陽だまりのねごと

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暴走老人  藤原 智美著

2008-06-26 06:19:30 | 
暴走老人!
藤原 智美
文藝春秋

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姑の鼠蹊ヘルニアの手術を待ちながら、
終了後はゆっくり麻酔がとけてゆく側で読んだ。

表紙いっぱいに『暴走老人』とでかでかとタイトルが目立ち
老人のつきそいにははなはだマズイ雰囲気を醸し出していたけれど
たまたま図書館の貸し出し期限が近づいており
バックにひそませるにちょうど良い文庫本の用意もなかったから
ままよと持って行った。
活字さえあれば、時間つぶしは苦にならない。

姑への感情移入がやっぱり薄いのだ。
手術は全身麻酔で5センチ程度切って
筋肉が弱って腹腔が出張ってしまった部分メッシュの人工物を入れると
執刀医で担当医から説明があった。

前日に長いむつかしい手術をこなした後と聞いていたけど
若い医師は疲れもみせず丁寧で親切な説明ぶりだった。
かつての老年医師のような患者見下した態度は見えない。
言葉を選んでわかりやすく噛み砕いての術前説明。
何度も何度もおんなじ話をしているんだろうと推測するが
客商売に徹している。

親切丁寧ではあるけれど、手術に関してだけで病気のことへ説明はもうない。
鼠蹊ヘルニアには内から出てくるものと外から出てくるものがあると言う
内から出てくるものの袋の中には腸がはみ出ているものもあると言われ、
てっきり脱腸といわれるからはみ出しは腸であると思いこんでいた私は
頭の中が???になってしまった。

手術直前であり
医師は前日の長時間手術の話も聞いており
おだやかに質問はないかと聞かれたけど
後でネットで調べようと、
『よろしくお願いします』と辞した。

姑に至っては自分の体がどういじられるか
皆目分かっているようには見えなかった。

分からないけど型どおり
本人、家族の同意書へサインと押印。
ナースが書類を術前に病床へ取りに来た。


『暴走老人』はどこに行っても
まごころと笑顔のマニュアル接客は過去になかったことにも触れていた。

著者は成熟して丸くなるはずの老年期の犯罪が多いのに注目。
原因を『時間』『空間』『感情』にわけて考察してあった。

時間はかつてないほど進歩が速く中年期の私も少々ギブアップ。
どこ向いてもケイタイ画面を眺めている人間が居て
耳からコードを垂らしてお一人様の音の世界に酔っている人はかつていなかった。
高齢者の理解を超えているのだ。

マニュアルどおりで感情を覆いかくして
絶えずにこにこして本心がどこにあるのか見せない接客風景が
日常になってからの時間も考えたらそう長くない。

介護は社会のものとなり家より個を重要視する風潮で
大きな家にひとり。あるいは狭いアパートにひとりの高齢者が増えている。
家を支えて家長に仕えて、
自分が支えてもらう立場になったら回りは知らん顔。

ぷっつんは若者でなく老人に多いと作家である著者は言う。

にこにこまごころ接客は
アスペルガーである息子も強いられて悩んでいた。
『客を心から尊敬しろと言うのは無理だ』と言い
気持ち悪いおかしくもないのに笑う練習を鏡に向かってやっていた。
アスペルガーほど額面とおりにとらえない定型発達人も
『お客様は神様接客』がストレスフルであることには間違いない。


病院はいつから患者を『○○さま』と呼ぶようになり
診察券を機械に入れたり、あっちで診察料、
こっちでもらう薬が書かれた紙もらい
あげくに遠く薬局へ出向いてやっと薬がもらえる。
いつから複雑怪奇なシステムになったのかな?
しかも微妙に各病院でそれが違うのだ。

世に中蔓延する暗黙の了解システムでスムースに流れている事が
スタバやスーパーのレジを例に取って書かれていた。
客もベルトコンベアーの流れに乗ってグズグズ出来ないと言うのだ。


保険証と言っても健康保険証、介護保険証、そして今回、後期医療保険受給者証。
年金から介護保険料が引き去られ、今度は医療保険が引き去られ
なんでこんな領収ハガキがきているのと
ケアマネとして訪問した時に
年度変わりでどっと各役所の担当から届いていて
何が何だか分からない独居の人から説明を求められた。
ねんきん特別便に正しく返答出来る人が何パーセントあるだろう。

親切ごかしてやってくる悪徳業者が後を絶たないのも
こんな不安感や孤独感にうまくつけいられるのかもしれない。

『暴走老人』は老人だけの問題ではなく、
現代社会のひずみでもあると著者の切り口は鋭い。

鼠蹊ヘルニアをネットで調べたら、最近は日帰り手術でも可能になっている。
そんなことを姑は誰かから聞きかじって、
最初、日帰りで手術だと言っていたのかもしれない。

麻酔が溶けたらお腹が空いたと言い、夕食は完食。
2月に心筋梗塞で入院病院は違う初めて入院している病院である認識がなく
いつも出る食事と違うとさかんに言っていた。
見舞に来た昨年11月から無職と何度も話ている息子に
『仕事は済んだの?』とたずねていた。

認知症のはじまりなのか?
世の流れについていけない現象か?

病院へ寄って姑の様子を見てから、
キレやすいしPCは皆目わからない初老のオーナーの
隣のデスクのPCの前に座りに行こう。
介護疲れで電話口でキレていた家族へ面談の約束も今日入っていたっけ。





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