![]() | 凍河 |
クリエーター情報なし | |
平凡社 |
1974年~1975年に朝日新聞に掲載の小説。
精神病院が舞台。
当時のままでは合わなくなった精神医療の部分については加筆された改定版2008年発行の物を読んだ。
モラルがきちんとしていて古き良き時代の匂いがした。
今の若い人の目からみると随分異質であるかもしれない。
ワルにも性の扱いにも一本筋がちゃんと通っていている。
30年でこんなにも価値観は変わってゆくのかと感慨深い。
差別観や自由を語るに作者の、少し青臭い力みもみえる。
大河の一滴の五木寛之氏の原点か?
凍りついた大河の下には見えないけれど水が流れていて、
いつか堅い氷も解ける
という意味で付いた題名らしい。
飲酒バイク運転もそう取り締まり罰則も厳しくなかった時代。
飲酒運転シーンを削ってはストーリーにならないからそのままだっし、
当時には今のように少量で副作用の少ない抗精神薬もなかっただろうし、
今とは精神治療法も違っていただろうし、詳しくはわからないけれど
精神分裂症を統合失調症と言い換えても、
加筆部分が逆に違和感を覚えるような?いっそそのままでも良かったような気もした。
たまたま若い青年医師を手玉にとる境界性パーソナリティ障害の女性の話など聞いたばかりだったので、
主人公の新米精神科医が惹かれる女性はその手の病気なんだろうかという興味も手伝って、ページを急いだ。
ここにもチラっと731部隊の影が出てきた。
森村誠一氏は虚構に使うにはあまりに重たい事実として、マルタの手記を書いたあれ。
目の前にいる善人以外のなにものでもない人と戦争が為せた惨忍さとのギャップ。
戦後生まれての我ら世代までが親世代の戦争体験を聞いて育った。
付け焼刃の民主主義で世の中が変わりつつあり、戦前の価値観の変革に戸惑う親の考え方の矛盾に
必死で抵抗していた時代であったのかもしれない。
シラケ世代と言われた我らが今の若者よりうんと熱かった事を思い出させてくれた。
わが子をみていると、たしかに無理をしない。
なんでもすることに真っ向から反対する親の姿もない。
その子たちが親になるこれから30年後、どんな御世がやってくる?
その頃、私はかろうじて生きているかな?どうかな?
世間に生きにくい少数派は正しくないのか?
精神病院の内と外と何をもって狂気というのか?
今のも通じる提言がちゃんと書かれていた。
最初にドキドキして読んだのは『青春の門』だった気がする。
それは、この小説に出てくる世間知らずの大人をハラハラさせるナツキくらいの歳だった。
昔の作品の方がうんと好き。
ちょっと時代をワープしたかも?




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