♪ゴォ~ン、ゴォ~ン~…
♫カララ~ン、コロロ~ン~…
2020年の幕開けを寿ぐ新春特別企画も
いよいよ大詰めとなりました。
ロンドン市街で鳴る鐘の音が、
水面に反響するここグリニッジでは――
「やややっ!」
「うひゃっ!」
名探偵テディちゃムズの兄・マイクマフト氏と、
ユキノジョン・H・ワトソン博士は、
テムズ川の地下を横断する
《グリニッジフットトンネル》を出るなり、
引っくり返りそうになりましたよ。
「あれはっ!」
「戦艦テレメア!」
ゆっくりと晴れてゆく霧の中から、
忽然と浮かび上がったのは、
巨大な軍艦。
全長56メートル、
3本マストの
ネプチューン級戦列艦です。
「テレメア号……って、まさか、有り得ん!
あの船は、とっくのとうに壊されたのだぞ!」
吃驚仰天しながらも、
マイクマフト氏は思い巡らせます。
かのトラファルガー海戦の折り、
ネルソン提督と旗艦ヴィクトリー号を援けるため
大奮闘したテレメア号。
海軍の誇りというべきテレメア号は、
トラファルガー海戦後も
英海軍の戦艦として数々の軍務に就きましたが、
老朽化は避けられず、
民間業者に売却、
解体された……と伝えられていました。
「むぎゅぎゅ!
テレメアはまだ生きとったのだな!
しかも、あの船体!
数万人分の小麦粉が
余裕で収納できる大きさじゃ!」
「そうだよゥ、おにィちゃんッ!」
名探偵テディちゃムズは説明します。
ロンドン市《小麦粉不足》事件。
急に品不足になってしまった小麦粉を探し求め、
マイクマフト氏配下の情報員さんたちは、
ロンドン市内の倉庫や建物を
片っ端から捜査しましたけれど、
水上――テムズ川の上は、
それも、
“存在するはずのない船”の内部は、
調べなかった……
いや、気付きようがなかった!
「それよりもォ、ゆこうッ!」
細かい解説は後回し、と
テディちゃムズ、テレメア号に乗り込もうとして、
……あらっ、なんだかヘンですね?
「あしがァ、すすまないィ?!?」
「がるるるぐる!」(←訳:魔法だよコレ!)
船の周りに張られていたのは、
ネルソン提督の軍服の糸が結び付けられた
魔法の鎖。
英軍人魂のこもった鎖は、
無敵の境界線を形成しているのです。
「いや! こんなこともあろうかと!」
意気揚々と、マイクマフト氏が、
懐中から取り出したのは。
「女王陛下の名にかけて!
王配殿下、
皇太子殿下と、
皇太子妃殿下の名にかけて!
鎖よ、解けよ!」
女王陛下の署名と印璽、
王配殿下と
皇太子ご夫妻の署名と紋章が捺された令状。
高名な依頼人たちの直筆書状を突きつければ、
さしもの魔法の鎖とて、
ひとたまりもなく。
「くさりがァ、とけたッ!」
「ぐる~!」(←訳:突入~!)
ぎしぎし、がたがた。
あちこち軋む戦艦の甲板では、
小麦粉横領犯たちが
粉の袋詰めをしている最中でした。
その数、およそ10人。
いえ、人数差など気にしている場合ではありません。
右ストレート!
フックだ!
ジャブだ!
悪者たちをお縄にしたろう!
「召し取ったりぃ!
観念せい!」
「ちぇッ!
おにィちゃんにィ、さきをォこされたァ!」
瞬殺で捕縛された悪者たちを、
呼び子の笛で寄せた
地元警官たちに引き渡して、
名探偵テディちゃムズと仲間たちは
大いに喜びました。
これでベーカー街の下宿に帰れます!
新年の楽しい食事が、
待っている~!
「ことしもォ、どうぞォよろしくゥ~!!」
~ オマケのその5!に(たぶん)つづく! ~
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