ホワイトシェパード・アリエスの日々 ≪一雲日記≫

いつまでもどこまでも一緒に歩こう!

いまでも

2022-12-29 | 15〜16歳
アリエスが誕生してまる15年、世を去ってまる4年が経った。生まれた晩のこと、正確には生まれたと直感した夜中のこと、帰天した日のこと、今もありありと思い出せる。この4年の間、家で1日たりともアリエスの名が出ない日はなかった。思い出だけじゃ生きていけないと言うが、生きてこられたよ。大きな欠落は埋まることはなく、アリエスと一緒でない自分への違和感もそのままで、きっと私はこのまま行くんだと思う。欠けたところはアリエスが持っていって、共にあればいいなと思う。自分の死の時には、アリエスが走って迎えに来る。たとえそれが崩壊する脳が見せる最後の幻影なのだとしても、なら尚更、執念でそれを見るんだし。

アリエスの思い出は悲しむものではなくて、今も私にいろいろなことを考えさせる。本当に、学んだことが山ほどあった。毎日断片的に浮かぶ考えを、少しは書いてみようかなと思い立った。アリエスというのは、終わらない自分の一部なのだろう。

アリエスが家に居ることが、じつは少し怖かった。
この美しい生きものの、本来の姿を損なっているのではないかと恐れた。アリエスにとって何が幸せかはわからないが、自分の脚で駆け、狩って、気に入りの場所に棲み、耳をビュンビュンすぎる風や、興味のつきない森の匂いとか、甘くはないだろうが持って生まれた自分でもって生きる…みたいな生き方をさせてはやれない。制約の多いヒト社会の小さな家で、別の宿命を付与することになるのではないか、と。

ブリーダーさんは当時、「犬にとってこれが幸せだと自信をもてないのはダメだ」と語っていた…気がする。そう思えるように過ごせということなのだろうけど、当時はどうにも難しかった。ほかの世界を知らないアリエス、ほかにあったかもしれない幸せを考えないアリエス、今の現実を喜んで受け入れているように見えるアリエス。しつけ問題も相まって、いろんな試行錯誤をした。結局は、そうして悩んだり考えたりし続けることこそ、アリエスの幸せに責任を取ることだと思い至ったのだった。

それと、ヒトのように話しかけたりしていても、アリエスをイヌとしてみくびったことは一度もない。強靭な歯を持ち、猛スピードで走り、眩しいほど光る毛皮を着て、誇り高く吠える生きもの。あふれる生命力にはずっと感嘆していたし、同じ動物として素直に対峙するしかなかった。どんなに近しい家族であってもアリエスはイヌで、イヌとして素敵だったから、ヒトでなくてまったく構わなかった。

ここに姿のないアリエスのことをこうして思うと、犬って動物って生命って地球って宇宙って、自分って人間って…と、考えはあちこち広がってゆく。これはアリエスが私に残した、大切な教養なのだと思う。