ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

知ってるつもり?堀辰雄。

2009-09-06 16:35:09 | 
堀辰雄の作品は「ルウベンスの偽画」から始まる作品群によって、
軽井沢文学というイメージができあがっているが
それ以前にも、習作期間としてではあるが新興芸術派の
モダニズム小説と呼ばれる小説を書いている。

それは川村湊の「物語の娘」という著書の中で知ったのだが
「水族館」という、浅草を舞台にした短編小説などだ。
「水族館」は、カジノや酒場、踊り子、男装の麗人、同性愛といった
都会の風俗とともに、人間の欲望を描いている。
また当時、堀辰雄は浅草のダンサーと恋をしていたらしい。
短命で薄幸な女性との儚い恋・・というイメージとは、ほど遠い。
芸術家は誰でも、自分のイメージを確立する前には
いろいろとあるものだが、これは180°違う。

また「ルウベンスの偽画」「聖家族」「奈緒子」などの
恋人役のモデルとなった片山總子(宗瑛)は、
堀辰雄との噂が立つことに迷惑だったようだ。
片山總子が71歳のときの肉声インタビューがあり
そこで「堀さんの気持ちはわかっていたが、
私のほうは歓迎しなかった・・・」とある。
堀辰雄の一方的な片思いとも思えるが、
しかし、インタビューしたとき
堀辰雄の妻も生きているのだから
どこまで本心なのかというのも疑われる。

現に「ルウベンスの偽画」「聖家族」を発表した翌1931年には
軽井沢の別荘にいた片山總子から堀辰雄にあてて
「遊びにいらっしゃい。室生犀星先生は庭づくりに夢中です。
 今年は日本人が少ないようです。
 家のベッドは たいそうギイギイいいます。さよなら」
という手紙を出している。
そして堀辰雄は、この年も軽井沢に長期滞在している。
軽井沢の別荘からこんな手紙をもらったら、
誰だって、惚れてまうやろー!

1924年から毎年軽井沢に来ていた堀辰雄が、
別荘を手に入れて住んでみようと思ったのは
この片山家の別荘に
招かれてからかもしれないと、著者は書いている。

また堀辰雄は、片山總子をめぐって
韓国人作家と三角関係となり、
ナイフを持って追い回されたということだ。
これも堀辰雄らしくないエピソードだ。

芥川龍之介の自殺、恋敵との刃傷沙汰など、
辛い時期を乗り越えて
1933年、婚約者である矢野綾子と出会うが
富士見のサナトリウムで看取り、
その2年後に妻を迎えている。
また創作ノートには、
「奈緒子」が完結するまでの構想は書かれていたが、
未完で終わってしまったのが、なんとも悲しい。

LAST DAY/ルルティア
http://www.youtube.com/watch?v=fcpGiz332cY&feature=related

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