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『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』  いい舞台でした!

2014年06月13日 | 観劇メモ
しばらく更新できていませんでした。
ですが、何も書くことがなかったのではなくその逆で、中旬になって俄かにお出かけラッシュ。ただでさえ乏しい脳内システムリソースがさらに足りなくなり、何から手をつけていいのかわからない状態になっていました。(笑)

まず6月12日に、兵庫県立芸術文化センター・中ホールで『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』 を観て感激の観劇でスタート、16日には舞洲のゆり園で予想外のスケールに驚き、21日にはまたまた兵庫県立芸術文化センター・中ホールで紺野美紗子草刈正雄の珠玉の舞台『日本の面影』に身も世もなく感動し、翌日は一転してドラマシティで『昔の日々』で睡魔と闘う(殴)という、私の乏しい脳内リソースでは追い付けないほどの過密スケジュール。

でもとにかく順に書いていかないと始まらないので(すぐ忘れてしまうので^^;)、まずは12日の『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』から書いてみます。いつものとおりの薄味の感想ですが、よろしければご覧ください。

この芝居、題材が北アイルランドのIRAとその支援者を描いたものなので、相当重苦しく深刻な舞台だろうなと覚悟していました。

でも結果は脚本・演出・役者・舞台セットのすべてが素晴らしく、ストーリーもよくできていて、観終わってみたら感動のスタンディング、芝居の魅力満載の舞台となりました。

当日は13時開演でしたが、余裕を見て10時15分に出発。珍しく阪神高速の全線にわたって渋滞ゼロというラッキーな日で、1時間ちょうどで劇場地下に滑りこめました。まずは腹ごしらえと、劇場近くで昼食してから劇場ホールへ。
今回もネット予約でB列のセンターよりという良席をゲットできていました。おかげで、念のためオペラも持参していたものの、劇中で出てきたウィスキーボトルのラベルを確認したぐらい(笑)で、全く不要でした。

ただ、今回はテーマが響いたのか最上部あたりの客席に少し空席があったりで満員御礼とはいかなかったのが惜しかったですね。

さて、舞台の感想です。いつものとおり敬称略です。

この芝居、イギリスの支配に激しく抵抗していた北アイルランド・IRAの闘争と、それを財政的に支え続けたアメリカ・ニューヨーク支部のメンバーたちの30年に及ぶ生きざまを描いたものです。
原作者のリチャード・ビーン(イギリス人の人気劇作家とのことです)は極めてシリアスなこのテーマを、その時々の歴史的な事件を織り交ぜて、時には笑いを誘いながら、テンションの高い膨大なセリフで綴っています。観ているこちらの方もぐいぐいと舞台に引き入れられていき、そして最後に待っていたのはよもやの大どんでん返し。芝居の面白さたっぷりでした。

企画制作は世田谷パブリックシアター
出演者は 内野聖陽浦井健治明星真由美町田マリー黒田大輔小林勝也成河


翻訳は小田島恒志、演出は森新太郎です。

ちなみに兵庫公演は6月12日~15日でした。

幕が上がると、真っ暗な背景に内野聖陽扮するコステロが一人立っていて、伝統的なキルトの衣装で(でもどう見てもスコットランドの伝統的な衣装だと思いますが)、支部の会合であいさつするところから始まります。
↓プログラムより稽古場風景です


これはプログラム掲載の衣装デザイン画です↓


私にとっては内野聖陽といえば何といってもNHK金曜時代劇シリーズ「蝉しぐれ」での絶妙な演技が印象に残っていますが、今回の芝居での彼は、その当時とは違って円熟味を感じる堂々の演技でした。
このコステロという人物、純粋なアイリッシュ民族主義の信奉者というより、巧みな弁舌で支部のドンとして君臨し続けていることに生きがいを感じているかなり俗っぽいキャラクタです。舞台で観る限り、イデオロギーとか政治などに一家言を持っている風には見えず、芝居っけたっぷり(当たり前ですが(笑))の気のきいたスピーチで支部のメンバーに支持されて、多額のカンパを集めるのに長けた人物という感じです。

この人物像が劇のコアな伏線になっていることは観終わってから分かりました。

そんなコステロを内野聖陽は説得力ある演技でリアルに演じていました。観ながら、仲代達矢とか平幹二朗のような演技の風格が感じられて、本当に「蝉しぐれ」からの年月を実感しました。
彼については一路真輝とのことが少々残念ですが、一家に二人のスターは共存できないということでしょうか。

今回の観劇で目立っていたのがIRAの若手メンバーの一人・ルエリ・オドリスコル役の成河(ソンファ)でした。

けっこう舞台歴も積んでいるようですが、私たちは全く知りませんでした。でも、今回の舞台では場合によったら内野以上にインパクトのある存在になっていましたね。
非常に饒舌多弁なセリフをよくこなしていて、大したものでした。彼もIRAの支持者になった経過とかがよくわからなかったのですが、1972年のブラディサンデーを発端に闘争を激化させていったIRAの活動の過程で、さまざまな事態に直面して次第に変わっていくところがよく演じられていました。

NY在住の消防夫マイケル・ドイルに扮する浦井健治も寡黙な役柄なのに存在感のあるいい演技で好印象でした。

彼の演じる長身で無口で少し猫背気味なマイケル・ドイルを観ていたら、何故か『ショーシャンクの空に』のティム・ロビンスを思い浮かべてしまいました。
饒舌なエリ・オドリスコルといい対比ですが、寡黙な人ほど内に秘めた信念が強固だといった役どころが面白かったです。はじめて見た役者さんですが、劇場でもらった演劇関係のパンフレットでも目白押しの出演予定があるなど、今人気急上昇中みたいですね。

女優さんはIRAメンバーのエリザベス・ライアン役の明星真由美と、プエルトリコ系のカレルマに扮する町田マリーの二人でしたが、どちらもドッキリ演出があったりでがんばっていました。ヨメさんは明星真由美の声がいいと絶賛モード。(麻実れいに似ているとか(笑))



(ちなみに明星真由美はあの『ボクの四谷怪談』にも出演していたとのことですが、全然わかりませんでした)

同じくNY市警の巡査トム・ビリー・リコル黒田大輔です。

まあハリウッド映画に出てくる警官そのものといったピッタリの役。見るからに強そうですが単細胞なアメリカの警官がはまっていて、宛書のようです。
こんなどこにでも居そうな人物がIRAの信奉者というのもある意味でリアルです。

IRA本部から調査に来た幹部のフランク・マカードル小林勝也

ベテランらしい存在感がありましたが、無理やりウィスキーを飲まされるなど査察に来たはずなのに逆襲されるなど気の毒な役でした。
この場面、アイリッシュウィスキー?がおいしそうでしたね。(笑)

観ていて印象に残ったのは、IRAが次第にそのあまりにも過激なテロゆえに大衆的な支持を失っていって、それとともに組織内部には相互不信や疑心暗鬼の傾向が強まっていくところでした。逆に言えば闘争路線が正しいうちは組織も健全性が保たれるということでしょうね。この劇に潜む悲劇性はIRAの闘争方針の是非・動向と不可分に考えられないということでしょうか。

ところで、舞台のセットも見ごたえがありました。
とにかくリアルです。もう映画の一場面のような作りこみが見事。しかも同じ部屋でも30年に及ぶ年月の経過に即して細部の小物類が変えられていくので、芝居を見ながらそういった変化を確かめる楽しみも味わえました。

劇の最後のほうでイェイツの有名な詩「湖の島イニシュフリー(The Lake Isle of Innisfree 1890)」が紹介されました。この詩と、コステロが語っていた「私はアメリカ人ではない、アイルランド人でもない、一人の人間なんだ」といった意味の言葉が、原作者のモチーフになったのだろうと思いました。

ちなみにこの湖、アイルランド・スライゴ近郊のギル湖ですね。でも私の撮った写真↓には残念ながら肝心のその島が写っていません。でも雰囲気ぐらいは分かっていただけるかも。(笑)




さて、細かいストーリーはまだ各地で公演が予定されているので観られてのお楽しみということで、省略させていただきますが、私たちももう一度観られたらさらにこの劇の良さがわかっただろうと心残りでした。予想以上のできばえで、最後は客席全体が感激のスタンディングで応えていました。

公演予定の劇場近くの方はぜひご覧ください。おすすめです!


今回も覧頂き、ありがとうございました。m(__)m


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