じゃんけん大会によせて 「じゃんけんと偶然と運」

意味のある話ではないです。



「じゃんけん大会」が成立するくらい「じゃんけん」で盛り上がることができるのは、我々が「じゃんけん」に人間的な何かを見るからだろう。


「じゃんけん」の出し手は3通りしかなく、

人間なら誰でも持っていて、誰でも使いこなせる原始的なものが「じゃんけん」の構成要素であるために

勝敗の行方を確かなものとする技術的要素が少ない。

何かを訓練すれば、確実に勝てるという要素がほとんどない。

このため、勝ち負けは偶然性を帯びる。


一方で、「じゃんけん」は偶然によってのみ決まらない。

人間が独りではなく、他者との関係性の中で生きているからだ。

「じゃんけん」の出し手(グー、チョキ、パー)を、相手の影響を受けずに出すことなどほぼ不可能だ。

相手が何を出すかを直前まで読んでしまうし、初めから出す手を決めていると、それを相手に読まれてしまう。

心を空白にして何も考えないようにして直感に任せれば、自然と相手に影響を受けてしまう。

さらにいえば、人間は外部環境に影響を受けずにはいられない生物だから、相手だけではなく、その場の雰囲気にも影響を受けてしまう。

そして、その影響を受けた相手に影響を受け、さらにそれが相手に影響を与えるというループが存在する。

とりわけ、勝敗に何か大切なものがかかっている場合には、競技者には心理的プレッシャーがかかるため、

人間はたった3通りの出し手のために、結果の出る瞬間まで、あらん限りの計算をする。

「考えないようにしよう」と暗示をかけなければならなくなるほどに。

「じゃんけん」は心理戦の側面を持っている。

その部分では、「じゃんけん」は偶然性に支配されたものではなく、属人的なものになる。

「じゃんけん」は出し手が3通りしかない単純明快なルールにも関わらず、

勝負が決するあの瞬間は、偶然を超えて直感と理性の交差する不確実性極まる空間になるのだ。

この不確実性は、くじ引きやビンゴでは演出できないものだ。

(確率論で語れる偶然の世界ではなく、確率論では語れない不確実な世界になるということ)



たしかに「じゃんけん」の多くの部分は、確率論で支配された「偶然」なのかもしれない。

しかし、それと同時に「じゃんけん」には、不確実性による「運」が同居している。

この「運」に、多くの人が人生にも似た、人間的な何かを見るということなのだろう。