東野 圭吾(著) 文藝春秋(刊)
夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。仕事で訪れた湯川も、その宿に滞在することを決めた。翌朝、もう一人の宿泊客が変死体で見つかった。その男は定年退職した元警視庁の刑事だという。彼はなぜ、この美しい海を誇る町にやって来たのか…。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは―。(「BOOK」データベースより)
恭平と知り合ったことで、彼の伯父が営む旅館に宿をとった湯川が事件に巻き込まれる中で、少年と深く交流することになります。無愛想な湯川になつく恭平の姿を通して湯川という人物の本質が見えてくるようでちょっと微笑ましくもありました。湯川がこの地にやってきたのは海底資源開発事業デスメック側から調査を依頼されたからで、環境保護活動をしている宿の一人娘の成美に警戒されますが、湯川自身は科学的な興味しか持ち合わせていません。ただ、彼女と関わることで小説の舞台である玻璃ヶ浦の海の素晴らしさを理解しますが
旅館の経営者である重治と節子夫婦とその娘の成美の間には過去に重大な秘密があります。
もし、その最初の時点でこの夫婦が本心を打ち明けあうことが出来ていたら、今回の事件は起きなかった筈です。けれど、目の前にある幸せを逃したくない、愛する者を苦しめたくないという強い思いを誰も非難することはできないのです。とても悲しいことではあるけれど・・。
物語は登場人物たちそれぞれの視点で交互に綴られていきます。
『容疑者Xの献身』の後のお話のようで、謎解きの結末も共通点がありました。
一酸化炭素中毒という死因に対するトリックについては物理的な専門性は見られませんでしたが、恭平と行う「自由研究」で楽しめるからいっか
今回の被害者については「砂の器」を連想させます。自分の贖罪のために開けてはならなかった扉を開けようとしたことが事件の発端であり、独りよがりの好意がさらなる悲劇を生んでしまったからです。
結局当事者たちは真相に気付いても確かめるのが恐くて前に進めず、湯川や草薙、内海たちも公にせずに胸に秘めることになります。真実を明らかにすることが必ずしも幸福に繋がらないという着地点には少し疑問も残りますが、湯川が恭平へ示した未来へのアドバイスが良かったので良しとしようかな。
『今回のことで君が何らかの答えを出せる日まで、私は君と一緒に同じ問題を抱え、悩み続けよう。忘れないでほしい。君は一人ぽっちじゃない。』(文中より)
夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。仕事で訪れた湯川も、その宿に滞在することを決めた。翌朝、もう一人の宿泊客が変死体で見つかった。その男は定年退職した元警視庁の刑事だという。彼はなぜ、この美しい海を誇る町にやって来たのか…。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは―。(「BOOK」データベースより)
恭平と知り合ったことで、彼の伯父が営む旅館に宿をとった湯川が事件に巻き込まれる中で、少年と深く交流することになります。無愛想な湯川になつく恭平の姿を通して湯川という人物の本質が見えてくるようでちょっと微笑ましくもありました。湯川がこの地にやってきたのは海底資源開発事業デスメック側から調査を依頼されたからで、環境保護活動をしている宿の一人娘の成美に警戒されますが、湯川自身は科学的な興味しか持ち合わせていません。ただ、彼女と関わることで小説の舞台である玻璃ヶ浦の海の素晴らしさを理解しますが
旅館の経営者である重治と節子夫婦とその娘の成美の間には過去に重大な秘密があります。
もし、その最初の時点でこの夫婦が本心を打ち明けあうことが出来ていたら、今回の事件は起きなかった筈です。けれど、目の前にある幸せを逃したくない、愛する者を苦しめたくないという強い思いを誰も非難することはできないのです。とても悲しいことではあるけれど・・。
物語は登場人物たちそれぞれの視点で交互に綴られていきます。
『容疑者Xの献身』の後のお話のようで、謎解きの結末も共通点がありました。
一酸化炭素中毒という死因に対するトリックについては物理的な専門性は見られませんでしたが、恭平と行う「自由研究」で楽しめるからいっか
今回の被害者については「砂の器」を連想させます。自分の贖罪のために開けてはならなかった扉を開けようとしたことが事件の発端であり、独りよがりの好意がさらなる悲劇を生んでしまったからです。
結局当事者たちは真相に気付いても確かめるのが恐くて前に進めず、湯川や草薙、内海たちも公にせずに胸に秘めることになります。真実を明らかにすることが必ずしも幸福に繋がらないという着地点には少し疑問も残りますが、湯川が恭平へ示した未来へのアドバイスが良かったので良しとしようかな。
『今回のことで君が何らかの答えを出せる日まで、私は君と一緒に同じ問題を抱え、悩み続けよう。忘れないでほしい。君は一人ぽっちじゃない。』(文中より)