月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

メープルシロップと小夏。あるいはパッションフルーツも。

2014-05-29 00:02:11 | 春夏秋冬の風







今朝。起きたときから、あ、何かが変わったと思った。
窓の外があきらかに違っていた。
それは、ジージーという虫の歓声とも気配とも、とれる音が
自然と耳に入ってきたので、すぐそれだとわかった。耳を澄まさなくても、入ってくるというのは幸福だ。

朝からホトトギスが鳴いている。

(夏は生き物たちの気配が空気の中に満ちている。
そして、コオロギが鳴き止む頃、気配はだんだんと消えていく)

あーーそうか、もう夏が来たのだ。
ついに夏。カレンダーも、そろそろ約半分、折り返すのだね。
そんな想いが一抹の焦りのなかでじわじわと、こみ上げてきた。


きっと実家の裏にある青田では、にぎやかに、カエルが鳴いていることだろう…。

昼間。郵便局へ請求書の類を出しにいった時の日差しは、それはもう確実に夏のものだった。
帰って、すぐに小夏を食べなければ。そう思うと同時に小夏の黄色くてまんまるのフォルムが、目に浮かんできた。
小夏は酸っぱくて苦いフルーツである。そしてとても夏が似合う。

冷蔵庫からカナダ産メープルシロップを取り出して、上からたっぷりとかけて、ちょっと良い感じの器に盛って食べた。

おいし!生き返るよう。この苦みと、ほどよい甘み。
小さな苦い酸っぱい果実がギュッと身を寄せ合っていて、ぼんやりとした蜜がそのまわりを取りまいている感じが、なんだかとても好きだ。
いいなーこういう味。
苦いのに、酸っぱいのに、ほろ甘いのだから。

最近、メープルシロップに少しはまっていて、ヨーグルトとかバタートーストとか、
なんでもこれを掛けては、愉しんでいる。


そういえば、先週の日曜日に種子島のおみやげで買ってきてもらった「パッションフルーツ」も
面白い味だったなーー。

包丁で半分にすると、小さな黄色い花が咲き乱れている。プチプチッとした種を噛むと、南国のゼリーとともに酸っぱい果肉が
ピューと口の中で弾ける。それを舌でみつけては噛むと、これまた酸っぱさがひとしお。そして弾ける。いくらでもプチプチと酸味が勢いよく飛ぶ、口中に風がわたる。甘みはほんの少し。
これが熟してくると、南国らしさ全開!!ゼリー感と甘みがきつくなる。
フルーツというよりも植物みたい。ホントに変なフルーツだ。
でも紛れもなくパッションフルーツの香りだった。香りのフルーツなんだな、これは。
こんなに食べるとこ少ないのに、ビタミンCの塊のようである!


そうだ、そういえば月曜日の朝は熊本産の赤肉メロンも食べたんだった。
5月はフレッシュで甘く、ねっとりとした熱帯果実のタイ産マンゴーも。
ああ熱帯の国に行って、手をべたべたにしてかぶりつきたいなーー。

これから、どんどんフルーツの美味しい季節がやってくる。

そのたびに、どんどん夏が近づいてくるのだ。