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アレクサンダー・マックイーンという病




ヴィクトリア・アルバート博物館で絶賛開催中の「アレクサンダー・マックイーン:野蛮の美」(Alexsandar Mcqueen: Savage Beauty)展は、ナショナル・ギャラリーのレンブラント展(終了)と並んで、今年上半期一チケットが取りにくい展覧会にちがいない。

なんせ先々月行けなくなり、改めてチケットを取ろうとトライしたらまさかの一ヶ月半待ち。
長かったなあ!

2010年に亡くなったデザイナーに敬意を表すべく、サラ・バートンのアレクサンダー・マックイーンの服を着た。
マックイーン自身、「シルエットとカッティングの本家本元になりたい。僕が死んでも21世紀はアレクサンダー・マックイーンで始まったと記憶されたい」と言っているので、着て行ってよかったと大変自己満足。


「ルールを破るためにはルールを熟知しなければならない。ルールは破壊するが伝統は大切にする」、すなわち、手のかけ具合、職人の仕事が素晴らしい展覧会、いやショーだった。

作品も素晴らしいが、インスタレーションとメランコリックな音楽も。

写真もスケッチも厳禁なので、会場の様子はネットで検索していただくとして、わたしが一番前のめりになったのはマスクやマウスピースの類の豊富さだ。
マックイーン自身、アクセサリーやジュエリーの類をSM的な拘束衣、倒錯の一種であると言っており、彼の抑圧されたセクシャリティを連想せずにはいられない。人間は仮面をかぶった途端に自由に発言できるようになることを思い出そう。
また、仮面をかぶることによって、人はあの世からの使者になったり、神になったり、鬼にもなれる。カタルシスを昇華し、人間を祝福し、穢れを祓うことができる。このあたりに彼の創作の秘密がありそうな気がするのだが、的外れだろうか。
で、これらマスクやマウスピースの写真を手元に置いておきたいがために超重たいカタログを買ってしまったよ...

インスタレーションの素晴らしさは、どの部屋も良かったのだが、特にスコットランドにインスパイヤされた服と、イングランドにインスパイアされた服を着たマネキンが優雅に、しかも敵対心丸出しで向かい合っている部屋。音楽はヘンデルのサラバンド。合いすぎ。

そして「驚異の部屋」。「驚異の部屋」、好奇心のキャビネット(Cabinet of curiosities)(驚異の部屋に関しては、ミロワの「大英博物館で」の中で目一杯考察したのでもしよかったらご覧ください)。おお、まさにこれら展示されている服飾品はもう「服」ではない。本来の使用方法から切り離された「コレクション」なのだ。


もし、もう一回ウエディングドレスを着る機会があるなら、絶対にマックイーンの芝居がかったドレスを着たい。これ、最高の賛辞だ。
そうそう、妙なマスクもセットで絶対にかぶってみたい。いやマスクがかぶりたいからマックイーンを着るのだと言うべきかな。
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