今日の考え事〈applemint1104〉

自分の体験やニュース、テレビドラマや映画などについて感じた事を素直に書いて行きます。

仙台市を舞台にした小説

2020-04-07 10:15:44 | 読書感想

ご当地小説、というか宮城県の仙台市を舞台にした小説を取りあげてみます。
「シャングリラ通り」椎名羽津実

これは仙台市の宮町にある古いアパート「シャングリラアパート」に住む蹄一という13歳の男の子が主人公です。
この辺りは昔遊郭などがあった花街通りで、その名残は今はありません。
でも昔の地名があちこちに残っていて、蹄一はこの土地がどんなだったのか興味を引かれます。

蹄一の父親は長期不在で、何をしているか蹄一は知りません。時々来てくれる義母のような人とその娘が唯一の身よりです。
毎日を一人で暮らしています。やがてクラスで虐められ学校にも行かなくなった蹄一は大家の浩司の部屋に居着いて過ごします。
そこで、学校では教わらなかった経済や金融の知識を浩司に教えられます。
近くに住んでいる少女多栄子との友情、宮町の古きを尋ねてやって来た麻子おばさんなど、さまざまな人と出会って、蹄一は少しずつ変わって行きます。

途中冗長で読むのが飽きたりしましたが、面白かったです。

主人公の性格ですが、蹄一は天真爛漫ですがなぜか虚無的です。
思いのままをぶつけて担任の先生が絶句したりします。
「普通の大人になる覚悟のある人しか、勉強は意味がない」とか「将来は仙人になりたい」などと言ってケロリとしています。
醒めてるのに行動が子供というアンバランス。
浩司の不在の時にパソコンをいじって大金を稼ぎ、それをリュックに詰めて他の人の為に役立てようとしたりします。

最後の方で「あーこういう話だったのか」と意味が分かりました。迷走して、行き着く先は割と単純でした。
読んでいる内にキャストが自然に浮かんできました。
担任の先生は吉岡里穂とか、浩司は阿部サダヲ…。(妄想です)登場人物たちがみんな生き生きとしています。

クリスロード、一番町、小田原七丁目公園、旅篭町、花京院ロイヤルホスト、電力ビル。
地元を知る人には懐かしく、こみ上げてくるものがあります。貧乏もいじめも何てことないさ、と気持ちが温かくなる小説でした。