西伊豆の木負(きしょう)海岸に、
真っ白な美しい船(スカンジナビア号)が在ったのをご存じの方はいるでしょうか?
私は何かで見て、ずっと気になっていた船です。
スカンジナビア号の歴史は、1927年(昭和2年)まで遡ります。
スカンジナビア号は1927年にスウェーデンで完成しました。
最初の船名は、ステラ・ポリス(北極星)と言いました。
5105トン、全長127メートル。
ディーゼル機関推進ですが、帆船を思わせる長いバウスプリットが配置されており、
良き時代の帆船の美しさを再現する様なスタイルでした。
乗客数は全員が一等クラスのみの165名であり、
乗組員160名の内、120名が接客係という、至れり尽くせり対応の船でした。
それもそのはず、旅客は欧米の富豪や王侯貴族を対象とした船だったのです。
乗船客には、ノルウェーやスウェーデン国王。
ベルギーやオランダの王室一家。
各国首脳、著名な富豪や貴族などが多数含まれ、
本船によるクルーズ、(フィヨルドクルーズ・地中海クルーズ・カリブ海クルーズ)は、
欧米の上流階級の人々の最大の娯楽となっていたのです。
しかし、1939年に第二次大戦が勃発し、ノルウェーに停泊中であった本船は、
ドイツ軍に接収、ドイツに回航されドイツ軍人の宿泊、休養に使われていました。
戦争を無事に乗り切った本船はスウェーデンに戻され修繕工事が行われ、
1947年からアメリカを起点としたカリブ海クルーズに用いられましたが、
以前に比べ客層の品格はいくらか落ちていたようです。
1960年代に入り、船舶の安全基準に大規模な改定があり、
それに受かるには多額の資金が必要で、
船主は既に老朽化していた船体をあきらめ売却する事になりました。
買い取ったのは伊豆半島を中心にリゾート開発を進めていたコクド社でした。
日本に回航された船は、伊豆の木負海岸に係船され、船名をスカンジナビア号と改め、
富士山をバックにしたスカンジナビア号は、ホテル兼レストラン船として大当たり。
伊豆半島の主要観光施設のひとつとして定着したのです。
しかし、バブル景気後の経営は難しく、観光事業を中止し船を売却します。
船を買い取ったのはスウェーデンの興行会社で、2006年8月、香港に向け回航しました。
回航中に船体の老朽化による漏水が発生、漏水は遂に止まらずに、
9月1日、和歌山の紀伊半島潮岬沖で海没し79年間の歴史に幕を降ろしたのです。
1970年から25,6年間の営業をしていたのですから、
存在を知っていた私としては、もっと早く行っておくべきだったと残念な気がします。
欧米の王侯貴族や富豪が乗った豪華クルーズ船の香りを味わいたかった。
それにしても、タイタニックの様に処女航海で沈没してしまう伝説の船もあれば、
こういった長い歴史を持ち、様々な人達の思い出、記念となる船もいる。
人生と同じで、船の歴史と物語・・実に興味深いですね。
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