ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

甲斐駒ケ岳西坊主ノ沢~黄蓮谷左俣(アイスクライミング) その3

2009年01月03日 18時17分02秒 | クライミング
 1月1日、午前7時15分起床。目覚ましに使っていた携帯電話のバッテリーが切れており、元旦から朝寝坊。明日からどうやって朝起きようか、○中と二人でへらへら笑って新年を迎えた。

 幕営地から15分ほど谷をつめ、小さな尾根に出ると、谷を隔てて向こう側に坊主山の稜線が見える。谷をトラバースして坊主山右側の鞍部を超えて坊主の沢を下る。風が強くて手の指が軽~い凍傷にかかったようで、感覚がなかなか戻らない。坊主の沢は40、50度ほどの滝が連続して現れ、懸垂下降を何度か繰り返す。黄蓮谷に戻ってきて、のんびりと遡行を開始。坊主の滝は30メートル、Ⅳくらい。この日は二股手前まで登ると、右岸にちょっと狭いが幕営適地を発見。○中が谷の上を歩くと氷が割れてジャボンと水に落ちてくれたので、ぽっかりとあいた氷の穴から水場も得られた。最高のテンバだ。

 1月2日、15メートルの滑滝を超えて左俣へ入る。Ⅲ~Ⅳの滝を2、3超えると垂直の滝が出現(写真)。真ん中はつらら状で明らかに困難。1P目は左側の岩とのコンタクトラインをルートにとる。斜度は70~80度ほどだろうか。ちょっと長いので腕が疲れた。岩と氷の間にできた小さなテラスでピッチを切る。30メートル、Ⅴ下。2P目は傾斜が落ち、落ち口へ。30メートル、Ⅲ。

 垂直の滝を超えると最後の滝が現れる。右足が凍傷気味なので左から巻こいてさっさと下山しようと思ったが、○中が「せっかくだから真中から登りましょう」を譲らない。しぶしぶ同意してロープを出す。70度ほどのスラブに張り付いた厚いベルグラを7メートル登り、もこもこのフェースを超える。20メートル、Ⅳ。

 谷の源頭はところどころ腰ラッセルでへろへろになりながら八合目にたどりつく。時間がないので甲斐駒本峰の登頂は諦め、凍傷で痛む右足を引きずりながら黒戸尾根を神社まで下り終えた。あたりはすっかり真っ暗だ。
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