月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

幻想的な山代温泉の夜。夕食のあとは「有栖川山荘」へ

2013-09-23 23:08:27 | どこかへ行きたい(日本)



昨日のお彼岸は、恒例のお墓参りにいってきた。

落ち葉が掃いても掃いても一掃できない。見上げたら隣の敷地にある桜の大木(古木)が、天高く、大きな傘を広げていた。そうだった。
桜なら風情あるし、そのままでいい…。
ヒマラヤ杉にはまだセミがいるようだ。
山からの風。照りつける陽射しは強いけれど、(秋の体育祭の時の暑さだ)時折ヒヤリと秋の空気。
八鹿の「高照寺」は萩が満開だった。




「よいお彼岸になりましたね~。ほんまにねぇ」地元の人に声をかけあい、寺を後にする。
実家でおはぎも頂きました。



さて、先日の続き。山代温泉に時を戻そう!
お風呂の後の夕食は7時から。
仲居さんが、部屋まで1品1品丁重に食事を届けてくれる。
ありがたや。

食前酒は地元の銘酒をにごり酒で。乾杯だ!



一品目は、野菜や海鮮の珍味。3種。



甘海老や鯛、イカなどの造り盛り合わせ。塩とお醤油、好きなほうでいただく。



海老芋のすり流しと、タケノコの吸い物。




おかしら付きの鯛の蒸し物。






野菜と海藻の煮物。(料理写真なし)
八寸と、和牛ミニステーキ(料理写真なし)
天ぷらの盛り合わせ、(料理写真なし)
焼カニ(炭火焼)







タコの天ぷらに、ごはんと汁もの。お漬物。





寒ぶりのお茶漬け



アイスクリームとカボチャのプリン、フルーツのデザート。




濃い味付けはなく、おだしのひき方も加減よし。
決して華美すぎず、素材本位のお料理でたいへん美味しかった。
大型ホテルにありがちな既成の品はなく、熱きものは熱きうちに、
仲居さんがしつらえてくれた心遣いがうれしい。
あの人は結局、何往復されたのだろうか。
調理場からリフトで運ばれてきた料理を、「すいませんね~。お待たせしてしまって」と笑顔を添えて、届けてくれた。

「各階3室。少ないですか?これがうちで接待する限界です」と、
おっしゃった意味が後になってよくわかる。
母は気前よくチップを弾ませていた。(接客の女中さんと話せたことが、よほど懐かしかったのだろう)

特筆すべくは、やはり器である。
九谷焼は、彩がきれい。かたちも愛らしいものが多かった。
それに、魯山人の写しが何品か登場。
お料理が登場するたびに器を愛で、
それから口に運べることに無上の喜びを得た。
山中塗も素晴らしかった。今回気になったのが黒の塗りだ。柔らかい表情をした黒、に感動する。
結局、地元の純米酒ばかり3種、いただいた。
満足、満腹である。

それで、「源泉閣」というお風呂に、10分だけ浸かりに行って、




衣を着替えて、気分を入れ直し、
「有栖川山荘」(バー)へと、娘のNと母を伴って出掛けることに。

山庭への渡り廊下をどんどん、どんどん。浴衣とスリッパで歩くこと10分近く。
どこまで行くんだろうと思っていると、
ようやく木造造りの一軒家に。
幻想的な提灯だけの、雰囲気は格別!幽玄なる陰の世界~。




良いなぁ。好きだな、こういうの。
バーといっても、樹齢数百年の木々に囲まれた古い日本家屋だった。
玄関のたたきにチョコンと腰掛け、スリッパを揃えて上がると、2間の部屋へと続く。
奥は団体専用。縁側もあった。



手前は、ほりごたつのように足を放り出して座る、コの字型の小さなバー。8人も座ればいっぱいで。

私は赤ワインを2杯(少し高いやつ)Nと母はグレープジュースを飲んでいた。

ちょっぴり驚いたのは、バーテンダーのおにいさん。
黒光りするほど脂をぬって、キメているのに、ナント加賀温泉駅から送迎してくれた番頭さんではないか(最初はわからなかった)。
どうりでな番頭さんにしては、明るさのない笑い方で無口だなぁと思っていたのだ。ものすごく照れくさそうだった。





11時半には、部屋に戻る。さて、もう一度だけお湯に浸かり、就寝としよう。
真夜中からの湯浴みも幻想的、
「烏湯」は誰もいないので、少し怖くなって源泉閣に入り直す。




この宿は闇の淵が黒々として深いように思う。瞳を閉じればなんだか吸い込まれそうな春の闇。春の風。
小動物でも降りてきそうな山の崖がある。

風呂から上がったら、母と娘のNはすでに寝ていた。
それで、窓下に備えられたミニ書斎にあった魯山人の著書(写真集等)を2冊、終わりまで目を通して寝た。
2時前だった。


(つづく)

(1に戻って読む)