ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

北杜夫「楡家の人びと」。

2010-11-09 16:27:08 | 
北杜夫の「楡家の人びと」を読んだ。
東京の青山で精神病院を営む楡家が
明治30年代から太平洋戦争が終わるまでの
親子三代にわたる長編小説だ。

楡病院は、明治時代に、父、楡基一郎院長が築き
多くの使用人を抱えて順風満帆でいたが、
関東大震災に被災して病院が崩壊。
その後、郊外の世田谷に土地を購入して分院をつくり、
ドイツ留学帰りの娘婿や、息子たちにまかせていく。
それから満州事変、第二次世界大戦が忍び寄る
昭和初期へと時代は流れ、楡基一郎の孫や同世代の友人は、
招集されて戦地へと散らばっていく。
空母瑞鶴で真珠湾攻撃へ向かう様子や
南海の孤島を死守する様子などが描かれていて、
へぇ~、こんな小説だったのかと驚いた。
最後は終戦を迎えて、楡家の人びとや
楡家で働いていた使用人たちは、
それぞれ新たな町で新生活を始めていく。

「楡家の人びと」というホームドラマのような
本のタイトルから、日常の何気ない家族のやりとりが
メインのほのぼのとした小説だと思ったが、
明治から大正、そして戦争が勃発する昭和と、
動乱の時代を生きた楡家の人びとの暮らしぶりや
当時の日本の緊張した空気みたいなものが
わかりやすく、かつユーモアあふれる文章で書かれていた。
図書館で何気なく手にした一冊だったが
なかなか、勉強になった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする