イチローと一郎の３月明暗

　３月２４日は、ＷＢＣの決勝戦、「侍ジャパン」と韓国チームが力を尽くして戦った。３対３の同点のまま延長の１０回表、イチロー選手が会心の２塁打を放ち、走者２名が還って２点差とした。韓国チームは１０回裏で無得点、「侍ジャパン」はＷＢＣ優勝二連覇の快挙を成し遂げた。

　この日の午後２時過ぎ、私は所用を終えて早めに東京のホテルに入り、この決勝戦のクライマックスをＴＶで見た。アナウンサーの絶叫と原監督の呆然とした顔が記憶に残っている。

　イチロー選手の技も素晴らしいが、何と言っても日本の名誉のために頑張ると言う彼の根性が大衆を感動させるのだ。彼は、試合終了後大リーグ開戦のために米国へ残ったが、「侍ジャパン」のメンバーと共に日本へ戻ったら、熱烈大歓迎を受けた事だろう。イチロー人気は益々上がり、彼は「野球の英雄」になった。

　同じ日、小沢一郎民主党代表の公設秘書大久保容疑者が東京地検により告訴された。だが、小沢代表はそれを知っても代表を辞任せず、政権奪取に向けて頑張ると意思表明、民主党執行部もこれを了承した。民主党内では、小沢代表が辞任し、新代表を立てないと来るべき総選挙は戦えないとの意見が出ているが、小沢氏周辺（＝旧自由党）と執行部はそれを無視する構えだ。

　大久保逮捕は国策捜査だと言って麻生政権を非難したり、俄かに企業献金の全面禁止を言い出して時間稼ぎをしようとしても、金権政治に辟易している有権者は西松建設やゼネコンからの集金実態とそのカネを小沢氏がどのように使ったのか知りたがっている。この内容を明確にしないまま民主党代表に留まれば、民主党も自民党と同じくカネ塗（まみ）れだと世間が見るのは当然だ。

　大久保告訴後の各種世論調査では、小沢辞任を求める声が６割を越している。小沢代表は、記者会見で「イチロー選手の人気にあやかりたい」などとやっていたが、それは無理と言うもの、千葉県知事選でもそうであったように、迫り来る総選挙では表に出ることが出来ないだろう。

　小沢代表は、３月３日の大久保秘書逮捕で彼の政治生命を事実上終えたのである。これ以上、民主党代表に留まっても、裁判が始まれば彼の金権体質がどんどん暴露され、民主党内はバラバラになって行く。小沢一郎氏が民主党代表に留まる時間の長いほど、民意は民主党から離れる。