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insights: icarus


photo by Rhys Frampton


イカロスは、ギリシャ神話の登場人物である。

彼の父親ダイダロスは、ひくてあまたの発明家/土木工事家かつトラブルメーカーだった。

父親の起こしたこれまたトラブルが原因で、イカロスは父親と共に迷宮(あるいは塔とも)に幽閉されてしまう。

迷宮から逃亡するために父ダイダロスの作った羽根と蝋の翼を身につけてイカロスは空を飛ぶが、太陽(アポローン)に近づきすぎたために蝋が溶け、海に落ちて死んでしまう...と。

よく知られた話である。
神をも恐れない慢心を諌める話であるとか、父親の悲劇であるとか、解釈はいろいろあるようだ。


昨夜はこの世で一番美しい男性を見てしまった...

それは古代ギリシャ人が理想化した男性像(彫刻)であり、後世の天才ミケランジャロが「すべての大理石の塊の中には、あらかじめ像が内在している。彫刻家はそれを解き放つのみである」(大意)と言った、まさにそれ。

大理石の中から解き放たれ、たった今出てきたのでは? と思うほどの美しさ。ロイヤル・バレエのプリンシパルMatthew Ball。
彼の出演するバレエ作品は何度も見たことがあるが、彼をこんなに美しいと思ったことはいまだかつてなかった。


『イカロス』は、Matthew Ballがファッション雑誌の仕事をしたのがきっかけで写真家で映像作家のRhys Framptonと知り合い(ダンサーをカメラで追う写真家自身の身体もダンサーのように動くのに気がついた、という話が興味深かった)、作曲家のGuy Chambersを巻き込んで何かを作りたいと始まったそうだ。

昨夜はその結実がプレミアで上演されたのだった。
Matthew Ball自らが振り付けたソロ、ピアノとベース、サキソフォーンのみの音楽、パフォーマンスはセンシャルな白黒の映像作品となったのである。
生の舞台もよかったが、編集された16分ほどの映像もまた感動的だった。

人間の身体にはこんなにも多くの筋肉が隠されていて、こんな可動域があり、そしてある種の人間はその指の先や足の先の先のそのまた向こうを表現することができるのか...

あれ、これってハッピーエンド版のイカロスの話ではないか。


今後、いかにしてこの作品を世に出すのかは未定だそうだがもったいない(会場からはぜひクラウドファンディングでという声が上がった)。
人間の喜びの一つは、「共同して創造すること」である、というのを示しているだけでもう素晴らしいし。
写真集になったら絶対に買います。
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