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感想:『オーデュボンの祈り』

2009年11月11日 19時34分11秒 | 本と雑誌
オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部)オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部)
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2000-12


初、伊坂幸太郎にして、著者のデビュー作。「読者メーター」の読んだ本ランキングでは上位にずらっと彼の作品が並ぶ。現在最も人気のある作家の一人であることは間違いないだろう。

不思議な物語である。

喋るカカシがいる島。そのカカシ、優午は様々なことを知っている。未来までも。
その島は日本が開国したときに封鎖し、島民は一人を除いて島を出ることはなく、島を訪れる者もいない。ただ一人、島と外界とを行き来する男が、相次いで二人の人間を島に連れてきたことから物語は展開する。

主人公はこの島を訪れた二人目の人物である。コンビニ強盗を企み、失敗して警察に逮捕され、護送中にたまたま事故に遭い逃げ出した。そこを救われて島に移送された。正直、このコンビニ強盗の設定は必要だったのか非常に疑問に感じる。
島とそれまでにいた世界との対比が必要だったのは理解できるが、それまでにいた世界である現代日本の描写が、むしろその方がリアリティに欠けるほどで、悪の化身のような城山の存在が果たして意味があったのか。

島の描写はユニークで、それぞれのエピソードに趣が感じられる。優午の死を巡る謎も悪くはない。ただクライマックスへの盛り上がりの乏しさを城山を使って強引に作り出した点にバランスの悪さを感じてしまった。
ユニークさは認めるものの、小説としての面白さにはやや難があるように思った。(☆☆☆)