研究が上手な研究者では全くありませんが、研究者として仕事をしているからには、少しでも意義のある研究ができるようになるよう、若いころから模索、苦闘を重ねてきました。
JR東日本構造技術センターでの経験や、2003年10月に横浜国大に赴任した後のJR東日本等との共同研究、2009年3月に出会った山口県のひび割れ抑制システム(その後、品質確保システム)等が大きな契機となり、実構造物を題材とした研究を少しずつできるようになってきました。
実構造物を題材に研究することの醍醐味は、検証が高いレベルで行われることです。維持管理に関する研究であれば、室内での実験と実構造物では結果が全く異なることも少なくありません。また、ひび割れ等のシミュレーションの場合も、実構造物が対象であればシミュレーションのモデル化も当然に高度になりますが、検証からも非常に多くのことを学びます。要因も増えるし、実構造物の品質向上にフィードバックしようと真剣に志すと、検討項目も増えます。
現在、力を入れて研究しているテーマの一つに、高耐久床版のひび割れがあり、高炉セメントを活用したRC床版のひび割れ防止・抑制について数値シミュレーションを駆使して研究しています。
すでに、新気仙大橋で研究を行いましたが、大型の連続鋼箱桁の橋梁としては2橋目の小佐野高架橋(釜石)でも大々的に研究を行っています。私の親友の東北地整の手間本監督官が監督している橋梁です。
実際の橋梁に使用されるコンクリートで、ひび割れに関連するコンクリートの物性を事前に実験で計測し、その結果も活用してシミュレーションを行います。小佐野高架橋に使われるコンクリートを使っての試験体の作製が9/18に予定されています。実構造物の床版の打込みは、来年の3月ごろの予定です。この実験メニューの策定も私が行って、実験を実施するコンサルタントと私が打ち合わせし、手間本監督官に承認していただく、という流れです。数百万円かかる実験ですが、実構造物で検証されるので非常に貴重ですし、やりがい・責任も大きいです。ですが、実験の費用は国交省から支払われることになります。
大学で研究者として活動を始めてもうすぐ14年になりますが、当初の夢であった、実構造物を対象に研究を行う、という点では少しずつですが現実になってきています。国交省の費用で実験を行い、実構造物で検証も行える、というような30代前半のころから思えば夢のような状況にあると言っても過言ではありません。まだまだ勉強の段階ですが、少しでも実構造物の品質・耐久性向上に貢献できることを念頭に勉強を重ねたいと思っています。
品質・耐久性確保の研究では、トンネルも私の役割が大きい対象で、トンネルについてもアンテナを高く張って、持ち前の行動力を最大限に発揮して、研究テーマを開拓していくつもりですが、こちらは同志を増やし、後輩を育てていく役割も大きいと自覚しています。
全国の地方整備局で品質確保の試行工事が行われることになりました。8/29-30と九州地方整備局での研修の講師として参加しましたが、3年連続で8月の研修に参加してきましたが(九州大学の佐川先生コーディネート)、いよいよ試行工事も始まるので、九州でも魅力的な取組みになるよう、私も役割を果たしたいと思います。
9/11~13が土木学会の全国大会@九州大学、ですが、9/12は宮崎の日南のトンネル現場(試行工事の対象)、9/13は熊本阿蘇の現場群の視察(トンネルの試行工事もあり)を予定しており、非常に楽しみです。