月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

昨日ノコナユキとセンター試験の雑感

2013-01-28 23:03:33 | 今日もいい一日


昨晩の8時10分、最寄り駅まで車で迎えに行き、それから一緒にごはんを食べていると、
「うわっ、外」と隣で悲鳴があがった。

急いでベランダへ飛び出していった娘が、
空を見あげて叫んでいる。
みると、猛吹雪。荒れ天気。音のない迫力の画像というのをみせつけられ、私は思わず口をあける。
灰色の空から、雪が斜めに突き刺さるようにものすごい勢いで降っていた。

ちょうど、ふたりしてビフォーアフターの心地よいナレーションを聞いて、
「よかったね、90才のおばあちゃん」と平和極まりのないテレビ画面を見ている団欒の最中だったので、
家の中と外のギャップに我が目を疑い、驚いて外へ飛び出していた。

考えてみれば、1月だから当然なのである。そう思い直し、お喋りにこうじているうちに、
15分で雪は止んだ。

ふだんと変わらない、灰色の夜に浮かび上がる山々の稜線が
墨絵のごとく横たわっている。

再び視線を外へ移した時には、またブリザード。

昨日の夜はそんなふうに、静寂とブリザードを繰り返し、空気をしだいにキーンと凍らせながら
朝を迎えたのだと思う。

だから今朝の一面の雪景色は、想像どおりなのだった。

そう、想像はしていたけれど、やっぱり雪は素敵だ。
清潔で冷たくて、サラサラで、きれいに降ってくれていて本当によかった。
山々も道路も屋根の上も、白い。
冷凍庫の中のような透明感のある空気にふれたくて、
ブーツの裏側から粉雪にふれるのがうれしくて、4回もゴミ置き場を往復する。

雪は悲しみも悩みも、苛立ちも
白の世界で凍らせてくれる、セラピーのようである。


そう、この前からセンター試験のことを綴っていたのでした。

2日目は、伊勢弾丸ツアーの翌日である。

私はこの日、地域の「お餅つき大会」に出席し、近隣のおばさまたちに交じって、
さしておもしろくもない話に耳を傾けながら、壁にかけられた丸い時計をにらみつけ、
落ち着かない時間をずっと過ごしていたように思う。

そうして、お昼ごはんのあとで、家の近くのお不動産さんと地蔵尊に参拝。
そこまでは良かったのだが、
山のふもとに建つ寺院だから、車がぬかるみにはまり込んで急いでハンドルを左右に切ったら、
錆びた緑色の金網があってガリガリと車体をこすってしまった。死界で見えてなかった。ショックである。

なので、参拝もそこそこにおとなしく帰り、
仕事の続きの校正作業などをこなして、夜を迎えた。


その晩の、娘の開口一番はこうだった。
「終わったな、すべてが。ママ。数学、激むずやったわ」

数学の苦手な彼女にしては、ここに時間をかけすぎた1年だっただけに、
かける言葉もみつからない。

「数1数A、過去問では9割台を何度か出したのにね」
「数2数Bで挽回しようと思ったけど、よけい慌てたかも、簡単じゃあなかった」

あとで周囲に聞くと、国語もかなり難問だったという。

ひとまずお疲れ様です。よくやりました!

そこで私、なんと翌日、
難問といわれた「現代文」を彼女に目の前で解くように指示されたのでした。
平均点は、全国的には200満点中98点(平年は115点くらい)だから、
半分とれるくらいかなと思ってチャレンジ。

結果はどうでしょうか。
必至の形相で問いている私に、主人は
「おいおい、何してるの。無理なことをさせないように。無理だから」と止められる始末で。

さて結果は6割半!でした。

あと10分あればもう少しいったでしょう…、おそらく。
久々にまわりくどい文章に二度も寝そうになりながら、それでも最後は必死でした。

現代文は、小林秀雄の評論と牧野信一の小説「地球儀」の2題だ。

設問を読んでは、何度も本文に立ち返らねば解けないだけに、
1題20分で解くというところが難しいのだと思う。

センター試験は、選択肢も多く、加えて明らかに筆者の小林秀雄よりも
正論で訴えてくる選択肢が多いこと。

さあ、ここでひっかけよう!
迷ってくれよ、さあどうだい!と挑戦的な触発、
作成者の策略が巧みすぎるくらいにつたわってくるから
私などはあやしいと疑ってみるけれど、
受験会場でしかも短時間で回答しようと焦る受験生には冷静に判断するには、難しいのかもしれない。

最後にきて、主題やテーマを問う、読解の総仕上げ問題がガツンときてトドメだ。

古文も塾の先生が手をやくような設問形式もあり、
良問ばかり解いていた受験生には手荒な内容だったようだ。

大学は論文を読み書きするのが常だから、
これくらい出来ないと入学後が大変になるよ、というハードルなんだろうな。


ともあれ、彼女のセンターはこれにてひとまず終了。

ホッとする間もなく、次なるステップにすでにコマを進めているようである。

翌日の新聞に掲載された
河合塾のコピーには

「自分の夢まで自己採点しないでください」。

泣ける広告であった。じんわり来た。
諦めるな、受験生よ!最後までガンバレ!