アリエスは時間に正確である。ミスター時間厳守。
彼は大型犬であるがゆえに胃捻転を起こしやすいらしいから、食事は必ず運動のあと、それも30分ほど休んでから。食後は最低4時間おかないと走らせない。私がアリエスの生理的にOKだと思える範囲で考えると、そんなわけで日常生活動作の時間割は大体定まってしまう。もっとも、走る→食べる→満腹→眠いと決まっていて、食べ終わるとヤツはさっさと寝ている。
眠いながらも私達の動向はうっすらと把握しているようで、消灯の準備を始めるとモゾモゾし、「本格的な寝床」へ移動する。夏なら玄関であり冬なら2階の私の部屋だ。自分が遅れて、アリエスの様子から時間を知ることも多々ある。
そうして夜中、いつも同じ時刻に目を覚まして様子をうかがいにやって来る。1mほどの距離から寝息を調べ、起きているなら私の鼻をペロリとなめる。そこから寝直して、早朝に一緒に起きて走りに出かける。
室内で過ごす間は結構爆睡だ。チラチラ起きるようなら動き足りないと判断して庭で遊ぶ。夕方また同じ時刻にすっきりして体のキレも良くなるので、おもむろに散歩に出る。
今の時間割は、一緒に暮らす中でアリエスと協力して編み出したものであって、「なんとなく夜行性」の彼にはわりと合っているようにみえる。
イヌはヒトに依存して暮らしてるのであるから、それに簡単に思い通りになると勘違いさせないために、時間割はヒトの都合で決めるべきだという意見は承知している。だけど、ヒトに依存せざるを得ないからこそ、そして毎日を控えめに送ってゆく彼を見ていると、できるだけ彼の生きるリズムに合わせてやりたいものだなと思う。家に居たって不平をひとつも言わず、本能と能力を尽くして生を謳歌できるわけでもない。後ろめたさからしつけの境界線を越えてはならないが、できるだけ、ね。
おかげで私はちょっと「犬っぽい」サイクルで生活しているけど、楽しくて仕方がない。1日が生まれて去っていく様子が、アリエスと出会っていなかった頃とは違って見える。彼は日々を大事に生きているけれども、時間のほうも、彼の上をそっと流れていくような気がする。お互い淡々としてベタベタしない関係だが。1日の終わりに、眠りこけている顔を眺めていると、学ぶべきことが見えてくる気がしてならない。
鹿児島でもアリエス時計は健在だった