進化する魂

フリートーク
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それでも天に向かって手を伸ばし続ける ~天地明察とコペルニクス的転回~

2012-09-26 14:10:52 | AKB48_軽ネタ



(私は原作を読んでません。)

映画『天地明察』を観た。

これは面白い!!

原作の方が面白いという話もちらほら聞きますが、いやいや映画単体で全然面白いです。


今よりも夜空が神秘的だった時代、徳川4代将軍家綱の頃、平安時代から800年間使われてきた宣明暦を、中国の元時代につくられた授時歴を日本に合わせて修正した大和暦(貞享暦)に変更する話です。

宣明暦は遣唐使によって輸入された暦で、平安時代初期から暦は朝廷の管轄であり神聖かつ不可侵なものだったのですが、この映画の主人公である安井算哲による改暦によって、それ以降は徳川幕府が掌握するようになったようです。

(現在は、明治時代に輸入した太陽暦(グレゴリオ暦)が使用されております。)

全くの素人なので、暦の歴史や天文学のことはさっぱりわからないのですが、ほんわかしたり、がっかりしたり、涙したり、ガッツポーズしたくなったり、濃厚な内容でありながら、ネタも多過ぎず少な過ぎず丁度良いバランスで、時間を忘れて引き込まれました。

出演する俳優陣の演技も素晴らしかったです。

少しわざとらしいところもありましたが。

しかし、怒った時の宮崎あおいは怖いですね・・(笑)

脇役の中井貴一、松本幸四郎、市川猿之助、笹野高史、岸部一徳、佐藤隆太あたりも素晴らしい演技で主役を盛り立てていました。

とりわけ、笹野高史、岸部一徳の涙誘う演技はたまりません。

そして、何気に徳川4代将軍家綱役の染谷将太がいい感じの雰囲気を出してましたね。

おススメできる作品です!


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(原作ではもっと詳しく語られているのかもですが・・)映画の中では、暦の重要性についてあまり語られていませんでした。

どちらかというと、理念や宗教上の権威といったところに焦点があたっていた認識です。

(それだけでも十分に重要ですが。たとえば、祭祀の日付が狂っているのは信仰の上では一大事です。)


現代人にとっては暦なり時計といったものは当たり前のもので、暦を巡る闘いに違和感を感じるかもしれません。

暦がなにゆえ、それほど大事なのかと。

もし、世界が1つの村だったら、(宗教上の理由を除けば)暦も時間も重要ではないかもしれません。

しかし、離れた場所にいる者同士が協調して何かをやったり、また後から振り返る時に、暦と時間がずれているとお話になりません。

例えば、天地明察の中にも出てくるのですが、あの織田信長も暦には苦労したそうです。

彼の場合は、全国に方面団を展開している関係上、各方面団への作戦司令や、現場からの報告といったものが狂ってると困ります。

また、各証言の整合性を確認するためにも、日時が非常に重要です。(だから現在も無駄に日付印使わされますよね。公証制度が日付を求めるから。)

当時は、暦が統一されておらず、地方によって暦が異なっていたりしたので、現場から中央へ集められた報告書を時系列的に整理するのも大変な作業だったようです。

信長からすれば、織田軍団の生命と財産がかかっているわけですから、暦は非常に重要です。

それに加えて、朝廷が支配している暦が旧態依然とした体制の象徴だったことも相まって、信長は朝廷に対し、改暦を迫ったといいます。

しかし、その後、信長は本能寺の変にて自害という結末を迎えることとなり、その件はうやむやになりました。

映画の中でも、改暦に対してものすごい抵抗が描かれているわけですが、安井算哲らによる改暦は、幾多の苦難を乗り越えて「天に手を伸ばし続けた」結果であり、「あの信長でさえ果たせなかった偉業」なわけです。


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昨日たまたま『時を告げるのではなく、時計をつくる』というエントリを書いただけに感じるものがありました。

「コペルニクスの地動説」と同じで、多くの人が「間違っている暦」に対して問題とは思わなかったわけです。

「暦」という当たり前のものに対して、正しいとか、間違っているとか、誰も考えなかったのです。

これが、この問題の本質です。


トマス・クーンの「パラダイム」が同じ文脈で使われますが、(言い方がおかしいかもしれませんが)パラダイムそのものが抱える問題を、どのように認識し、理解し、解決するかという問いなのです。

「間違っている時計」でも時を告げることはできるが、時計が変わった時(パラダイムシフトが起きた時)に何の意味もなくなります。



コペルニクスの後、ガリレオ・ガリレイは「それでも地球は回っている」という今に語り継がれる名言を残しました。(証拠がないため創作ともいわれているが)

安井算哲は、「それでも天に手を伸ばし続けた」と言いました。

さて、私たちは、それでも手を伸ばし続けるようなものを信じることができているのでしょうか。



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ちなみに、やすす先生の名言の一つに、「止まっている時計は、1日に2度正確な時刻を示す。」というものがありますね。

これは、どちらかというと「時を告げる」ことについてのお話です。

どのような時計をつくるのか、ワクテカです。