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タカラヅカスカイステージ/ 「The Back Stage #1 ~大道具~」の華麗なる裏側

2013年06月14日 | スカイステージ感想

バックステージは全部で11のテーマで番組が作られました。そのどれもが日頃ほとんど見聞きすることのない珍しく興味深い話ばかり。
その第1話は「大道具」。宝塚は舞台芸術としての完成度の高さは誰もが認めるところですが、その中でも一際豪華なのが舞台装置、大道具ですね。
今回の放送で紹介されている大道具は、2012年7月27日に宝塚大劇場で開演された花組の「サン=テグジュペリ-「星の王子さま」になった操縦士-」と「CONGA(コンガ)!!」の製作風景を中心に紹介されています。
(しかしもう1年近く前になるとは。早いものです。)

最初は打ち合わせの場面から始まります。場所は、木工工場といってもおかしくないほど広くて天井の高い「大道具製作場」です。


こんな大きな空間が舞台裏にあるとは全く知りませんでした。行き馴れた大劇場ですが、建物の空間構成がちょっと想像つきませんね。もっとも、生徒でも殆ど訪れることのない場所だそうです。

打ち合わせが行われたのはわずか開演1か月前の6月25日だそうです。まさに突貫工事です。
大道具は装置デザイナーのデザイン画と設計図をもとに作られますが、打ち合わせではまずどんなものを作るか、そして使用する材料などの説明が行われます。




大道具の担当部署は製作課と実際に舞台で出し入れしたりする公演課にわかれ、製作課でも実際に作る製作担当とできたものに色を付け塗っていく背景担当に分かれているそうです。

その製作過程ですが、大道具のデザインを決めるのは専門の装置デザイナーです。
今回の公演は新宮有紀さんという方が担当でした。

で、まず芝居のほうのデザインです。
その芝居の世界観や「かお」を思い浮かべて、全体のデザインイメージを決め、それに沿って個々の場面を作っていくとのこと。
公演を観られた方はお分かりですが、芝居は主人公の実生活と「星の王子さま」の場面が交互に展開されたり、それがオーバーラップするところもあったりするので、けっこう難しかったとのことです。
ショーのほうは、基本的にラテンものだが、ストレートなラテンものではないということで、情熱とリズムという2つのテーマで個々の場面と全体のイメージとを調和させながら作り上げたとのことでした。

で、このデザインに脚本家の意見や意向がどこで反映されるのかという点が知りたいところですが、それは今回の番組では説明はありませんでした。なのでこれは私の推測ですが、この開演1か月前というのはもう実務的な製作段階ですから、装置デザイナーが脚本家などの意見を聞くのはもっと前の、台本が固まった段階になりますね。
その段階で脚本家と打ち合わせをして最終的にデザインコンセプトを固め、実際のデザイン画と設計図を描くということになります。ということで、もし脚本家のセンセイが遅筆だったりすると、スケジュールは厳しいですね。
大道具(小道具とか照明も同じですが)の製作開始時期は決まっているので、台本の仕上がりが遅れたりすると現場との板挟みになってデザイナーは苦労しそうです。

今回の目玉はなんといっても飛行機(ちょっと飛行機に詳しい方はご存知だと思いますが、フランスの名機コードロン・シムーンですね)とあの大きな花びら。
その飛行機は、なんと作業開始2週間余りでもうほぼ出来上がっています。大したものです。プロです。

そしてまもなく完成。


この飛行機、私がこれまで観劇した宝塚の大道具として出色の出来です。もちろん他の演劇では望むべくもありません。
以前「黎明の風」でマッカーサーが降り立った場面の飛行機のセットなどは、泣きたくなるほど奇々怪々な飛行機でした。
そのとき、所詮宝塚の大道具はこの程度かと思ったものですが、それは間違いでしたね。

というのは、今回のコードロン・シムーン、デザイナーの描いた四面図の出来の良さを知ったからです。子供のころからの飛行機ファンで、このシムーンの写真や資料も以前から良く知っていて、機体の外形の特徴にもなじみのある私でも、今回の図面はよくできていると感心しました。




見落とされがちな胴体下の小さなベンチュリー管まで描かれています。(笑)


ということは、大道具の出来はデザイナーのデザイン画と設計図で決まるということですね。だから、「黎明の風」の不細工なセットも、スタッフがデザイナーの指示通り作った結果だということですね。認識を改めます。m(__)m

さて、この飛行機のセット、プロペラももちろん回ります。


がそれだけでなく、その他にも点検扉を開けるとエンジンの一部が見えるようになっていたりでよく作り込まれています。担当者は「演出や装置からの指示はなかったが、不時着したときにエンジンを点検する場面があると知って作った」といっています。まさに阿吽の呼吸ですね。






また、これは実機にはないのですが、セットの移動や運搬時に便利なように艦載機のような主翼の折り畳み機構も備えていて、凝っています。さすがにセット、サイズは実物大とはいかなくて、2分の1スケールにしたようです。


折り畳み時のロック機構も付いています。


もう一つの目玉がこの花びらのセット。
これがデザイン画と設計図です。





けっこう大きなもので、担当者はキラキラ輝いているように仕上げるのに苦心したとのことです。


このセットに上がる階段、結構大きな段差がありますね。よくコケないものです。(笑)


背景はデザイン画で40枚以上になるとのことで、まずそのデザイン画をもとに形をベニヤ板に落としていきます。アタリというそうです。




そしてそれをスタッフの大工さんが木枠を付けて組み立てていき、それにキャンバスを貼って色付けや絵柄を描いていく手順です。また電飾等も多用するのでそれもスタッフがつけていくとのこと。


階段が作られています。↓


こんなデザイン画をもとに

実際に作っていきます


さらにこれが↓


こうなりました。きれいでしたね↓


最初に蘭トムが登場するところですが、これが設計図です↓



実際はこんな風にできました↓


気が付いたのはスタッフの大所帯なこと。すごい人数です。日程が限られているので、一挙に人海作戦で作り上げていっている感じです。

本当に広い作業スペースですが、これが舞台の奥にあるとは驚きでした。


そして7月23日に月組ロミジュリ終了。ただちにそのセットが運び出され、東京に送られます。






そして完成した花組公演の大道具が運び込まれ、バトンに吊り下げられてセットされていきます。背景になるものはすべて吊下げられるのでバトンの数も半端じゃないですね。
デザイン画のステンドグラスが↓


出来上がりました↓


ばらの垣根も


出来上がったらこうなります↓


そして公演を迎えました。






最後に番組は大道具の責任者のみなさんの生きがいを紹介しています。職人さんたちです。
デザイナーの先生の褒め言葉がうれしいとか↓


直接観客の声は聞けないが、公演の営業成績があがったらうれしいとのことです。


サンテクジュペリはチケットの売れ行きがちょっと心配でしたが、こんな裏方さんの苦労を知ったら、私たちも出来る限りそれに応えてあげたいですね。

宝塚の魅力は、豪華なセットや衣装で繰り広げられる華やかな芝居とショーの舞台にありますが、それを維持するのには大変なコストがかかっているということを今回の番組でわかりました。世界に誇れる舞台芸術です。
改めてささやかながら応援していきたいと感じました。

次回は「舞台進行・公演大道具」です。更新が遅れるかもしれませんが、興味のある方はまたご覧ください。


コメント (3)
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