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2012年2月に読んだ本

2012年03月01日 22時02分44秒 | 本と雑誌
2月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2249ページ
ナイス数:75ナイス

天下人の時代 (日本近世の歴史)天下人の時代 (日本近世の歴史)
信長、秀吉、家康、忠秀という四代の天下人を政治史の面から描いている。歴史学の新たな研究成果等を織り込んだものではあるが、通史を描くのに精いっぱいでそうした切り口が目立たなかったのはとても残念。細部をメインとするなら一人一冊くらいの密度が欲しい。「天下人」というテーマを中心とするならば、通史の部分をもう少し削ってもよかったかもしれない。(☆☆☆)
読了日:02月11日 著者:藤井 讓治
誰かが足りない誰かが足りない
宮下奈都らしい繊細な内面描写が光る連作短編集。予約1はいかにもありがちでもうひとつだったが、2と3は非常に良かった。4と5はまあまあ。6はもう少し話を膨らまして欲しい感じ。こうしてみると、女性主人公の話の方が魅力的。男性主人公だとドロドロした部分がスッパリと削られているので物足りなく感じるが、今の草食系はこんなものだったりするのかね。(☆☆☆☆)
読了日:02月15日 著者:宮下 奈都
ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編
自衛隊パートはいいが、ファンタジーパートのあまりの世界観の薄っぺらさに慄いた。まるで小学生レベル、というか、日本社会の描写とつり合いが取れない。ただ、それが著者の狙いだとしたら別の読み方も可能だが、果たしてそれは単なる深読みのし過ぎなのだろうか。(☆☆☆☆)
読了日:02月18日 著者:柳内 たくみ
捨て猫王女の前奏曲―スクラップド・プリンセス (富士見ファンタジア文庫)捨て猫王女の前奏曲―スクラップド・プリンセス (富士見ファンタジア文庫)
以前アニメは見ていたが、原作は初めて読む。最近のライトノベルには感じられない、作り込まれた世界観がかえって新鮮にさえ思う。(☆☆☆☆☆)
読了日:02月21日 著者:榊 一郎
消失グラデーション消失グラデーション
久しぶりに叙述トリックにちゃんと引っかかることができて満足(笑)。学園ものでやってのけたのはお見事。ミスリードも上手い。ミステリ的にはスーパーマンがいるので評価落とす感じだけどね。文章のタッチもやや読みにくく感じたけど、叙述ミステリならこれくらいは仕方ないか。十分に楽しめる一冊だった。(☆☆☆☆☆)
読了日:02月23日 著者:長沢 樹
羽月莉音の帝国 10 (ガガガ文庫)羽月莉音の帝国 10 (ガガガ文庫)
最後はまとめただけになった感じだなあ。流れ的にハッピーエンドが必要だから仕方ないけれど。でも、エンターテイメントでは終わり良ければよりも、密度や速度のある展開こそがワクワクさせてくれるし、特にリアルタイムに読んでいると強く引き込まれる。その意味でこの作品と巡り合えて幸せに感じたし、いろいろと欠点もあったけれど記憶に強く残ることは間違いない。ホント面白かった。(☆☆☆☆☆☆)
読了日:02月26日 著者:至道 流星
赦されざる者達の騒動歌―スクラップド・プリンセス〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)赦されざる者達の騒動歌―スクラップド・プリンセス〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)
「棄てプリ」の設定が物語の根幹になっていると実感できる巻。いろんなスタイルがあっていい。でも、ファンタジーが定番のファンタジー像を借りるだけじゃもったいない。最近はそんなのばかりが氾濫している感じがして残念。キャラクター頼みとなる前のライトノベルのほうが読み応えはあるね。(☆☆☆☆☆)
読了日:02月28日 著者:榊 一郎

2012年2月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター




『ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編』については、「世界構造マニアからの苦言―感想:『ゲート1 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり <接触編>』」の記事に書いた。

『スクラップド・プリンセス』についてはいつになるか分からないが全巻読み終えたら感想を書いてみたい。

完結した『羽月莉音の帝国』についても独立した記事を書きたいところ。まだ明確な内容は定まっていないが。

宮下奈都については、内面描写に優れているが、構成力に物足りなさを感じる。ここには挙げられなかったが桜庭一樹『傷痕』を読んだあとだと特に。

『消失グラデーション』は叙述ミステリ。当然だが、叙述ミステリは小説ならではの表現方法だ。通常のトリックだとどれほど凝ったものであってもなかなか驚きに繋がらないが、叙述ミステリはそれまでの前提をひっくり返される面白さがある。もちろん簡単にネタバレするような作品ではそれは味わえないが。

2月はわずか7冊に終わってしまった。いつものことながら来月こそは、と強く思う。そのモチベーションが継続することを祈っている。

2012年1月に読んだ本
2011年に読んだ本




2012年2月に読んだコミック

『GIANT KILLING』22巻(ツジトモ)
『へうげもの』14巻(山田 芳裕)
『孤独のグルメ』(久住 昌之 谷口 ジロー)
『きんいろモザイク』1巻(原 悠衣)
『魔法使いの娘ニ非ズ』2巻(那州 雪絵)
『Aチャンネル アンソロジーコミック』1巻(アンソロジー)
『トニーたけざきのエヴァンゲリオン』(トニー たけざき)

コミックもわずか7冊。
この中では那州雪絵が印象深い。傑作『ここはグリーン・ウッド』はもちろん、白泉社時代の短編などにも好きな作品が多かった。
Twitterにも書いたが、『魔法使いの娘ニ非ズ』は長編『魔法使いの娘』の後日談・スピンオフ作品で、一話読み切り形式となっている。1巻は『魔法使いの娘』を読み終えた直後に読んだため、強い印象を残さなかったが、今回2巻を読むにあたり読み返すと非常に素晴らしい作品だと気付いた。繰り返し読むことで味わい深くなる作家性がある。


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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
星四なら、ゲートはそれでも読めた、という感じで... (名無し)
2012-03-02 23:30:12
主人公の世代が『大人』なので、それをあえて書くか、書かないかというか。
秋口ぎぐるはアンチラノベとして少年を主人公にゲーム的な世界観を皮肉っていましたが、そこであえてベタに『大人が主人公の』ライトノベルを考えると、狼と香辛料もそうですけど、どのレベルで未熟さを潜ませて、尚且つ大人であること、社会を書く事、などが面白さに繋がるのかなと。この作品だと日本(というか『現代』)側があくまでメインになりすぎて、異世界が軽すぎる、というイメージが強かったかなと。

羽月は、まあ、作者の体質からするとラストは……という気もしますね(苦笑)。
SSガールの当初から、スタイルは主人公達が世界を振り回していくスピード感『のみを追求する』と言っていいくらい割り切ってましたしね。

話題になりつつも未読の「孤独のグルメ」、あとは「消失グラデーション」と「魔法使いの娘」はチェックしてきますw
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>ゲート (奇天)
2012-03-03 00:56:58
記事にも書きましたが、異世界のチープさに本を文字通り投げ出しそうになりましたw
ただ、今後どういう方向に進んでいくのかは気になるといった感じですかね。現代といかにもなファンタジー世界がリンクするというアイディア自体は嫌いじゃないので、「世界」や「設定」がメインとなるストーリー展開をするのならば読み続けようかなと思っています。とはいえ、買ってまで読もうとも思わないので、図書館の予約待ちって感じですがw

>大人

自衛官を出したいがために大人という年齢になったって感じの作品ですが、私自身はライトノベルの主人公の年齢はあまり気になりません。
思春期以上老人以下だとあまり内面に変わりがないとも思いますしw
まあ親になれば違ってくるかとも思いますが、それもまた個人差のレベルだったりしますしね、現実には。
少年マンガなんかでも必ずしも主人公が少年ばかりではありませんし(パトレイバー、北斗の拳、ドラゴンボールなどなど。最近の作品はあまり詳しく知りませんが・・・)。

>羽月

著者も言いたいことを言い切ったって感じはあると思います。プロット重視の作品ならともかく、通常のエンターテイメントだと結末よりも過程が楽しめますし、このシリーズもまさにそんな感じでした。まあここ1、2年で読んだライトノベルの中では抜群の面白さでしたがw
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>異世界 (名無し)
2012-03-04 07:08:02
丁度いい例を思い出したのですが、こちらでも度々名前が出る「フルメタ」の賀東先生が書いていたドラグネット・ミラージュも同じタイプでしたね。
世代的にも大人を書きつつ、異世界と地球の境界を書く、という。
こちらは「既に混濁した世界」を書く、どちらかというと(翻訳SFにも偶にある類の)ハヤカワSFに近いスタイルを取りながら、あくまでラノベ的なエンタメを書いていたなと思います。
バランスが取れた良作だと思ったのですが、いかんせんレーベルが……(汗)。
大人、については、こちらは正直作者の性質から中高生がどうの、という前提はなかったと感じますが。

「大人」というこのへんは、ただ、MAG・ネットの特集を見ていても感じたのですけど、中高生の感情移入を煽る為の舞台として『学校』がある、という部分に乗るか乗らないか、はあるのかなと。
今やスタイルに乗ったからと言って安定する、という時期でもありませんがw、ハーレムラノベの大半が学校を舞台にしている(ように見える?)ことや、空気系の舞台がこれまた学校に由来しているのも、そうしたフィールドの要請が大きいのかな? というか。積み重ねたテンプレがあるので、それを流用できる学生(というか高校生)という世代が使いやすいだけかもしれませんけどね。
番組の読者意見の中には、やはりテンプレをそのまま使い続けてほしい、と言う読者や、いい加減飽きた、という読者もいて、意識的にはなってるんだろうなあとは思いました。
この作品(ゲート)の場合、仰るような感じで「主人公を「そう」書きたいが為に大人である」というように読めて、尚更ディティールとの違和感が感じられたのかなと。
これは「大人」のイメージに対する先入観もあると思いますが、作中で登場人物同士と対比させるとき、どんなバランスが成立しているかに寄るのかなと。
ドラゴンボールだったら主人公がああなのと、舞台が世俗との関係を半ば絶つ形で進行していく物語のため、むしろ悟空はあの方がいい、みたいなw 北斗の拳はバット、リン、上の世代の老師たちとの関係の中で成り立つ感じですね。
攻殻機動隊みたいな話まで行くと「そういうもの」としか読めませんが、パトレイバーだと確かに微妙な位置づけを描けているのかな? と。とはいえ、パトレイバーはつい最近になって押井映画を見ただけなので、語れるとは思えませんが(汗)。

実際は……まあ、そうですよね(苦笑)。
何に責任を負うか、と言うような観点よりも実生活の過程として子を持つ親、という例は自分の周りでもよく見ますので。
もしかすると青年漫画がこのあたりを描いているのかもしれませんが、小説でエンタでライトノベル方面に寄った描写で……という例はあまり見ませんね。

>羽月
作者の方向性からしても、ベターだったんじゃないかなと思います。
全体からキャラを掘り下げる、寓意を読み取る、とか、そうしたタイプの作品でないのは確実ですしw
キャラ小説なのに過度にキャラ的な魅力が押し出されない(というか、そう読まれてないように見える)のは、これも当初からの特徴ですしね。書きたい事を書くためだけのキャラクターというのも徹底していたかなと。
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>ドラグネット・ミラージュ (奇天)
2012-03-05 01:38:19
面白そうですね・・・でもゼータ文庫なんて見たことないかもw

>学校

漫画家もそうですが、ライトノベル作家なんかも若いうちにデビューする人が多いです。そういう社会経験が乏しい作り手にとって、学校と異世界が舞台設定として作りやすいというのはかなり大きな理由だと思います。

『なれる!SE』や『羽月莉音の帝国』のように書き手の経験が作品の舞台にリアリティを与えたりしますから、書き手の多様化がライトノベルの場合は大きいでしょうね。

もちろん対象とする読者が中高生が多いというのもあると思いますが、ライトノベルの場合、異世界舞台の作品が主流で、現実世界を舞台にした作品は90年代末くらいから増えてきたと思います。

そうした手法の確立や「萌え」の普及など様々な理由があると思います。ただ現実世界が舞台の作品が増えることで、より読者との関係が身近になったという面はあるかと思います。

>大人

ハーレム系ラブコメでは大人の存在が邪魔になるので、学芸会(大人抜きの作品)化が普及しています。出て来ても記号的な存在がほとんどです。

学園ものにおいて、教師の存在は描かれることが多いですが、親は消えることが多いのも特徴的ですね(あずまんが大王、ひだまりスケッチ、けいおん!など)。ただこの辺りは完全な大人として描かれるよりも、半人前の大人という部分が前面に出ていたりしますが。

主人公が大人というのは、職業系コミックなどでは普通だったりしますが、魅力的な大人像が描きにくい現在ではそれ以外の形で大人を扱いにくいかもしれないですね。大人というだけでステレオタイプなダメな存在になってしまうケースも多いように感じます。

大人だから子供だからではなく、それぞれ個々の人間として描くことが本来の有り様なのだと思うのですが、パターン化してしまうのは作者の力量の問題もあるのでしょうね。
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>ゼータ文庫 (名無し)
2012-03-05 23:23:43
装丁も良かったですよ……マイナーでしたが!w
自分の場合、この作品以外で知ってるのは「ヤクザガール・ミサイルハート」くらいですけどね。ドラグネットミラージュはまた書いてほしいです。

>経験
作者次第ですが、早く出て引き出しが枯渇する例と、西尾維新のように進んでいける例がありますね。
上遠野浩平はある程度大人を書ける目線でデビューしたのがブギーポップを書き得る力を持たせたのかもしれません。
あれは学校が舞台でしたけど、「学校が主軸」というより、世界の中に位置づけられるそれとその中の思春期の学生を書いていたような。
それも含めて資質、と言う事になるとは思いますが、その意味ではどんな世代が「学校」を書くかはあまり関係なく、体験を扱うバランスが作者の引き出しにどう影響しているか、という点が重要かなと。
羽月シリーズについてはもう作者の経験イコールみたいな話でしたしw

講談社BOXはそうした例を追って「リアルな青春」を打ち出してましたが、あれも迷走してしまったなあと。
現状、書き手の世代よりも「書かれる舞台」がどうであるのか、という方がその面では重要に思えます。

>テンプレとしての大人
ハーレム系、という前提の方が既に形骸化しているようには感じますが(苦笑)、空気系と大人の折り合いは悪いですね。
社会を書こうとすると、どうしても人間関係の留保を書き続けるああした内容にはならないでしょうし。

未熟な大人として書かれるパターンであれば円環の主人公、社会と折り合いをつけられないタイプは百鬼夜行シリーズの関口巽、などもそうでしょうか。後者はラノベじゃありませんがw、キャラ小説的な魅力が強いと思いますので。ちょっと例としては違いますけど、「こち亀」の両さんとかシティーハンター他の亮さんとかもw
「大人は悪い」なテンプレから見た世界観もいい加減作り辛そうですが、大人をどう書くのか、となると、これはテンプレ化しやすいのかもしれません。
作品のサンプルは既に多数あるので、キャラ小説的な「大人」であれば普通に書けそうではあるのですが、役割がどうかも大きそうですね。
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>西尾維新 (奇天)
2012-03-06 21:44:39
『難民探偵』あたり読むとあまりリアリティ必要な作品は不向きだなと感じますけどねw
虚構性を売りにした作風がぴったり合った作家だと思います。

>経験

サラリーマンや医療を扱う作品はやはりそうした経験があった方が強みになると思います。一方、職人などを扱うのであれば取材して書けば問題ないでしょうし。作品にある程度のリアリティを求めるのであれば、やはり経験の有無は大きな要因になるでしょう。

まあ刑事でなければミステリを書けないわけではないように、ジャンルとしての蓄積がカバーする部分もあります。ジャンル小説におけるテンプレは作り手と受け手の共通理解で成り立つところもありますしね。

ライトノベルは基本的にそうした経験的リアリティに重きを置かないので、そうした部分に自由であるというジャンル的特徴と捉えることもできるかもしれません。現実には特定の設定に偏っていますが。

当然、著者の経験は年齢には依存しませんが、今の学校生活を描こうとするなら若い著者の方が有利でしょうね。まあ普遍性をきちんと描けないと共感を得られる読み手は限られてしまうでしょうが。

>大人

空気系の場合は、テーマが「時間」になるため変化の象徴として学生が選ばれやすいとは感じます。じじばばでやってやれないこともないような気もしますが、書ける人がいないこととウケる可能性がないという点で誰もやろうとしないでしょうがw

成熟した大人像が描けないのは成長という物語の共通理念が持てなくなったことの裏返しですが、大人と子供の関係性の希薄さはここ数十年の日本特有の問題なのかもしれません。

『狼と香辛料』は、ロレンスとホロの二重の関係性が売りです。社会や経済への知識ではロレンスが大人であり、ホロは未熟な存在として描かれ、一方、人生経験などの面では駆け出しの青年であるロレンスが未熟で、何百年も生きるホロが成熟した存在として描かれるはずでした。
実際には、ホロが成熟したように描かれず、物語の展開において納得できない感じになってしまいましたが。

成熟した大人というキャラクターの蓄積がいま日本ではほとんどないように思います。
『ペルソナ4』で大人を対象にしたコミュがいくつかありましたが、ほとんどが類型的なものでした。悩み自体は大人のものであっても、悩み方は子供と変わらないような。

『あずまんが大王』『らいか・デイズ』『ひだまりスケッチ』といった作品では、教師が普段はダメダメだけど、それなりにちゃんと生徒たちよりも長生きしているんだと分かるような描かれ方がされています。(教師じゃないですが、パトレイバーの後藤隊長がルーツのひとつかもしれません。)

ダメなところもいろいろとあるけど、それでも長く生きる中で学んだことがにじみ出てくるようなキャラクター。難しいと思いますが、『三匹のおっさん』あたりがひとつの理想系かも。
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>西尾維新 (名無し)
2012-03-07 01:36:35
リアリティを作る上での経験面での成長、と言うか、「書ける作品の範囲」の成長ですねw
内容的にも現実のパロディとしての作品が大半ですし。
ただ、そうしたからこそ化物語以降でのテーマの掘り下げに一役買ってるんじゃないかと思います。
大人がなにか、というのをいつもの西尾節で語る感じですけどw
難民探偵にしろニンギョウにしろ、リアリティには最初から接近しようとしない感じですね。
別の話になりそうですが、それをするにはキャラ的な虚構性が先に立つ作風が邪魔にもなりますし。

>経験
軍事や警察モノが丁度そんな例ですね。
取材でガチガチにしてしまうよりも隙間があったほうがいい、みたいな話もどこかで読みましたw
想像力の幅が限定される、という意味だったかもしれません。
ただ医療に関しては、医師経験は他のジャンルよりも生きてきそうなイメージは強いですね。

ライトノベルは一般エンタメに比べても読者の「ツッコミのレベル」が低くなるので(許されるので)、書きやすくなる、と言うのはありそうですね。
まあ仰るように特定の設定が先にあって、そこに現実が追従してしまう作風が大半ですけどw
学校生活も基本的には「取材でやってしまえる」モノだと思いますが、この場合、共有している知識の幅が優位性には関係あるのかなと。
「はがない」と「俺の学園~」は書いているディティールに大差ないように感じますが(技術の差はあっても)、はがないの方が年上の作家ではあれ「経験を積んだ書き手」の作品でしたし、どちらにしろ現状の取材程度で補ってしまえる程度のものなんだろうなと。
究極的には高校生が書いたほうが一番リアルですがw、実際にはリアリティという点で求めるジャンルでもないのと、どう共感を作れるか、普遍性のある面白さを書けるか、が重要でしょうね。

>大人
孫を待つホームの空気感、とか斬新ですけどねw>新・空気系

狼と香辛料は、ラブコメということもあり、作者の手腕もあるのでしょうけど、キャラの設定(と言うか要素)に引きずられた印象を受けました。
人生経験、という重みを表現する難しさみたいなのは、確かに文脈にありましたね。
ペルソナは「3」でも大人コミュの類型性はありましたけど、ガチでやると重くなりすぎるのと、理解しづらい、という面が強くなるからでしょうか。
というか、本気でパトレイバーが気になってきたので集めようと思います(苦笑)。
映画だけで充分と思ってしまってたので……。文庫版も出てるし、ここから追ってみようかなと。
返信する
>学校生活 (奇天)
2012-03-07 03:03:03
朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』がいま一番リアルな高校生ものかなと思いますが、途中で挫折しました。評価の高い作品ですし、結構読まれているようですが。どこかが悪いというのではなく、合わなかったって感じですが、生々しすぎたのかもしれないですね。

40代、50代、60代、はたまたそれより上の世代の作家が学校を舞台にしようと思えば相当の取材が必要だと思います。『マリア様がみてる』で顕著ですが、学校内に携帯電話が出てこないというだけで、今ではファンタジーになっちゃいますしねw

>空気系

どの世代にとっても「いま」というものはあって、それをうまく切り取ることができるのならば作品として成立するとは思うのですが、空気系のフォーマットの問題として「女の子たち」を主人公にする以外の組み立ては難しそうに感じます。無理じゃないとは思いますが。でも、書ける作家と、受け入れる読み手がいるかどうかでしょうね。

>パトレイバー

SFものとしてパトレイバーはマスターしていないと!って言ってしまうのが悪しきSFファンなのでしょうがw

ちなみに、コミック、OVA、TVアニメ、劇場版はそれぞれ別ものですので、マスターするには全てチェックしないと(ぉぃ<OVA二期目はTVアニメシリーズの続編ですが、劇場版3作品は全て系統が違うという・・・

ロボットの社会への適応であったり、当時の日本の有り様であったり、メディアミックスという商売上の切り口であったり、パトレイバーはかなりエポックだったと思うので、見て損しない作品だと思います。
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>学校生活 (名無し)
2012-03-08 22:58:47
こちらは未読ですが、野ブタなんかのYA文芸とかは似たような質感を感じますね。
生々しさを求めて読むようなジャンルでもあるので、(純文学とは違っても、というか、だからこそ)時代ごとのリアリティの即効性がどう咀嚼できるかになるなーと。
実はジャンルごと苦手だったりします(汗)。前はかなり読んでたのですが、途中からそっち系の雑誌に流されてるような気分になってしまって(苦笑)。単に自分がエンタメ好きとして特化してるだけかもしれませんw

ただ一概には言えないと思いますが、仰られるような世代から上だと想像力が別の領域を切り取っている面はありそうですね。
それが悪い訳ではなくて、それこそ上述のようなジャンルでなければ、むしろ一つの世界観を書き切れる強みにもなるなと。マリ見ては自分も数冊読んだのですが、代用される作品が思い当たりませんでした。
エンタメの「学校」は、ある意味、作家とジャンル内に存在するお約束の組み合わせ、という気もしていてw、後はそれがどんなレベルで書かれているか、というだけの気もしています。「禁書」とか、電撃系ラノベの学園もそうですけど。
情報ツールのようなガジェット、その時代ごとの学園の空気(学園裏サイトのような問題意識)などは、取材やメディアの情報で補完されるようなものですし。
十~三十代の作家は網羅されているジャンルのコミュニティを共有しているので、それはそれでジャンルを補完していると思いますし。
結局のところ、出力された作品がどこに適応しているか、という段階になると「何が正しく適応する要素か」なんて言い切れないでしょうけどねw
それこそ作家それぞれの資質の方が出てくるんだろうなと。

>空気系
ジャンルとしてはいい加減閉塞感が漂ってきてはいるのですが、それもまた「らしい」ので、フェードアウトするにはまだまだ、という気もしていますね。
そうしたフィールドだからこそ、キャラ的な女の子達が作る世界観という既に需要層に共有されたフォーマット以外を提供するのは難しいのでしょうけど。
なんとなくですが、読み手が飽きるまでは書かれそうな気がしていますw 気付けばナリを潜めている伝奇バトルの隆盛もこんな風に沈静化していったのかなーとか。こっちもまだまだ書かれ続けてますし、ブームはそういうものなのかなと。
ただ、残念「系」にしろその他の要素にしろ、それを入れ替えるだけで辛うじて成立しているように見えるのは事実なんですよね……。

>パトレイバー
作者はサンデーコミックスで馬の作品を見た事があって、この人がパトレイバー!? と驚いたりしましたw パトレイバー事態は知ってたのですが、肝心の作品を読んでなかったので(汗)。
劇場版1、2は押井守なので、あの人的な常識として二作目は「原作を必ず破壊する」と想定した上で見てましたw で、予想通り「題材はこれじゃなくてもいいのでは」な空気と、それでも充分に楽しめる内容で嬉しかったですw 日常と戦争(というか日常という意識を浮き彫りにする)という作風がいかにもあの人だったなと。
映画は隊長が主人公でいいんじゃないかってデキでwそこからキャラに興味を持ったので、原作からああした飄々とした態度の人ならこれは嬉しいです。注文入れたので届いたら早速読もうかと。当時の日本を切り取る、というのは旧作SFを読む時に感じる独特の違和感に近いと思いますが、こういうのは、発展したパラレルワールド物、という読み方もできるので楽しいですね。
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というか、気付けばまた長々としたコメント申し訳... (名無し)
2012-03-08 23:09:48
今回も細々と考えていたことがまとまった気がします。ありがとうございます。
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