ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

甲斐駒ケ岳西坊主ノ沢~黄蓮谷左俣(アイスクライミング) その1

2009年01月03日 17時26分55秒 | クライミング
 雪男捜索から帰国してから約1か月、予想外の多忙で、この間まったく山に行けなかった。気分をリフレッシュするためにも、年末年始は仕事を放り出し、探検部の後輩の○中と甲斐駒でアイスクライミングをすることにした。ルートは西坊主ノ沢から黄蓮谷左俣への継続、今シーズン初アイスとしては少々荷が重いか。

 12月30日未明、竹宇駒が岳神社に到着し、3時間ほど仮眠をとる。登山そのものが10カ月ぶりで、おまけにその間ほとんど運動をしていないという○中のペースが上がらない。前を行くおっちゃん登山者と抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り返し、黒戸尾根5合目まで5時間かかった。黄蓮谷へと続く踏み跡をたどり、尾白川本流まで下る。尾白川は雪が少なくまるで白い氷の回廊といった感じで美しい。尾白川を1時間ほど遡ったところでこの日は幕営。

 31日、夜間、雪がテントをばしゃばしゃとたたき、朝起きると3センチほど雪が積もっている。のそのそ歩き、1時間半ほどで西坊主ノ沢の取り付きに到着した。
 
 F1は120メートルほど。氷の発達状況はあまり良くないようで、真ん中の垂直部分がつらら状となっており難しそう。核心は登らせてもらおうと1P目のリードを任せてもらったが、見た目よりスケールが大きく、垂直部分の手前でロープが尽きた。50メートル、Ⅲ。2P目が核心で、垂直のつらら状の左のコーナーフェースを10メートルほど登る(写真)。今年初リード兼運動不足かつ荷物を背負ったままの○中は結構つらそう。途中で勘弁のテンションを入れる。30メートル、Ⅴ。3P目は垂直の小さな段差を2か所超えると斜度は落ちる。40メートル、Ⅳ。

 F2、F3は斜度のない滑滝で、すでに雪に埋まっている。F4は真ん中のスラブが70度ほどありそうだが、残念ながら氷がつながっていないので右から高巻く。

 F4を過ぎて10分ほどラッセルすると巨大なF5が現れる。滝は横幅がありどこからでもルートを取れそうだが、右側の切り立った部分は明らかに難しそう。左の斜度が緩い部分を登る。1P目、50メートル、Ⅳ上。登るに従い徐々に斜度が増していく。フラットなスラブの滑滝なので、休む場所がほどんどなく、前爪で立ちっぱなしのふくらはぎがぴきぴきしてくる。2P目は左の岩の右側のコーナーを使ってふくらはぎへの負担を減らそうとするが、途中で完全パンプ。うなりながらの50メートル、Ⅳ。3P目は傾斜が緩んだところを落ち口へ。30メートル、Ⅲだが、○中の足は悲鳴を上げた。

 西坊主ノ沢はまさに筋トレルートって感じで、○中は「ムーブもくそもないっすね。全然面白くない!」。登攀終了後は稜線目指して谷を登り、谷が二股に分かれたところの樹林帯で幕営した。風が強く、体がすっかり冷えてしまった。
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