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感想:『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 6 嘘の価値は真実』

2009年11月23日 21時35分47秒 | 入間人間
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈6〉嘘の価値は真実 (電撃文庫)嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈6〉嘘の価値は真実 (電撃文庫)
価格:¥ 536(税込)
発売日:2008-09-10


これまで、みーくんの一人称によって書かれていたが、本書はシリーズの過去の作品の登場人物たちが登場し、彼らの視点で描かれた章とみーくんの章とが交互に現れる構成となっている。
シリーズ集大成のような構成に、結末をぼかしたエンディング、そして、あとがきの「次回作にご期待ください!」の言葉によって最終巻と思わせる仕掛けになっている。既に7巻以降が発売されていることを知っているため、その機能は発揮されなかったが。

ここでぶち切られると、恐らく不満を延々と書き綴ることになっていただろう。後味の良さをこのシリーズに求めるのは間違っていると自覚してはいるが、それにしても、である。
死者一名については化学室での何かが伏線かと思うが、7巻を読んですっきりしたいという思いに駆られる。それはまんまと著者の術中に嵌っているということだが、ここまで読んできたのだからそれは仕方が無い。

構成にひねりを加えたといえども効果的とは言えず、ストーリーも面白みに欠ける。元々1巻で終わっている話を無理矢理続けているようなものだし、ストーリーの方向性も迷走しているままだ。綺麗な落としどころを期待しようとは思っていない。それでも、この陰鬱な作品を何の希望も無く投げ出されるとやはり落ち付かない気持ちになる。

『このライトノベルがすごい! 2010』では7位と高評価に驚く。「戯言」シリーズとの類似性を指摘されることの多いシリーズだが、キャラクターの魅力ではこちらが勝っているように思う。ストーリーでは太刀打ちできるレベルにないとは思うが。7巻以降に高評価の原因があることを期待しよう。(☆☆)




これまでに読んだ入間人間の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸』(☆☆☆☆☆☆)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん2 善意の指針は悪意』(☆☆)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 3 死の礎は生』(☆☆☆☆)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 4 絆の支柱は欲望』(☆☆)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈5〉欲望の主柱は絆』(判定不能)


感想:『ターン―Turn』

2009年11月23日 21時09分06秒 | 北村薫
ターン―Turnターン―Turn
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:1997-08


「時と人」三部作の二作目。交通事故をきっかけに、繰り返される同じ一日。ただ記憶だけが継続し、他は全てリセットされて引き戻される。
時の牢獄の151日目。電話が鳴る。その奇蹟によって物語は次の段階へと進む。電話によって結ばれた、まだ逢ったことのない二人。

10章立てのうち5、6章を除いて二人称によって語られる物語である。不可思議な話を会話調で巧みに構成した手腕は見事だ。孤独に対して、過剰に思い入れずに物語を展開させるにはこの綱渡りのような描写が必要だったということだろう。
子供の頃から語りかけられていた不思議な声の相手との運命のような出逢い。逢うことは出来なくとも、表現者としての共通点から繰り広げられる感情の交錯は心地良い。

それだけに、この時の牢獄に突然現れた柿崎の存在に強い違和感を覚えた。確かに、「君」がそこを抜け出し、元の世界へと回帰するには何らかのきっかけが必要だった。SF的な手法を取らずにそれを成すには、分かりやすい出来事が必要なのは理解できるが、この安直な仕掛けはこの物語を台無しにしてしまった。
唐突な出現もさることながら、物語の展開に都合の良さばかりが目立つキャラクターで、何のひねりもない。退場の仕方も同様に、伏線も無ければ、いかにも都合良く消え去った。
ただでさえ現実とはかけ離れた物語なのに、こんな展開を持ち込むと、作者の魅力である些細な日常の積み重ねという手法が霞んでしまう。柿崎の登場以前と以後で作品の雰囲気が全く異なってしまったように感じられた。

運命の出逢いのような恋愛主義的な発想自体にかなり辟易していたものの、それでも悪い出来ではなかっただけに、いかに結末へと至るのか非常に楽しみにしていた。それがこのような結果でがっかりした。『スキップ』は結末に違和感を覚えた。本書は結末こそ悪くはないが、そこに至る過程に不満を残した。共にSF的な仕掛けを取り入れているが、それを生かせなかったと感じる。三部作最後の『リセット』がこれまでの懸念を吹き飛ばすような作品であって欲しいと思うが、果たして……。(☆)




これまでに読んだ北村薫の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

空飛ぶ馬』(☆☆☆☆☆)
夜の蝉』(☆☆☆☆☆)
秋の花』(☆☆☆☆☆☆)
六の宮の姫君』(☆☆☆☆☆)
朝霧』(☆☆☆☆☆☆)
スキップ』(☆☆☆)