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東京のホテルからの眺め




オランダ、ドイツ旅行の話から、また東京の話に戻ります。


今年の4月から5月にかけて、日本へ一時帰国していた。

前回、東京の虎ノ門に宿泊したのは、2019年8月のことだった。

そのとき、あまりにも周辺に工事が多いことに辟易し、その次の年の2020年と21年は大手町のホテルに宿泊した(2022年の帰国時は、関西人のわたしは東京まで行かなかった)。


2023年。
虎ノ門のあたりは高層ビルの建築ラッシュは止んでいなかった。

残念ながらわたしは、この辺りが再開発前にどんな姿形、そんな魅力を持っていたのかは知らない。
しかし、以前のどこもかしこも工事中の時よりは、街の輪郭がはっきりし、ピカピカの摩天楼が青空に映え、世界でも大都市としては数少ない清潔さと相まって、気持ちのいい春の風が吹いていた。




特に、友達数人からのおすすめで宿泊したオークラ東京は、2019年に改装したばかりで、聞いていた通り「気のいい」ホテルだと思った。ザ・日本のホテル。
東京は坂が多い...というのに気がついたのはこちらに宿泊したからだ。神戸っ子は坂が好きなのよ。


東京は建築ラッシュが終わっていない...いや、終わりそうもない...
今まであったものを取り壊し、より高いもの、より新しいものが次々と建てられる。そのサイクルには「これで終わり」ということがない。

なぜなら、その運動を続けないとあるものが生き残れないからだ。

そのあるものとは、もちろん資本である。





東京の摩天楼をオークラの高層階のバーから眺めてうっとりしていたら、煌めくビルの間に、緑色の濃い盆のような一区画に気がついた。

関西生まれ関西育ちで、東京の地勢に全く疎いわたしにも一目であそこが「神宮外苑」なのだと分かった。

そういえば国立競技場らしき丸屋根が見えているではないか、と。

こうやって眺めてみると、あちらの一帯がずっと東京の「開発」の最後の砦であったことが手に取るように分かる。




資本(剰余価値を生むことにより自己増殖する価値の運動体)にあるのは増殖する動きだけだ。

開発し尽くされて、人工物がその地表面をほとんど全て覆ってしまった東京には、もう新たに高層ビルをぶち立てて金儲けする土地がない。
自己増殖のためには、「再開発」するか「高層ビル建築が禁止されているエリアの規制を緩和する」しか方法がないのだ。

神宮外苑の再開発は「高層ビル建築が禁止されているエリアの規制を緩和する」ことによって行われようとしている。

東京オリンピックの招致も、そもそもはこのエリアの規制をまずゆるゆるにしてしまうという、単なる伏線だったのだ。

『都内の貴重な緑地として環境が守られてきた神宮外苑。「山手線内に残された最後の再開発地」と、不動産開発業者の垂涎の的でもあった。「規制を取り払うのは五輪誘致しかないと言われ、森の動きが注目されていた」』(AERAの記事。文春オンラインより孫引き

再開発に対する盛んな抗議運動も行われている。




資本には増殖する動きがやめられない。
それを制御できるとしたら人間しかない。
今だけ、ここだけ、自分だけ、で金儲けだけに邁進し、どんな東京を遺すというのだろうか。


今日、これを書いたのは、週末に「道玄坂2丁目を『街並み再生地区』」という記事を読んだからだった。

わたしには不案内なエリアだが、再現不可能な魅力的な街並みだということはすごくよく分かった。
わが故郷、神戸も、今住んでいる英国のロンドンもこんな目に遭っているからだ...




おやすみ、東京。
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