

在日米軍施設・区域 施設別一覧
http://www.mod.go.jp/j/defense/chouwa/US/sennyousisetuitirann.html

 独立国でありながら、このように多数の外国軍隊基地の設置を許している国家は、日本以外には無い。吉田茂元首相に言わせれば、「番犬を飼っている様なものだ」と嘯(うそぶ)くかも知れないが、日本が再独立して58年が過ぎて世界情勢も変わる中、米軍基地問題は益々先鋭化して来た。

 これらの米軍基地設置の根拠は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、通称<日米安保条約>(1960年批准)の第6条にある。僅か、10か条からなる安保条約であるが、日本国憲法第9条の「戦争放棄」を補完する内容を持つ。憲法9条の条文で、我が国は軍隊を持つことは出来ないが、安保第3条では日・米双方の憲法に従って武力攻撃に抵抗することを規定している。

 この条約の前身は、「サンフランシスコ講和条約」調印と同じ日に締結された「旧・安保条約」(1952)である。それでは、米軍基地は日本の何処でも設置出来ることになっていた。これを大幅改訂した内容が上記の<日米安保条約>で、同時に発効した「日米地位協定」において具体的な基地設置条件などが記されている。

日米地位協定
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf

 本年6月には、<60年・安保条約>が批准されてから、50年を迎える。この節目の年に、我が国の安全保障体制を振り返る意味は極めて大きい。

 昭和35年(1960年)5月、この条約を批准するため衆議院で行われた強行採決を巡って、国会議事堂を取り囲む大デモが行われた。「アンポ、ハンタイ」の怒号とシュプレヒコールが永田町の空に響き渡った。その時の学生主導者の一人、西部邁氏は、安保条約を読んだことも無く、改定内容を知らなかったと述懐している。当時デモの参加者で、その内容を把握していた人はどれ位いたのであろうか。

 私は、普天間基地移転の問題もあるから、<日米安保条約>を再読してみようと思い、ついでにこのブログへ全条文コピーを載せた。


「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」

昭和三十五年六月二十三日、条約第六号
1960(昭35)・1・19 ワシントンで署名、
1960・6・23 批准書交換、発効(昭35外告49)
________________________________________

日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、
 また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、
 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、
 両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、
 両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、
 相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって、次のとおり協定する。

第一条: (国連憲章との関係)
 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に逐行されるように国際連合を強化することに努力する。

第二条: (経済的協力)
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。

第三条:(自助及び相互援助)
 締約国は、個別的及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。

第四条: (協議)
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。

第五条:(共同防衛措置と安保理報告)
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 前記の武力攻撃及びその結果として執ったすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従って直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない。

第六条:(米軍への基地許与と極東条項
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリ力合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。

第七条:(国連加盟国たる地位との関係)
 この条約は、国際連含憲章に基づく締結国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。

第八条:(批准と発効)
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日(昭和三五年六月二三日)に効力を生ずる。

第九条:(旧・安保条約の失効)
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。

第十条:(効力終了と通告)
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。

 もっとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する
________________________________________

交換公文

以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
1960年1月19日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。
〔両国全権委員氏名省略〕
 
条約第6条の実施に関する交換公文〔昭35・1・19岸・ハーター交換公文〕

(日本側往簡)

書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及し、次のことが同条約第6条の実施に関する日本国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。
合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。本大臣は、閣下が、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

(合衆国側返簡)

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
〔日本側書簡省略〕
本長官は、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

以上は、
http://www5b.biglobe.ne.jp/~USPinfom/anpo1.htm

より、全文引用。署名者は

日本側:内閣総理大臣 岸 信介
米国側:国務省長官 クリスチャン・A・ハーター

カッコ内の条文タイトルは、
山本皓一・松本利秋「軍事同盟・日米安保条約」(クレスト社、1996)を参考にした。

 米軍嘉手納基地は、米国本土を除くと世界で最高の機能を持った空軍基地である。また、米軍横須賀基地は、修理能力、弾薬・備品貯蔵などで、やはり世界最高の能力を備えた海軍基地とされる。ベトナム戦争当時は、この巨大基地から米軍兵力が派遣され、戦闘に参加した。「極東条項」を援用したのである。

 湾岸戦争後の海自掃海艇派遣、イラク戦争における陸自派遣部隊の活躍、インド洋での海自・補給支援活動、ソマリア沖への海自部隊派遣は、「極東条項」に抵触するように思えるが、それは別のエントリーで考えてみたい。
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