杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ふがいない僕は空を見た

2015年08月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年11月17日公開 142分

高校生の斉藤卓巳(永山絢斗)は、助産院を営む母子家庭のひとり息子。友人に誘われて行ったアニメの同人誌販売イベントで、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・岡本里美(田畑智子)にナンパされる。里美は卓巳を自宅に招き、大好きなアニメキャラクターのコスプレをさせて情事に至る。以降、里美が用意した台本通りにセリフを言いながらコスプレセックスをすることが日常的になっていた。だがある日、卓巳は同級生の松永七菜(田中美晴)に告白され、里美との関係を断つことを決心する……。里美は、元いじめられっこ同士で結婚した夫・慶一郎(山中崇)と二人暮らし。執拗に子作りを求める姑・マチコ(銀粉蝶)からは不妊治療や体外受精を強要され、マザコンの夫は頼りにならず、卓巳との関係だけが心の拠り所だった。しかし二人の関係を夫と姑に知られてしまい、里美は土下座して離婚を懇願するが受け入れられず、代理母を捜すためにアメリカに行くことが決定する……。卓巳の親友・福田良太(窪田正孝)は、団地での極貧の生活に耐えながらコンビニでバイト中。店長の有坂(山本浩司)からは“団地の住民たち”と蔑まれ、共に暮らしている痴呆症の祖母は辺りを徘徊、新しい男と暮らしている母親には消費者金融の督促が後を絶たない。だがバイト先の先輩で元予備校教師の田岡良文(三浦貴大)が「団地から脱する武器を準備しろ」と勉強を教えてくれるようになる。痴呆が進んだ福田の祖母を父親の病院に入院させる田岡だったが、彼もまた心の闇を抱えていた……。福田と同じ団地に住むあくつ純子(小篠恵奈)は、アニメ好きの姉が見つけたという写真のプリントアウトを七菜に見せる。それはコスプレした卓巳の写真だった。卓巳と里美がセックスしている写真と動画がネットでばらまかれていたのだ。学校でも瞬く間に写真が出回り、卓巳は家に引きこもってしまう。学校に来なくなった卓巳の家庭訪問に斉藤助産院を訪ねた担任の野村(藤原よしこ)を見て、卓巳の母・寿美子(原田美枝子)はお腹に子供がいることを見抜く。妊娠したことを誰にも言っていないという野村だったが、寿美子の助手・長田光代(梶原阿貴)の協力で野村の結婚が正式に決まる。そんなある日、寿美子が夜の神社を訪れると、そこには涙に濡れた卓巳がいた。息子の横で、目を閉じて手を合わせる寿美子。そして「生きててね。あんたも命のひとつなんだから、生きて、そこにいて」と卓巳に呟くのだった……。(Movie Walkerより)


窪田君出演作発掘シリーズです
R18指定でしたが、それほど過激な描写でもなくて良かった~~彼はこの映画でヨコハマ映画祭の最優秀新人賞を受賞したのだとか。さもありなんという演技でした。

初めは卓己の視点なのですが、徐々に里美、そして良太に移っていきます。

母親が男をつくって出て行き、残された良太は痴呆症の祖母の面倒をみながら、新聞配達やコンビニのバイトで生活費を稼いで暮らしてます。それなのに、たまに帰ってきたと思えば、なけなしの生活費まで持っていってしまう母親に、「なんで俺を産んだの?」「いらなかったんでしょ」「堕ろせばよかったのに」とドア越しに言うシーンは本当に切なかったです。

廃棄弁当を捨てるシーン、一つ一つ匂いをかぎながら陳列棚にお弁当を並べるシーン、レジ前の一個10円のチロルチョコをなけなしの小銭で買って空腹をごまかすシーン、そして卓巳が持ってくる彼の母の手作り弁当には施しを受けないぞとばかり手を付けなかった良太が、遂に空腹に耐えかねてガツガツと口にするシーンなど、彼の矜持と現実の飢えに耐え兼ねる姿には、胸に迫るものがありました。

店長の財布に手を出そうとした良太を止めたバイトの先輩で元予備校教師で病院の息子の田岡(三浦貴大)が、このまま一生団地で暮らしていくつもりじゃないなら(=貧しさから抜け出したいなら)武器(勉強して大学進学すること)を準備しろとアドバイスし、勉強を教えてくれるようになって、良太は未来への小さな光を見出します。痴呆の進んだ祖母を彼の父親の病院に入院させてくれるなど面倒をみてくれる田岡に、「どうして俺なんかを助けてくれるの?」と問う良太に対して、田岡は「俺は悪い奴だから、(良太を助けることで)バランスを取らなきゃいけないんだ」みたいなことを言うのですが、後日田岡が男児への猥褻容疑で捕まったことと関連していて・・・ここにも人間の裏表が描かれていました。

良太自身も矛盾した思いを内包しています。卓己は親友ですが、コスプレ不倫の中傷ビラを同じ団地の女子生徒と一緒に嬉々としてばらまいたかと思えば、卓巳をバカにするクラスメイトを殴ったりします。騒動で家に引き籠ってしまった卓巳に投げつけた「自分だけが不幸なふりしてんじゃねえよ」との言葉は、そのまま彼自身の気持ちだね。そして卓己が再び学校へ行こうと決めたのも、良太や母親の「生きててね。あんたも命のひとつなんだから、生きて、そこにいて」という思いを受け止めることができるようになったからかな。そんな卓己を護るようにくっついて歩く良太のさりげない優しさがまたでした。

って・・・思いっきり良太目線の感想になってしまった。

本筋?の卓己君は友人(良太じゃないのね)に誘われて行ったイベント会場でアニメ好きの主婦・ 里美(田畑 智子)にナンパされコスプレ情事にはまります。彼女は元苛められっ子で同じ境遇だった夫との結婚しますが、姑の子作り催促の重圧とマザコン夫に息詰まっていて、卓己との情事に逃げているの。アニメキャラの名前をとって「あんず」(おいおい)と名乗るイタイ女に同情の余地はあっても共感はできないなぁ。卓己自身は同級生に告られたことであんずとの仲を清算しようとしますが、何だかズルズルと関係を続けるうち、彼女の夫や姑に知られることとなり、ネットに上げられた動画や画像により例の誹謗中傷に曝されることとなるのです。この夫もなかなか嫌らしい性格だわ離婚を申し出た彼女に応じず、「アメリカで代理出産」を迫る姑。彼女がそれを受け入れたのは夫への愛情というより卓己との関係を清算するためだったのかなぁ。

卓己の担任教師の野村は、妊娠を相手に告げられずに悩んでいたのを卓己の母の助手・光代の協力で結婚にこぎつけるのですが、このエピソードを挟んだ意味はよくわからなかったかも

とにかく、一人一人は「ふがいない」弱さを持った人物なのですが、ちょっとしたきっかけで前に進む勇気というか光を見出す姿に、作り手のメッセージを感じました

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