陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

台湾の軍艦汚職-ラファイエット事件

2006-05-22 01:52:06 | 台湾関係
 台湾の国防に関する重大な疑惑が表に出つつある。

 1979年1月1日に、中共へ接近する米国は中華民国(台湾)へ国交断絶を通告。同年4月10日に米国議会では「台湾関係法」が成立した。その9年後に蒋経国総統が急死し、副総統であった李登輝氏が台湾総統に就任した(1988年1月)。

 外交が途絶えて米国より武器導入が出来なくなった台湾海軍部は、光華2号計画(高性能フリゲート艦導入)を進めていた。当初の計画では、韓国製フリゲート艦(蔚山級2000トン;現代社製)を20隻導入する内容だった。

 1988年頃、台湾海軍部はドイツのフリゲート艦にも興味を示したが、売り込みが熱心であったトムソン社グループ(仏)の提案に注目していた。トムソン側は、2000トンクラスよりも3000トンクラスのフリゲート艦が台湾には適している事を力説する。台湾海軍部は詳しく検討した後、翌年10月、韓国艦導入中止と決定し、仏のラファイエット艦(3200トン)を6隻導入する事となった。だが、この変更は就任直後の李登輝総統に知らされず、総統は韓国艦の導入案が継続しているものと思っていた。

 もともとフランスは、中共と仲が良い。それで台湾への輸出に反対する仏政府関係者もいたが、どうした訳かミッテラン大統領の後押しがあって、1990年1月3日に台湾へ輸出すると決定した。フランス側のコードネームでは、これを<ブラボー>計画と呼んだ。金のためには「フランスの栄光」など何処へやら、中仏友好等吹っ飛ぶのは何時もの事だ。

 ところが翌日、天安門事件後処理に苦しむ中共から強い対仏圧力があったために、鉄仮面ミッテランは輸出許可中止とした。それにも拘らず、トムソン社はリベート確保を伝えながら、台湾海軍側と建造仮契約を結ぶ。<ブラボー計画>の裏側推進だ。

 一方で、トムソン社は臆面も無く中共へ幹部3人を派遣、ラファイエット艦の技術資料(書類重量96kg)を渡す。こうしてラファイエット艦の軍事機密は中共へすっかり筒抜けになった。また、この際中共要人へもトムソン側からリベート約束がなされたと言う。

 1年半後の1991年8月、何も知らない李登輝総統は、台湾軍事委員会で「韓国から蔚山型フリゲート艦を導入する事は、友好関係を維持する上でも重要」と発言し、台湾海軍部をあわてさせる。そこで、海軍総司令は経過説明書を提出、李登輝総統は一応それを了承した。8月下旬、トムソン社と台湾海軍部は正式契約をした。結果的には、1992年8月24日、韓国による国交断絶通知により、この韓国艦導入計画は完全に消滅したのである。

 台湾海軍部は、フランス側と交渉を重ね、ラファイエットの艦体のみを購入する事にしていた。名目上、フランスは海底探測船として台湾へ輸出し、武装設備一切は中共へ渡す事に変えたのであった。これを取り仕切ったのが台湾海軍部のカク白村部長である。将に完全な売国行為である。台湾としては、総額980億元の買い物で、当初計画の2倍の価格であった。しかも、それは戦闘装備の無い空船だ。その後、650億元を追加して艦上装備を購入することになった。

 デュマ仏外相によると、リベートはフランス側が5億米ドル(44人で分配)、台湾側が3億2000万米ドルと言われ、台湾分の中から中共へ一部が渡った。

 では、台湾が購入し、結果的に中共へ渡ったフランス製の艦上装備はどうなったか。それは、トムソン社から中共に渡された96Kgに及ぶ設計資料を用いて中共が艦体建造したハルピン艦に積み込まれた。中共は艦上武装一式をフランスから購入したとしているが、実際はただで入手し、更にリベートまで貰った。台湾にしてみれば、泥棒に追い銭と言う訳だ。

 更に、台湾の空軍戦闘機導入「飛龍計画」では、1667億元でミラージュ2000-5(仏ダッソー社)を60機導入した。この時にも、リベート疑惑があった。これは、コード・ネームで<タンゴ>計画と呼ばれる。

 詳しい状況は、数年前からこの亊案に注目しているアンディ・チャン氏(台湾人)の連載論説であからさまに述べられている。昨年12月から始まったこの連載は、現在までに11回目を数え、国家間の汚辱にまみれた浅ましい姿を記述している。その第一回は、阿貴さんの「台湾関係コラム」に転載されているから、アクセス容易だ。
http://rinnkennryou.blog24.fc2.com/blog-entry-622.html

 光華2号計画に係わっていた台湾の尹清楓大佐が、1993年12月に殺された。この殺人事件では、艦上装備に絡んでドイツ企業の女性エージェント、そして尹清楓の同僚達にも疑惑の目が向けられた。つまり、ラファイエット事件が発覚したのである。そうした重要な内容を、当時の李登輝総統がどの位把握していたのか、実に興味がある。

 余談だが、事件が発覚する同じ年、1993年1月2日に司馬遼太郎氏が台湾を訪問し、李登輝総統とも懇談している。民間人の司馬氏は、平和に溢れた台湾の風景を楽しむ事は出来たが、台湾軍部が進めていた艦船導入の動き等全く分らなかったのは当然だろう。

 その後、1996年に台湾総統の民主制に基く直接選挙が行われ、李登輝氏(国民党)が総統に選ばれた。だが、国民党は2000年3月の総統選挙に負けて、民進党の陳水偏政権となり、ラファイエット事件関係の暗黒部分が徐々に掘り起こされて行く。関係者の不審死が連続し、カク白村も裁判に登場している。2004年には陳水偏総統の再選もあって、調査は着実に進んだようだ。この台湾・フランス・中共を絡めた巨大な国際汚職事件はどのように表沙汰になり、新たな展開になるのか、全く予断を許さない。

 ラファイエット事件については、昨年12月1日、「大紀元」も詳細に報道している。
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/12/html/d66850.html

 最近、パリでは「クリア・ストリームスキャンダル」が発覚、ラファイエット事件と直接に絡んで、シラク政権を揺がしている。
http://rinnkennryou.blog24.fc2.com/blog-entry-990.html

 実際に台湾へ配備された康定級フリゲート艦の姿は

http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/%b9%af%c4%ea%b5%e9%a5%d5%a5%ea%a5%b2%a1%bc%a5%c8%a1%ca%a5%e9%a5%d5%a5%a1%a5%a4%a5%a8%a5%c3%a5%c8%b5%e9%a1%cb

 フランスは、台湾の選択肢が限られると言う弱味に付込み、こうした悪どい事を官民でやったのである。シナの賄賂体質は何時もの事で驚かないが、台湾海軍調達部門の売国ぶりには呆れてしまう。防衛庁調達本部の不祥事等、ラファイエット事件に比べればスケールの点で大人と子供の違いがある。

 軍艦や戦闘機は高額な買い物であり、密秘が伴うのでよからぬ輩がたかるのである。我国でも、古くはシーメンス事件、戦後はロッキード・グラマン事件が有名であるが、台湾の国防は我国とも連動する故、無関心でいられない。そして、中共、フランスは平気でこうした商いをする国柄であることをしっかりと覚えておきたい。

 台湾海軍には、支那人(外省人)が何割いるのか、また、その愛国心の程度がどうなのか、些か気になる。

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1 コメント

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政治は恐ろしいですよね (台湾人)
2010-06-10 21:27:52
フランスでも数名の関係者が不審死したと聞いています。

ルクセンブルクの銀行に秘密の口座があるそうです。
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