ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

松本清張「芥川龍之介の死」。

2011-05-25 16:21:20 | 
松本清張の「芥川龍之介の死」を読んだ。
芥川龍之介は、劇薬ベロナールとジュアールを多量に服用して、
昭和2年7月24日の朝に死亡。享年36歳。
検死した下島主治医や、親しかった画家の
小穴隆一氏などが残した資料から、自殺の原因を探っている。

遺書に書かれていた「ぼんやりとした不安」というのも、
都会育ちでつねにポーズをつけざるおえなかった芥川龍之介は、
負い目と思っていた家庭環境について多く語ることができず
当時、主流となりつつあった自然主義的な
「告白小説」が書けないことに悩んだらしい。
また読書による疑似体験がほとんどで、
今昔物語など過去の文献をモチーフにした小説を発表したが、
やがてネタがつきてしまったというのもある。
芥川龍之介自身は、ポーズをつけたがり、
自分の赤裸々な生活を告白できない人だったのだ。

読んでへぇ~と思ったのは、「歯車」に関すること。
死ぬ間際の小説「歯車」には、視界にチラチラ点滅する歯車が登場するが、
この歯車は、どうも眼科関連の本を見ながら書かれていた可能性が高いという。
書かれている症状が、学術本どおりの描写で、あまりにも正確すぎるし、
その幻覚のような症状は、直接精神疾患とは関係がないらしい。
てっきり自分の体験かと思ったが。。。
しかし、発狂する不安を、幻覚のような「歯車」で表現するところは、やはりかっこいい!

他にも、将来に対する不安のタネとしては、
発狂した母の遺伝子を受け継いでいることで、将来は必ず発狂するという恐怖、
親友の宇野浩二が王子精神病院に入院してヘコんでしまったこと、
愛人関係にあった秀しげ子との爛れた関係が清算できないこと、
そして、姉の夫が自殺したことによる、姉家族への経済的負担を
負わなければならないことなど、さまざまな理由があった。

オイラはぼんやりとした毎日で、
不安なんかありません・・・。
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