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アウターヘブリディーズを訪ねて その5

2012年07月06日 | 旅行
ロッホ・アイナートもまた雄大な景色が楽しめるところでした。
全体にユイスト島は、南部のほうが景色のスケールが大きい感じです。
ガイドブックにあったウォーキングコースは、複雑に入り江が交錯しているところを縫って海岸に向かうコースでした。


道端にはピンクのヒースがきれいな花をつけていて、道の両側には大小さまざまの池沼が散らばり、南側遠くには長い裾野を曳いた山が穏やかなシルエットを見せています。


ボートやヨットが停泊しているので海とわかりますが、そうでなかったら淡水の湖と見分けられません。


空は爽やかに晴れてきて、大西洋からの風に乗った雲が山肌に影を落とし、ゆっくりと流れていきました。太古から変わらないであろう雄大な自然の景観で、手付かずの自然とはこのことだと思いました。


けっこう歩いたつもりで地図を見たら、まだ中間地点でコース最終端の海岸までかなり距離があるので、引き返すことにしました。それでもたっぷり景色を楽しめました。

もとの駐車場所まで戻って、ロッホ・スキッポート(Loch Skipport)に向かいました。ロッホ(=湖です)といっても入り江になった海で、ここからスカイ島がよく見えるということです。
砂利道を行ってみると、波もなく静かな入り江に小さい島がたくさん浮かんでいて絵のようにきれいなところでした。説明どおりスカイ島が水平線上にはっきり見えました。


でも、ロッホ・アイナートからここに来るまでの景色のほうが雄大で、なだらかな山容と紺碧の湖との対比がすばらしく、何度も車を停めました。


しかし、こんないい景色なのに私たち以外の誰にも出会いませんでした。どこにいっても無人というのも、いささかさびしいものがあります。(笑)

そこからまたメイン道路に戻り、Bornishで脇道にそれて西海岸のRubha Ardvule へ。
ここは岬の先端まで整備された道がついていて、車で容易に行けました。晴れた空の下で白い海岸線に大西洋の波が打ち寄せ、ようやく傾きかけた太陽の下、どこまでも続く黄色い花の草原が印象的です。

再び車に戻り、Stoney bridgeでA865に入って、夕食のためまた昨日のベンベキユーラのレストランへ。
途中14世紀の廃墟Borve Castleを見つけましたが、ほとんど基礎部分だけなのと、道路側には鉄条網が張り巡らされていて他の入り方もわからないので、写真を撮っただけでレストランに行きました。
一日歩き回っておなかも空いていたので、今夜はコース料理に挑戦しました。

ヨメさんはエビ・卵のサラダと本日のスープ、マッシュルームのストロガノフにデザートのシャーベット+コーヒー。私はフルーツサラダと同スープにサーモンステーキのパセリ レモンバターとオムレツ、チョコアイスクリーム+コーヒー。

確かにおいしかったのですが、やはり私たちには量が多すぎ。途中から持て余してしまいました。手付かずのオムレツはお持ち帰りにしてもらいました。
食事代は41.3ポンド。味も一流、値段も一流でした。(笑)
今日は店に入ったのが8時を過ぎていたので、駐車場には先客のブルーに白のストライプのミニクーパーが駐車していました。でも他の車はなかったので、みんなはもっと遅く食べにくるのかなと思ったり。
でもこんな辺境の地で、よく経営が成り立つものだと思いました。ホームページも更新されているので、今もやっているようです。

A865から宿のあるグリムゼイへの帰り道、ひとつ手前の交差点を曲がってしまって昨日とは逆コースでしたが、なんとか戻り着きました。反対方向から見ると景色が全く違っていて少しびっくりでした。
今日はシャワー時に恒例の洗濯をしなくてもよかったので(笑)、ゆっくり浴びられました。そのあとはバタンキュー。

7月29日
朝6時に目を覚ますと、ヨメさんはもう起きていて、せっせと会社の同僚に絵葉書を書いていました。マメな人です。
8時頃気持ちのよい天気に誘われて、二人で宿の周囲を散策。すぐ隣がかわいらしい漁港で、カラフルな漁船が出入りしていました。晴れて日差しはあっても、風は冷たかったです。


↓ 丘の上の白い家がB&Bです。


よく手入れされた裏庭を見せてもらっていると、垂れ目の大きな犬が尻尾を振って寄ってきました。一緒に写真を撮ったり、しばらく相手をしました。(相手をしてくれたのかも)(笑)。イギリスではどこでも犬はよく躾けられていますね。


30分ほど周りを散歩して食堂へ。すでに相客は食事中でした。今日は夫人もこちらの注文どおりのメニューを用意してくれていました。しっかり食べて、9時半ごろ出発。

今日はユイスト島北部の探検です。

まずCarinish trinity Templeという古代キリスト教の遺跡を見ることにしました。ところがガイドブックに従って現地に行ってもそれらしいものはなく、Carinish Church という何の変哲もない新しい教会があるだけ。

大体この国の観光案内のサインは、景観を損なわないよう控えめなので、つい見落としてしまいます。(←いいわけ)

あきらめて次に近くのLoch Eportへ。アザラシやカワウソが見られるとのことですが、行ってみても何もいません。(笑) 


海岸はなかなかきれいですが、昨日の雄大な景色と比べたらそれほどの感動もなく、早々に引き上げました。やはりこういう動物が見たかったら、地元のガイドに案内してもらうべきでしょうね。まあ私たちはそれほど動物に興味があるわけではないので、すぐ離れました。

本日の予定コースは環状なので右回りに行くことにし、その前にまずヨメさんの葉書を出すため郵便局に行きました。ロッホマディのフェリー乗り場手前のPost Officeの標識の店に行きました。でも行ってみたらここは正式の郵便局ではなく、ただ切手を売っているだけ、それも国内向けのみでした。
それでも店の人が「Museumに行くとあるよ」と教えてくれたのでいってみたら、思わず笑ってしまうほど小さな施設でした。Museumといってもカフェやみやげ物ショップの横に小さくこの地方の写真などが展示されているだけ。でも送れました。郵送料は離島のためか一通42Pでした。

詳しい観光地図などを買おうにもないので、B&Bを紹介してくれた旅行案内所にまた行きました。例のスタッフの女性に、いい宿を紹介してくれたお礼を言って、地図を買いました。相変わらずニコニコと愛想よく、ステッピング・ストーン以外の食事場所も教えてもらいました。
二人ともそろそろ人恋しくなっていたところなので話ができてうれしかったですね。
いい気持で車に戻り、道路を北上して、何か施設があるかもと、明日乗る予定のフェリー乗り場に行って見ました。

でもフェリー乗り場は小さな桟橋がひとつあるだけの寂しいところです。そのそばにExcellent Viewと書かれた標識の海岸があったので行って見ました。
確かにここもきれいなところで、まぶしいくらい真っ白な海岸では、夫婦と子ども二人と犬が遊んでいました。


真っ白な砂の海岸と、エメラルドグリーンの海、風にそよぐ柔らかな草が美しいところでした。まだ昼食には早かったので、何枚か写真を撮ってから離れました。


このあと、Vallayの海岸を走っていたら、よくガイドブックに出ている白い茅葺のコテージを見かけたので小休止。
海の色が何色にも変化しているのも不思議な感じなので、海岸の草原の石に腰かけて昼食(昨日のオムレツとパン、ビスケットやジュースなど)をとることにしました。食べ終えてコテージの写真などを撮っているとそこで宿泊しているらしい女性が戻ってきて、こちらを見て手招きし、中を見せてくれるとのこと。


古く由緒のありそうな外観とは裏腹に、内部は現代的に手が加えられていて、キッチンやベッド、居間も案内してくれました。セルフケータリングで借りられることをインターネットで見つけて、泊まっているとのこと。
小学生くらいの娘さんは「鈴木メソッド」でピアノを習っているとか言っていましたが、私たちは全くどんなものか知らなかったのでフォローできませんでした。(笑)

礼を言って別れて、次はScolpaigタワーへ。

この塔は、1830年にアレクサンダー・マクラウド博士の提唱で、当時の飢饉救済事業として雇用を提供する目的で建立されたそうです。1971年にはスコットランドの歴史的建造物に指定されています。


小さな湖の中に島を作ってその上に建てられていて、水位の低いときは飛び石伝いに塔に行けるとのことですが、この時は行けませんでした。今はもっぱら鳥の営巣地になっているそうです。
ここも誰も観光客はなくさびしいので、二人で記念撮影しました。(笑)


次に目指すのはMachair(語源はゲーリックでマハルと読むそうです)で有名なバーナレイ。ここも古い集落だそうです。アウターヘブリディーズの他の島々と同じように、19世紀から20世紀にかけて人口が減少したものの、この数年間は緩やかに増加しているそうです。といっても 2006年10月の人口は130人程度。
このため、定住人口を増やす目的で、2006年1月からバーナレイでもインターネットがブロードバンドで利用できるようになったとのことです。まあこんな最果ての島だからこそ、情報発信の手段としての値打ちがありますね。

他のアウターヘブリディーズの地域と同様ここの住民も、スコットランド・ゲール語を普通に話しているそうです。でも誰にも出会わなかったので、確かめてはいません。(笑)
ゲール語と言えば、アイルランドを旅行中、偶然カーラジオでゲール語の放送番組を聞きましたが、さっぱりわかりませんでしたね。
ご存知の方も多いと思いますが、アイルランドやウェールズの道路標識はゲール語と英語の2段書き。中にはゲール語しか書かれていない場合もあり、ラウンドアバウトなどで行く先がわからずあわてたこともあります。

でもバーナレイが有名なのはなんといってもマハル(machair)です。

これは風に吹上げられた貝殻の細かい粒・シェルサンド(上の海岸の白い砂がこれでした)でできた海岸沿いの平原です。もともとスコットランドは冷涼なため草が分解されずそのまま泥炭化した酸性の土質ですが、それがアルカリ性のシェルサンドで中和され、さらに打ち上げられた海藻や、冬の放牧動物の糞が一緒になって自然の肥料になり、夏の農業に適した耕作地になっていたそうです。
それを利用した伝統的な小作農の農業がマハルといわれています。

このマハルは、地力を養うため、耕作地と休耕地を期間を設けてローテーションさせて利用しているとのこと。それで休耕地となった広大な海岸沿いの土地が、さまざまな野生の花々の咲くパッチワークとなって続いています。
こういう土地利用は昔は同じような自然条件にあるヨーロッパ各地に見られたそうですが、今ではスコットランドとアイルランドの西海岸にしか残っていないとのことです。

地図にあるバーナレイ・ネイチャー・リザーブセンターは資料の展示やトイレがありそうなので行ってみました。
でもイメージしていたのとは違って、トイレのみのプレハブ小屋があるだけ。スコットランドのナショナルトラストが保存活動をしているようですが、無人でした。
そこからしばらく真っ白なわだちのある道を歩いていくと、信じられないような光景が広がっていました。黄・白・ピンクの花が一面に咲いた大草原です。ふたりとも「スゴイ、スゴイ」の連発でした。









しばらく写真を撮ったりして景色を楽しんでから、海岸に向けて歩き始めました。
マハルを巡るウォーキングコースは、所要時間2.5時間で約5kmの長さとのこと。ゴロゴロとした岩や真っ白な砂浜が印象的な海岸線と、この地固有の数十種類の野生の花が咲き乱れる大草原のコースは、本当に壮観です。



砂浜や岩の浜に囲まれた入江と、白い砂が敷き詰められた砂丘、様々な花のmachairを巡るコースですが、私たち以外に歩いているのは昨夜のレストランで見かけたミニクーパーのカップルだけ。その彼らも遠く離れているので、独り占め状態でした。


結局、途中道標がなくなっているところがあって少し行き戻りしたので6~7kmぐらい歩いて車に戻りました。同様に戻ってきていたミニクーパーのカップルに会釈してから、帰途につきました。このカップルにはその後あちこちでたびたび出くわしました。
途中、バラシェア島の海岸に立ち寄ってから、教えてもらったレストランに行くことにしました。

<続く>
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