杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

横道世之介

2014年04月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年2月23日公開 160分

長崎県の港町で生まれ育った横道世之介(高良健吾)は、大学に進むために東京へと向かう。周囲の人間を引き付ける魅力を持ち、頼まれたことは何でも引き受けてしまう性格である世之介は、祥子(吉高由里子)から一方的に好かれてしまう。しかし彼は、年上で魅力的な千春(伊藤歩)にぞっこんで……。(シネマトゥデイ)


吉田修一が毎日新聞で連載していた作品の映画化だそうです。

平凡な一人の大学生とその友人たちの他愛もない青春ストーリーが淡々と語られていくのですが、何故か過去形。そして時間がエピソード毎に前後している。あれ?何か変。そう思った頃に明かされる主人公の死。
あぁ、そういうことだったのかと納得。そして改めて主人公の周囲に与えた影響力というか、そのほんわか温かな人柄を偲ぶことになるのです。

世之介の住むマンションの隣人はいるのかいないのかわからないけど毎日目覚ましが鳴ります。そのまた隣の住人と目が合い、シチューを振舞われたり(おそらくお愛想で言った誘い言葉に素直に乗っちゃった感じ)、入学式で隣に座った倉持君(池松壮亮)がそのまま友人になったり、講義が一緒の阿久津唯ちゃん(朝倉あき)と三人で成り行きでサンバクラブに入ったり、そのうち彼らができちゃったりなんかゆるゆるだけど、青春してるな~ってエピソードが重なっていくのが妙に和みます。

Wデートで知り合った祥子ちゃんのキャラはかなり強烈。世間知らずのお嬢様の図太さ・強引さを、おっとりした上品で可愛らしい口調がカバーしてどこかユーモラス世之介がそんな彼女に押されながらも次第に受け入れていく感じも自然でした。何気ない話の流れから夏休みに世之介の田舎に押しかけてきた祥子は彼の両親にも気に入られます。おっとりとした祥子ですが、世之介の元カノ(黒川芽以)の存在にはやっぱりナーバスになるあたりは、やっぱり普通の女の子よね~と何故か安心したりして

地方出身の大学生とくればバイトは必須科目サークルの先輩に誘われたバイト先で世之介は謎の美女・千春に惹かれます。だからといって積極的にアタックするわけでもないのだけどね講義で同席した加藤(綾野剛)を無理やり飯に誘って恋愛悩み相談をぶったことがきっかけで彼とも友人となり、自動車教習所に二人で通うことに。加藤がゲイを告白してもあっさりと受け流す世之介です加藤にとっては「あ、こいつとは本当の友人付き合いができるな」と感じた瞬間でしょう

唯が妊娠し、倉持は中退して働くことにします。困った時にさり気なく助けてくれる世之介のその笑顔が眩しいね

祥子の両親に紹介されたあたりから、世之介の彼女への想いも深まっていきます。バレンタインのチョコが彼の郵便受けに間違って入っていたことから隣人が写真家であることを知り交流が生まれます。彼からライカのカメラを借りた世之介が撮った写真には、出産した唯の赤ちゃんや祥子、町で出会った人やものたちが写っていました。

一件洗練された都会人に見える千春ですが、彼女も地方出身者であることが母親の出現で明かされます。背伸びしている彼女の姿が垣間見えるエピソードです。世之介の死を知ることになった一枚の原稿を前にした彼女の胸に去来したものは何だったのかな?

物語は世之介の学生時代と友人たちの現在が交互に描かれています。「良い奴だった。面白い奴だった。」彼らが世之介のことを思い出す時、一様に笑顔になるのが印象的でした。

特別に派手なエピソードも胸躍る恋愛模様も無いのに、なぜか心に響く切なさと愛しさのある作品です。

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